キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン、と最後の授業が終わる合図を鐘が告げる。 「ふう〜、今日も終わったぜ」 サンジはコキコキと首の骨を鳴らす。 ふと隣りを見ると、エースがすっかりと熟睡していた。 「おい、エース。もう、今日の授業は終わったぜ」 ユサユサとエースの体を揺らす。 「ん・・・・」 寝入っていたせいで、上げた顔に制服の皺がついていた。 「ぷっ。なんだ、お前のその顔」 寝ぼけ眼に額や頬についている皺が面白く思える。 「るっせーな・・・」 起こされたと思ったら、人の顔を見て笑われたので、エースはむかっ、ときた。 (なんだよ、この能天気男め。) にやにやと笑っているサンジの顔がとてもむかつく。 「悪い悪い。そんな怖い顔しなさんなって。そんな怖い顔してたら可愛い弟君が泣き出しちゃうよ」 悪びれもなくサンジは言った。 (・・・弟?・・・ああ、ルフィの事か。) 一瞬誰の事を言っているのかわからなくて、エースは首をかしげた。 「もうそろそろ来るんじゃないのか?」 その言葉にエースは又首をかしげる。 「・・・誰が?」 「・・・誰がって・・・。お前ルフィとの朝の会話忘れてんの?」 (あ・・・。忘れてた・・・。) 確かに朝ルフィがそう言っていた気がする。 あまりにもむかつく朝だったので、エースは思い出したくもなかった。 (・・・コイツのせいで思い出したくなかったんだよな。) その元凶をじーっと睨みつける。 「かわいそうにね〜、ルフィ。愛しの兄様に忘れられるとは・・・。こんな薄情な男 やめて俺にすればいいのに」 サンジは両手を挙げて、やれやれと首を振った。 (悪かったな、どうせ俺は薄情な男だよ!) エースは心の中で毒づく。 「・・・なあ、お前なんでそんなにルフィに執着するんだ?」 素朴な疑問を口にする。 こいつなら女でも男でも選り取り緑なはず。 なのに、そいつらを蹴ってあえてルフィを選ぼうとする。 その理由がわからない。 (確かにルフィは可愛いとは思う。それは俺も認めよう。でも、そんなに執着するほどなのだろうか?) 今まで引っかかっていた疑問をエースは聞いた。 「執着?失敬な。その言い方まるで俺がストーカーみたいじゃねーかよ」 サンジはむっ、とした表情になる。 「別に執着しているわけじゃねーさ。なんていうかな〜、ルフィってこう抱きしめたくなるって言うか、なんというか、守ってあげたくなっちゃうんだよな。・・・お前、一緒に住んでるんだろ?ルフィ見てて抱きしめたくなった事ないのかよ?」 にやにやとした表情でサンジは聞いてくる。 「・・・ねえよ」 (顔合わせないようにしてたし。) なるべく一緒にはいないようにエースは心がけていた。 しかしそれも近いうちにできなくなってしまう。 (何せ、1年間2人っきりでやっていかなきゃならんからな。) その事を思うとエースは溜息をついてしまう。 「嘘つけよ。あんな可愛子ちゃんと一緒に住んでいて手を出さないなんて、男としておかしいぞ?」 (・・・おかしいのはお前の頭の中だよ。) 「とりあえず、俺はアイツに手を出そうなんてこれっぽっちも思ってねーよ」 指をの感覚を少し開けて、自分の気持ちを表す。 (コイツにかまってると何を言われるかわかったもんじゃねーな。) エースはそう思うと、席を立った。 「おい、どこ行くんだよ。もうすぐルフィ来るぞ」 「知らねーよ。俺は約束した覚えはない。そんなに帰りたければお前が一緒に帰りやがれ」 鞄を肩に掛ける。 「マジか?」 少し低い声がエースを振り向かせる。 「・・・マジだ」 エースはそう言うとサンジを残して教室を出て行った。 「ったく、素直じゃないお兄ちゃんだこと・・・」 そう言うとサンジは空を仰ぎ見た。 |
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