(良い天気だな〜。)

 エースはぼーっとしながら、家路についていた。

(なのに俺の心は憂鬱だぜ。)

 この青い空とは正反対のぐずぐずとした空がエースの中には広がっていた。

(親父が再婚してから俺の生活は狂いっぱなしだぜ。確かに親父の再婚相手やその連れ子にも文句はねー。だが、俺の生活を狂わせるのだけはやめてくれ。)

 ふと下を見ると小さな石が転がっていた。

「ちっ」

 舌打ちをして、その石を蹴る。それは遠くまで飛び、エースの位置からは見えなくなっていた。

「ふ〜ん、アンタいい蹴りしてるな」

 不意に後ろから男の声が聞こえてきた。

 その声にびくっ、として、後ろを振り返る。

「なんだ、アンタ」

 声の主を見ると、その男は紙を片手にエースを見ていた。

 身長はエースと変わらないぐらいで、髪は短髪の緑色。グレーのジーパンに黒いシャツを着ていた。双眸は少しきつく、体格の良い体つきをしている。

 じろりとその男を見て、エースは目を細めた。

「いや、怪しいもんじゃない」

 その男は空いている手で軽く左右に振った。

(・・・充分に怪しいと思うけどな。)

 そういう突っ込みは心の中だけにしておいて、エースは眉間に皺を寄せた。

「その怪しくない貴方様はどちらさまで?」

「道を聞きたい」

「はっ?」

「だから、道を尋ねたいんだ。この蒼生高校ってどこにあるんだ?」

 持っている紙をエースに見せて、その男尋ねた。

(うちの高校じゃねーか。)

「アンタ、転校生?」

 地図を覗き込むとちらりと上目遣いで男を見た。

「ああ。明日からだが」

「何年?」

「1年」

「・・・アンタ16なわけ?」

 どうみても16歳には見えない。見えるとしたらエースと同じぐらいの年齢に見える。

「いや、違う。2回だぶったから今は18だ」

(2回もだぶり〜?コイツ、何してたんだよ。どうみても病弱そうには見えないし。)

 体格が良くて、いかにも健康優良児に見える。腕を見ると結構鍛えているらしく、筋肉で太く見える。

「こんなこと聞いちゃ悪いかもしれねーけど、聞いてもいいか?しかも初対面だから聞くこと事態おかしいかもしれないが」

 エースは素朴な疑問を聞きたくて、少し言いづらさそうに言った。

「かまわん。何だ?」

「あのさ、何で2回もだぶったんだ?・・・病気か?」

「病気じゃない。いや、ある意味病気かもしれないけど」

「どういうこった?」

「朝起きれなくて、学校に行けなかった。俺、すごい低血圧なんだ。だから学校に行くのが面倒でいつも休んでいたらいつのまにかだぶってた」

「両親は起こさなかったのかよ」

「起こしたらしいが起きなかったらしくて、諦めたらしい。そんで2回もだぶった学校に通わせてるのも恥ずかしいからということで、違うところへ行くことになった」

「そこが蒼生高校か・・・」

「ああ。従兄弟がそこの学校に通っているらしいから、その従兄弟のところに下宿しながら通うことになったらしい」

「ふ〜ん・・・」

(朝起きれなくて留年した奴始めてみた。俺も朝は起きれない方だが、上には上がいるもんだな〜。)

「そうだ、アンタの名前は何て言うんだ?―――俺は、エースだ」

 アンタは?という視線を投げかける。

「ゾロ」

「じゃあ、これからよろしくな、ゾロ。俺もその学校に通う学生だ。学年は3年だか年齢は一緒だ。―――ここで知り合ったのも何かの縁だ。学校まで案内してやるよ」

 エースはそう言うと来た道を引き返した。

「悪いな。俺、結構方向音痴で。中々学校にたどり着けなくて参っていたんだ」

 ゾロは地図をちらりと見て、ポケットにしまった。

「すぐに覚えるさ。ここからならそんな遠くないし」

「そうか。なら迷わずに済むかもな」

 エースの隣りを歩きながら、ゾロは背筋を正しながら学校へ向かった。

 

 

 

 

 

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