〜禁忌9〜
だるい。 体が動かない。 まるで体が鉛みたいに重い。 指一本でも動かすのに体力を使いそうだ。 七地は目を瞑りながら、手足を動かそうとするが、思うように動かない。 瞼を開けることすら、面倒くさい。 ―何故、俺は寝ているんだろう…。今日は日曜日だったっけ? 状況を把握することができない。というか、考えることも煩わしくさえ思えてくる。 ―駄目だ…。何も考えられない…。 七地は誘われるがままに、眠りに入っていった。 +++++ ―どこだ!七地! 闇己は居ても経っても居られずに、自らの足で外に探しに行った。 当てがあるわけでもないのに、闇己は走り回った。 大事な、大切な七地が側に居ない、感じられないという不安が徐々に闇己の中で膨らんでいく。 「おい、闇己!待てよ!」 その後ろを蒿が追いかけた。肩を力強く掴み、自分の方に向かせる。 「……闇己…。お前…」 表情を見て蒿は思わず、掴んだ肩を放してしまう。 「…何だ。―邪魔をするな!」 蒿の驚いた表情を見て、闇己は眉を潜めるが、きつい視線を浴びせるとその場から立ち去ろうとした。 「待てってば!」 その視線に体を強張らせながらも、意識を必死に振り絞って闇己を止めた。 「お前は出歩くな!只でさえ念を活性化させているんだ!そんな状態で出歩くなんて正気の沙汰じゃないぞ!しっかりしろ、闇己!」 がしっ、と闇己の両肩を掴み、揺さぶった。 恐ろしい、意志を持った念、しかも古代から纏わっている念だ。健康な人間でも身体的にも精神的にも悪影響が出るはずだ。それを裏付けるかのように、ちらほらと周りでいざこざがおき始めていた。 「…煩い…。煩い!そんなこと言われなくてもわかっている!わかってるがどうしようもないんだ!」 左目からぽろりと、涙が落ちる。 見つからない焦燥と、七地が側にいない不安で闇己の精神は乱れていた。 「闇己…」 蒿は始めてみる闇己の涙に驚愕していた。 七地が側にいないというだけで、こんなにも脆くなるのか。 やはり巫児と鍛冶師は魂の繋がりが深いのか。 あまりにも脆い精神に蒿は同情さえ感じた。 「…闇己」 ざわざわと周りが煩い。 良い男二人が街中で言い争っているのを見て、周りの通行人が面白そうに二人を眺めていた。 「とにかく家に戻ろう。冷静になってもう一度考えて」 みようぜ、と蒿が言おうとしたら、闇己が野次馬の中にズカズカと入っていった。 「おい、闇己!」 蒿はわけがわからずに闇己の後を追った。 「やあ、闇己君。お久しぶり」 するとそこには薄っすらと笑みを浮かべた楠の姿があった。 「楠!」 闇己は楠の登場に眉を潜めると、はっ、と目を見開いた。 「貴様かっ!七地を浚ったのは!」 楠の襟元を掴み、持ち上げた。 「…さあ?何のことだろう。行き成り胸倉を掴んでその言葉はないんじゃないか?」 笑顔だった顔が突然変わり、闇己を睨みつけた。 「しらばっくれるな!都合が良過ぎるんだよ!お前が俺たちの前に現れるタイミングが!」 楠の睨みに態度を一つ変えないで、闇己は叫んだ。 「…とりあえず、場所を変えないか?ここじゃ目立ちすぎる」 ちらり、と楠は周りに視線をやった。 「そんなことはどうでもいい!」 楠の視線には目もくれずに、睨みつける。 「おい、やめろって、闇己。とりあえず場所を変えようぜ。ここで話すのは得策じゃない。少しは頭を冷やせ」 蒿が闇己の肩を掴み、楠を離せ、と目で訴えた。 闇己はぎりっ、と歯を噛み締めると掴んでいた楠の襟元を離した。 その様子に蒿はほっ、と胸を撫で下ろすと、 「さっ、場所を移そうぜ」 好奇心の野次馬を退かせながら、二人を移動させるように促した。 |
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