酒場に行く途中でナミがゾロに話し掛けた。

「ねぇ、ゾロ。ここだけの話、ルフィのことどう思ってるの?」

 ちらっとゾロを見る。

「あぁ?何言ってんだ」

 ゾロは眉毛をぴくりと動かす。

「わかっているくせに」

「だから何をだ?」

「言ったでしょう?ルフィよ、ル・フ・ィ!」

 ナミは名前を強調するために区切った。

 一緒に歩いているチョッパーはなんだ?なんだ?という表情をしている。

「別にどうも思っちゃいねーよ。アイツは俺たちの船長以外に何があるんだよ」

 ゾロは真顔で言う。

「あんた、本当にそうしか思っていないの?」

 私の思い過ごしかしら?とナミは思った。

ゾロは歩みを止め、

「他にどう思うんだ?」

と言った。

「そう。そうなら別にいいんだけど・・・」

「おい、なんだよ。はっきり言えよ。お前らしくねーぞ」

 ゾロはナミの肩を掴む。

「痛っ!ちょっと、乱暴にしないでよ。あんた、力の加減ってモンしらないの?」

 顔をしかめならが言った。

「ワリー」

 そう言うとゾロはすぐに手を離した。

「全く。あんた達ときたらホント馬鹿力なんだから」

「軽く掴んだだけじゃねーか」

「あんたには軽くのつもりでも、私達みたいな一般の人達からしてみれば馬鹿力になるわよ」

 ったくもー、とナミは肩を押さえながら言った。

「大丈夫?ナミ」

 ずっと見ていたチョッパーが心配そうにナミを見る。心配してくれる姿がとても可愛い。

「大丈夫よ、チョッパー。ありがとう」

 にこっ、とナミは笑った。

「俺、そんなにひどくしたか?」

 と、ゾロは言った。

「うん、した。―まっ、しょうがないわね。あんたルフィの事になるよ力の加減が制御出来ないんだから」

「はぁ?何言ってやがる」

「だってそうでしょ?ルフィの事になるといつもすっごい力を発揮するじゃない。それにルフィを一番に考えるし」

 にやっとナミは笑う。

「別にルフィだけじゃねーし、一番に考えてもいねー。もしそう思われてるならそれはアイツが船長だからじゃねーのか?

お前の考えすぎだよ」

 ルフィが船長だから俺はアイツを守る、と言う言葉にナミは聞こえた。

「・・・そう。あんたには自覚というものがないのね」

 軽くナミはため息をついた。

「なんだよ、自覚って・・・」

「わからないならそれでいいわ。私から言うものでもないし。―私てっきり二人は自覚しているのかと思ったわ。だって

ルフィはちゃんと自覚していたし」

 ナミは独り言の様に言った。

「まあ、自覚していないならしょうがないわね。せっかく面白い反応が見れると思ったのに」

 悲しそうに言った。

「おい、何一人でぶつぶつ言ってんだよ」

 そんなゾロの言葉を無視するように、

「あんなにアタックしているのに気づいていないなんて可哀想だわ」

 とナミは言った。

「おい、マジ何言ってるかわかんねーぞ」

 ハテナマークを顔に浮かべながらゾロが言う。

「別に言ってる事を理解してもらおうかなんて考えていないわ。でも、早く気づいてあげて」

 真剣な表情でゾロを見た。

「ナミ・・・」

「あんな一生懸命のルフィを見てると可愛くていいんだけど、気づかないあんたを見ると辛いのよ。可哀想に思えてくるの。

だから―」

 言葉が止まり、視線がゾロの後方に向けられた。

「シャンクスさん」

 とナミは言う。

 その言葉にゾロは振り返った。なんだか機嫌良さそうに見える。

「なんだ、まだ君たちこんな所にいたのか?」

 シャンクスは鼻歌を歌いながらゾロ達に近づいてきた。

 おや?なんか変だぞ。

 ゾロはさっきまでと違う視線で見られている気がした。鋭い視線が自分に向けられている。まるで敵に会ったような鋭い視線。

 なんだ?いきなり。

 自分に向けられている視線を睨み返すように自分の視線をぶつけた。

 シャンクスをそれがわかったのかふっ、と笑った。

「ちょっとコイツと話し込んじゃって。シャンクスさんはルフィともう話はすんだんですか?」

 そんな二人に気づかないのかナミはにこっと、微笑みながら言った。

「ああ、俺たちは一応な。まだ君たちこの島にいるんだろう?

「ええ、2、3日はいようかと思ってますが」

「だったらそんなに焦る事はないさ。ゆっくりと時間を掛けて話せばいいし」

 そう言うとシャンクスはゾロを見た。その視線にも敵意を感じる。

 ・・・一体何なんだ?わけわかんねーぜ、今日は。

 ゾロは軽くため息をついた。

「そういえばルフィはどうしてます?」

「ルフィなら寝てるよ。俺と話している時に寝ちまったんだ、疲れてたみたいだな」

 相変わらず、ガキだ。とシャンクスは笑った。

「そうですか」

 とナミは言った。

 珍しいわね。あんなにシャンクスさんと話したがってたのに、ルフィが疲れていただけで寝てしまうかしら?眠くてもはしゃい

で眠気はふきとぶはずなのに・・・。

 ナミは一瞬考えて、

「ねぇ、ゾロ。私船に忘れ物をしちゃったのよね。悪いけど取ってきてくれる?」

 と言った。

「何で俺が・・・」

「いいでしょ、まだそんなに距離は離れていないし」

「わーったよ。で、一体何忘れたんだ?」

 ぽりぽりと頭をかいた。

「海図よ。酒場に行ったら色々と情報が聞けるかもしれないからその時海図が必要になるかもしれないでしょ?」

 よろしく、とナミはウインクをする。

「ナミ、俺取ってこようか?」

 後ろに隠れていたチョッパーが言った。

「大丈夫よ、ゾロに取って来てもらうわ。チョッパーは一緒に酒場に行きましょう」

 ね?、と微笑んだ。チョッパーはその言葉にこくん、と頷いた。

「ちっ、人使い荒い女だぜ」

 ぼそっと、ゾロは呟く。

「何?何か言った、ゾロ」

「なんでもねーよ。海図を取ってくればいいんだろ?行ってくるよ」

 そう言うとゾロは戻ってきた道を歩き出した。

「頼んだわよ」

 その言葉にゾロは片手を頭上で振る。わかったよ、という合図だ。

 ゾロの後ろ姿をシャンクスは見つめていた。いや、睨みつけていたというほうが正しいだろう。

「じゃあ、シャンクスさん、チョッパー。私達は先に行ってましょうか?」

 ナミはその視線に気づいたのか、それとも気づいていないのかにこやかに話を振った。

「そうですね。先に行っていましょう。―では、私が酒場までエスコートしますよ、ナミさん」

「まあ、嬉しい。私の名前覚えてくれていたんですね」

「当然でしょう?こんな美人の人の名前、忘れたら天罰でも下りますよ」

「そんなこと。シャンクスさん口が上手ですね」

「よく言われます。でもこれは本当ですよ」

 そう言うとシャンクスはナミ達を促した。

 そして、

「この島にいるのが楽しくなってきましたよ。あなたたちに会えて・・・」

 と言った。

 ナミはその言葉に不安感を覚えながら酒場まで歩いていった。

 

 

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