その日のうちに、『サンジがルフィを口説く』という話は学校中に広まった。

 その事を聞いてショックを受け、倒れる者もいれば、憤慨して怒りまくっている者もいる。中には泣き出したりする者もいた。

 先生たちはなんとかこの事態を抑えようとするが、更に悪化する一方で何にもできなかった。怒れば生徒に逆ギレされるし、泣き喚く者、泣きついてくる者もいた。

 どうすればいいか先生たちはわからなくなり、まさに学園中は手がつけられない状態になっていた。

 授業が終わると速攻でサンジに事の次第を聞きに来る取り巻きがたくさん来た。

「ルフィを口説くって本当なんですか?!」

 可愛い系の男の子がサンジに詰め寄る。

「本当だよ」

 サンジはにこっ、と微笑んだ。

「そんな!だってサンジさんは誰とも付き合わないって言っていたじゃないですか?!」

 その男の子が言うと、周りの男の子も便乗して「そうですよ!」と同調した。

「言っていたけど気が変わったんだ。それにまだ付き合うって決まったわけじゃないからね」

 ちらっ、とエースを見た。

 エースはそれに気づいて、じろっ、と睨んだ。

 何だ、アイツ。これみよがしに見やがって。

「だって噂ではもう付き合っているっていうのもでてますよ?それにサンジさんに言われて断る人なんていませんよ」

 男の子は少し涙ぐみながら言った

「そんなことないさ。俺だって振られる時は振られるよ」

「だったら僕と付き合ってください!」

 男の子は顔を真っ赤にしながら言った。

 まわりにいる男の子たちはえっ、という表情でその可愛い系の男の子を見た。

 その視線は、「ずるいぞ」という妬みが含まれていた。

「君ばっかりずるいよ!だったら僕にだって告白する権利はあるはずだ!!」

 後ろにいた男の子が言った。

「だったら告白すればいいだろう?!誰を選ぶかはサンジさんの自由だもの!」

 喧嘩越しに言葉を吐いてしまう。

 モテモテだね〜。サンジくんは・・・。

 エースはそのバトル化しそうな勢いの取り巻き連中を見た。クラスの皆も「どうなるんだ?」と息を潜めて事の成り行きを見ている。

「ちょっと待ってよ。言っただろう?俺はルフィを口説くんだって。だから君たちとは付き合えないよ。それに俺は振られてもルフィをあきらめるつもりはないし。だから大人しく俺の恋の成就を祈っていてくれよ」

 そう言うとサンジは男の子たちに向かったウインクをした。

 男の子たちは憧れのサンジからそう言われたら黙って見ているしかない。これ以上くどくど言っても嫌われるのがおちだ。

 嫌われるよりも黙ってみている方が良いと思い、しぶしぶ頷いた。

 しかし恋を成就することは祈れなかった。

 皆恨めしい目でサンジを見る。

「そんな目をするんじゃないよ。可愛い顔が台無しだよ」

 そう言ったときにキーンコーンカンコーン♪、っとチャイムが鳴った。

「ほら、もうそろそろ教室に戻らないと先生が来ちゃうよ」

 散った、散った、と言わんばかりに手を振った。

「わかりました」

 男の子達は仕方がないと言った感じでそれぞれの教室に戻っていった。

 サンジはそれを見送ると、エースの元にやってきた。

「何だよ」

 ぶっきらぼうにエースは言った。

「別に?結構もう知れ渡ってんだなと思ってさ。これならルフィは俺のことを振りずらくなるかもな」

 にやっ、と笑う。

「だろうな。あんな公衆の面前で言えばあっという間に知れ渡るだろうよ。特にお前とルフィならな」

「・・・有名人って辛いな」

 嬉しそうにサンジは言った。

「だったらもっと言葉を尊重しろよ」

「俺にとっては結構尊重したつもりだったんだがな」

「そうかよ。まあ、俺には関係ないことだから別にいいけどよ」

 エースは次の授業の教科書類を机から出した。

「・・・だといいな」

 サンジはぼそっと言った。

「ああ?何?」

「何でもない。―――そういえばルフィの方は大丈夫かな?」

「えっ?」

「ほら、俺の所にも来たんならルフィの方にも行くはずだろ?」

「あっ・・・」

 そう言えばそうだよな。アイツ、大丈夫かな・・・?

 エースは少しだけ心配になった。

 アイツ、ぽやんっ、としてるからな〜。

「どうした?ぼーっとしちゃて」

 サンジがにやにやとしながらエースを見ている。

「・・・別に」

 一瞬ハッ、とした顔を見せたがすぐに無表情に戻した。

「そう?俺はてっきりルフィの事を心配しているのかと思ったよ」

「誰がアイツを心配なんかするかよ!」

 きっ、とサンジを睨んだ。

 その時、ガラガラと先生が入ってきた。

 日直が号令を掛ける。

「まあ、そんな怖い顔しなさんな」

 サンジは席を立って礼をした。

 エースも慌てて立って礼をする。

「怖い顔は生まれつきだ」

「はいはい。わかりました」

 そう言うとサンジは教科書を開いて授業に集中した。

 エースはそんなサンジを睨みつけて、窓の外を見た。

 雲ひとつ無い空が広がっていた。

 自分の心とは全く正反対の空模様にエースはむかついた。

 わけがわからない焦燥感に捕らわれており、自分が一体何をしたいのかがわからないから余計に自分がむかつく。

 イライラする自分を何とか押さえ付けながらも、エースは空を見つめていた。

 

 

 

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