カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。

 うっすらとした意識の中エースはベットから起き出した。

 もう朝か・・・。

 だるい体をなんとか動かす。

 昨日の夜は衝撃的なことがあったからよく眠れなかった。

 眠りに付いたのは何時頃だったかわからないが、中々寝付けなかった。

 親の転勤には驚いたが、まさかルフィが一緒にこっちに残るだなんて思ってもみなかったのだ。

 どうっすかな・・・。

 一度決まったことは意地でもひっくりかえさないスモーカーだ。きっとエースが何を言ってもルフィを一緒に連れて行くなんてことは言わないだろう。

 どうしようもないのにエースは考えてしまう。

 とりあえず学校に行くか。

 時計を見ると7時30分過ぎだ。いつものならまだ布団の中でおやすみの時間だ。しかし目が覚めた以上は又眠るわけにも行かない。ここで寝てしまったら遅刻の可能性がある。

 エースは渋々と制服に着替えて、家を後にした。

「ふぁ〜あ」

 だりー・・・・。ねみー・・・。早起きなんてするもんじゃねーぜ。

 大きなあくびをしながらエースは思った。

 あまりにも大きかったので顎が外れそうになる。それをなんとか堪えながらエースは歩いていた。

 校門の所にさしかかろうとした時に、自分を呼ぶ声がした。

 その声に周りを歩いている人たちは皆振り返る。

 まさか・・・。

 嫌な予感がしてエースは後ろを振り返った。

 やっぱり・・・。

 見ると子犬のように目をきらきらと輝かせながらエースの元へ走ってくるルフィの姿があった。

 顔をあわせないように出てきたのにこれでは全く意味がない。

 ・・・見なかったことにしよう。

 エースは無視を決め込んで校門の中に入っていった。

「あっ、待ってよ。エース兄ちゃん」

 自分を待ってくれないエースを呼び止める。

 気づかないふり、気づかないふり。

 少し足を速めて教室に向かう。

 どう考えても気づかないわけはないのに、エースは黙々と歩く。

「あれ?聞こえないのかな」

 ルフィは自分が無視をされていることとは露にも思わなかった。

「うん、もう!」

 てけてけ、とエースに走りよって、

「兄ちゃん!!」

 ぐいっ、とエースの左腕を引っ張った。

「うわぁ!」

 いきなり後ろに引っ張られて倒れそうになったがなんとか踏ん張った。

「何だよ、ルフィ。いきなり引っ張るんじゃねーよ」

 捕まえられた左腕をルフィの手から外した。

「あっ、ごめん。兄ちゃん気づいてないから、つい・・・」

 ぺろっ、と舌を出した。

 うっ!!!そんな顔すんなよ。可愛いじゃねーか!

 少し焦りながらエースはルフィから少し離れる。

「で?何か俺に用か?」

「えっ?」

「だから俺に何か用かって聞いてんだよ。俺に用があるから声を掛けたんだろ?」

 違うのか?という視線でルフィを見た。

 ルフィはその言葉を聞くと少し暗い表情になり、エースから視線を逸らした。

「あ、うんん。そんなんじゃないんだけど。今日、まだ朝の挨拶をしてなかったから」

「挨拶?」

「うん・・・」

 ちらっ、と上目遣いで見て、

「おはよう、兄ちゃん」

 にこっと笑った。

 ぶっーーーー!!!な、なんちゅー奴だ!そんな顔して言うなよ!

 今一瞬、背景に花が見えた。

 顔が赤くなっていくのがわかる。

 やべー・・・。

 顔を隠すためにルフィから背を向けた。

「・・・はよ」

 エースなりの挨拶をする。

 ルフィはそれを聞くとしししっ、と笑った。

「じゃあ、又ね。兄ちゃん」

 バイバイと手を振りエースよりも先に行った。

「おうよ」

 ふぅ、やっと行ったか・・・。

 つい反射的に手を振り返してしまう。

あっ・・・。

振った手を慌てて下ろした。

「あっ、そうだ」

 ルフィは立ち止まり、

「兄ちゃん、今日一緒に帰ろうよ」

 何っ?冗談じゃねー!誰が一緒に帰るもんかよ。

「嫌―――」

「仲いいな、お前ら兄弟。今から一緒に帰る相談か?」

 よっ!と手を上げてサンジが近づいてきた。

「あっ、その節はどうも」

 ルフィがサンジに向かって挨拶をした。

 ってお前はどこかのおばさんかよ!その節って何だ!その節って!!

