「ちっ、買いすぎちまったぜ」

 サンジは両手いっぱいの荷物を抱えて歩いていた。思った以上に良い品があったので、あっという間に買い込んでしまったのだ。

「こんなことなら誰かに手伝わせればよかった」

 歩きながら文句を言う。

 手伝わせると言ってもあの時は一人になりたかったので、誰かを連れてくる余裕なんてなかった。

 あいつらに泣き顔見せるのは絶対にごめんだ。

 あの時の状況を思い出し少し赤面する。

 情けねー。俺としたことが・・・。

 端により荷物を地面に置く。ポケットからタバコを取り出し火をつけた。煙を吸うと気持ちがだんだん落ち着いてくる。

1本吸い終わる頃には赤面も消えていていつものサンジに戻っていた。

 仕方ねー、一旦船に戻るか。ほかにまだ見たいところもあるしな。

 サンジは来た道を戻り船まで戻った。

船に戻ると食材をしまうため食堂へ向かった。扉を開けて中に入ると、異様な光景がサンジの視界に写った。

「なんだこりゃー」

サンジは自分の目を疑った。船を降りる前は確かに片付けていったはずだ。なのになぜか散乱していた。

 泥棒にでも入られたか?とも思い金目の置いてある部屋をのぞいてみたが何もあらされてはいなかった。

 だとしたら何のために?

それに食堂を荒らす必要があったのだろうか?

金目の物なぞ食堂にはおかない。それとも金品が目的ではなく食料を狙ったのか?しかし食料は出て行ったときと比べても少しも減ってはいなかった。それに食欲大魔人がこの船の食料を食べ尽くしたのであまり残ってはいなかった。もしかして食料が残っていなかったから腹いせのために?

などという疑問が浮かんでは消えて行った。

とついている赤い液体。これは何を意味しているのかサンジにはよく見てみるとテーブルを中心に物が散乱しているのがわかった。それに点々容易に想像ができた。そのまわりにあった白い液体。散乱した部屋。この3つの物証がここで何があったかを示していた。

「まさか・・・」

 サンジはぼそっと呟いた。

その時コンコン、と背後で音がして、サンジは後ろを振り向いた。

「やあ、サンジくん。何してるんだい?」

 そこにいたのはルフィが敬っている赤髪のシャンクスがいた。

「赤髪・・・。あんたこそ人の船で何やってるんだ?」

 これでこの事態を引き起こした人物が誰と誰なのかが明確になった。

「ちょっとね。ルフィと久しぶりに会ったから二人っきりで話をしようと思ってね。あがらせてもらったんだ。そうしたらちょっと喧嘩になってなー、まいった、まいった」

 シャンクスはがはっはっはっ、と笑った。だがサンジには瞳が笑っていないのがわかった。

その瞳は自分を邪魔者と見ている瞳だ。

サンジはバラティエにいた頃からそんな瞳は十分に拝ませてもらった。だから瞳の状態ぐらいすぐにわかる。

瞳は人の心を映す鏡とはよく言ったものだぜ。

サンジは怒りが込み上げてくるのを押さえながら言った。

「あんた嘘が下手だな。この状態とあんたの瞳を見ればすぐにわかるよ。ここで何があったかぐらい。俺はそんなにガキじゃないもんで」

 サンジはタバコをくわえ、一服する。

 シャンクスは笑うのをやめサンジを見る。

「なるほど。サンジくんも大人になったんだ」

「ったりめーだ」

 サンジはシャンクスを睨みつけた。それを見てシャンクスはふっ、と目を細めた。

「でもまだ子供だな。感情を隠し切れていない。まあ、俺も感情を隠し切れずに暴走しちまったがな」 

 シャンクスは散乱している部分を見る。

「今日は俺が悪いと思ってる」

「・・・・・」

 サンジは黙って聞いていた。視線は睨みつけながら。

「でもこれだけは言っとくぜ。あいつは俺のモノだ。誰にも渡さねーぜ。あいつは10年前から狙ってたんだ。誰にも渡さない」

 シャンクスの瞳が鋭く光る。

「!!!」

その視線にサンジは背筋がぞっとした。シャンクスから放たれる威圧感が只者ではないことを物語っていた。

「・・・あいつはモノじゃない」

 低く呟く程度にサンジは言った。

「そうモノじゃないさ。お前達のな。とくにあの剣士だ」

 剣士?ゾロのことか。

「お前らには渡さない。絶対にだ。・・・まあ、今日はここで引き上げるよ。これ以上ここにいても意味がないからな」

 そういうとシャンクスは見を翻す。

「おい、待て!!ルフィはどこにいる?!」

「ルフィはこの船の中にいるよ。どこかの部屋にね」

 それだけ言うとシャンクスは船から降りていった。

 サンジは遠くなっていくシャンクスを消えていくまで睨んでいた。

サンジはルフィが心配になり船の中を駈けずり回った。船の中の部屋だから探すのは簡単だった。そんなに大きくない船だ。部屋数も限られている。しかし駆けずり回ったぐらいの勢いでルフィを探した。

ルフィを見つけたのは生憎にもゾロの部屋だった。多分1番この部屋が食堂から近いので運んだのだろう。

 ベットの上に横たわっておりちゃんと毛布がかけられていた。サンジは近くによりルフィの顔を見る。表情は心なしか血の気が引いている気がした。

サンジはかわいそうに思えてきて手でルフィの頭をなでた。

「うん・・・」

 それに気づいたのかルフィが声をあげる。

「ルフィ?気がついたか」

「・・・サ・ンジ。ここは・・・」

 ルフィは周りを見てみると自分の部屋じゃないことに気がついた。

「ゾロの部屋だよ。ルフィ」

「そっか、俺・・・シャンクスに・・・。ぐっ・・・っ・・・」

 ルフィは言いながら涙を流す。

「ルフィ・・・。もう忘れろ」

 サンジはルフィの頭を何度も優しくなでる。

「サン・・ジ、知って」

ルフィの声が涙声になる。

「ああ、さっきあいつと鉢合わせになった。でも俺はお前に対する見方はかわんねーぜ。俺にとっちゃお前はこの船の船長だ。それは絶対に代わりはしねー」

 サンジはルフィの目を見て話す。自分が嘘をついていないとわからせるために。

「なっ、なあ。これってゾロも知ってるのか?」

 ルフィは恐る恐るサンジに聞いた。見るとルフィは怖がりを見せていた。いつも敵と戦うときにだって見せた事のない恐怖の表情。

 きっとゾロに知れるのが怖いのであろう。このことを知ったら自分は嫌われる。好きな人に嫌われるのはとても辛いことだ。理由が自分が悪いのならしょうがないが、他の男に犯られて嫌われるのは死ぬほど辛い。

 サンジはそんなルフィの内心を汲み取った。

「大丈夫だ。あいつは知らないよ。俺だけが知ってる。俺だけ。だから心配するな。誰にも言わねーから」

 落ち着かせるようにゆっくりと言う。

「本当か?!ゾロにだけは・・・、あいつだけは・・・」

 ルフィの表情が崩れだす。

「ああ、絶対に言わねー」

 ルフィはその言葉を聞くと上半身を起こし、サンジに抱きついた。自分の涙を見せないために。

「うわぁぁぁ!!」

 ルフィは大声で泣き始めた。今までの緊張の糸が切れて涙が溢れてくる。

「大丈夫。大丈夫だから・・・」

 そう何度もサンジは呟いた。

 あいつだけは絶対に許せねー。よくも俺たちの船長を・・・・!!

 サンジはルフィを落ち着かせながらも心の奥で怒りが湧き上がっているのを感じていた。

 

 

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