 エースは心の中でつっこみを入れる。

「いえいえ。どういたしまして。それより、コイツに何かされた?」

サンジは男を惑わすほどの笑顔を見せた。

・・・相変わらずお前のその笑顔は犯罪だな。俺にも効いたぜ・・・。

「っておい、コイツって俺のことか?サンジ」

「・・・他に誰がいるんだよ。お前しかいないだろう?お兄ちゃん」

 この野郎・・・。その言葉は俺へのあてつけか?

 がるるるっ、と心の中で威嚇する。

「別に何も・・・」

 ちらっ、と横目でエースを見てから言った。

「そう?ならいいけど。コイツ野蛮でしょ?我が学園のアイドルに何か変なことしてないかなーと思って」

 よく言うぜ。誰が野蛮だ、誰が。お前の方が野蛮だぜ。いや、お前は野蛮と言うよりも獣だな。

 プリンスとしての異名を思い出す。

 この学園一、プレイボーイが!

「ううん、全然。兄ちゃんはそんなことしない人ですし」

 にこっ、と笑う。

「あらあら。兄ちゃん、信頼されてるね〜」

 にやにやとした顔でエースを見る。

「何だよ、その顔。それに俺がルフィに手を出すはずねーだろうが。俺は女が好きなんだよ。お前と一緒にするな」

 軽くサンジを睨む。

「俺もどっちかと言えば女の方が好きだけどね。男に手を出す時はそれなりの感情がないと無理だよ。いくら俺でもな。でも、ルフィなら手を出してもいいかも・・・」

「えっ・・・」

 ルフィが驚いた表情でサンジを見た。

 おい、コイツマジか?!

 エースは驚きの発言に一瞬固まる。

「サンジさん・・・」

 サンジはルフィの顔を見ると、

「冗談だよ、冗談。こんなに怖いお兄ちゃんがいるんだ。ルフィに手を出したら殺されかねないし。ああ、それと、俺のことサンジって呼び捨てにしていいよ。俺もルフィって呼び捨てにさせてもらうから」

 だから安心して、とルフィを和ませる。

 ルフィはその言葉にこくん、と頷いた。

「おい、別に俺は怖くなんかないぞ。それに恋愛は個人の自由だ、手を出すなら出せばいいだろうが。俺は知らねーよ」

 これ以上コイツらの話に付き合ってられるか。それに・・・。

 何事かと周りに集まっている連中を見て、

 こんなに人通りのある所でいざこざなんか起こしたくねーしな。

 エースはそう思うとその場を去ろうとする。

「あれ、どこいくんだ?」

「どこって教室に決まってるだろうが。そろそろ始まる時間だぞ」

 その言葉で野次馬として集まっていた人たちが各々の時計を見て、散らばって行った。

「ふ〜ん、そんな冷たい事を言う奴なんだ、お前」

「はぁ?いきなり何言ってるんだよ」

「だってさ、冗談でも弟を他の男が毒牙に掛けようとしてるんだぜ?少しぐらいは慌てたらどうだ?」

 毒牙だぁ〜?コイツが言うとなんかいやらしく感じられるな。

 それにエースは本当に恋愛は個人の自由だと思っている。

この男子校に入学してそれが確固した。ここは男が男に恋愛感情を抱いても何にも言われない、

なんとも思わない所なのだ。だから、自分がここの世界を否定するつもりは全くない。

 まあ、自分がそれにはまるっているのは別としてだがな。

「確かに俺の弟だがルフィの恋愛の邪魔をするつもりはないし、又お前の恋愛を邪魔するつもりもねー。勝手にしろよ」

 そう言うと視線をサンジから逸らした。するとふと、ルフィと目が合った。

 えっ・・・。

 ルフィの悲しげな表情がエースの視界に入る。今にも泣きそうな顔でエースを見ていた。

 なっ、何だよ。何でそんな顔すんだよ。俺、何か言ったか?

 ルフィの理解できない表情にエースは悩んだ。

「そうかよ。じゃあ、俺は勝手にさせてもらうぜ」

「・・・何を?」

 少し見つめあった後に、

「ルフィを口説かさせてもらうぜ」

 サンジは大きな声ではっきりと言った。

 その言葉の次の瞬間、周りにいた人は勿論のこと教室から見ていた人たちがざわめきだした。

中には「えー!!!」と叫んでいる人もいる。

 学園のアイドルとこの学校の王子的な存在の二人が付き合うこととなれば学園の一大事だ。それぞれのFANクラブが泣く。

 ルフィを口説く・・・?

 エースは妙な焦燥感に見舞われた。

 何だ、この焦りは・・・。

 自分では理解不能な気持ちがエースの心を苛つかせる。

「・・・そうか。頑張れよ」

 そうエースが口に出した時に、授業の始まるチャイムの鐘が鳴った。

 まるでこれからの3人の微妙な関係を始めさせる合図かの様に鳴り響いた。

 

 

 

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