「ふぅ、疲れた」 ぱたん、と香は自分用の部屋のベットにぱたん、と倒れた。 絵梨子はこの3日間、香とミックの為にホテルの部屋を借りてくれた。 一番会場から近いホテル。 しかも相当いい部屋。 香が今まで泊まったホテルの中では一番だった。 そんな部屋を感動するまもなく、香は会場入りをさせられた。 会場に着くなり、色々な演出をさせられて香は心身ともに疲れていた。 何度同じ道を歩き、何度同じところでターンをしただろうか? うんざりするぐらい、香は歩きずくめだった。 今日の練習を思い出して、深いため息をつく。 (毎回やって思うけど、モデルって大変な仕事よね・・・。こんな素人の私がモデルをやってもいいのかしら。) ベットの上に倒れて、疲労がどっとでてきたのか一気に眠気が襲ってきた。 瞼が勝手に閉じていく。 すぅ、と完全に瞼が閉じようとしたときに、トントン、とドアを叩く音がした。 その音で香は閉じられようとした瞼を一生懸命に開ける。 寝そべったまま、声を発した。 「・・・はい、どなた?」 「カオリ、俺だよ」 すると扉の向こうから、ミックの声が聞こえた。 「ミック・・・?」 ぽや〜、とした頭で考えた。 (一体何のようかしら?) 香はベットから起き上がり、腰掛けた。 「何かしら?ミック。何か急ぎのようでもあるの?」 「いや、急ぎの用はないんだが・・・。ちょっとカオリの顔が見たくてね。どうだい?これから少し飲みに行かないか?」 「・・・ごめんなさい、ミック。今日は疲れているの。又の機会にしてくれないかしら」 「そっか。・・・そうだよな。今日はとてもハードだったもんな。今日はやめておくよ」 「ごめんなさい」 「いや、カオリが謝る事じゃない。疲れているのを承知で来たんだから。・・・又、明日にでも誘いに来るよ。いいかい?」 「明日・・・」 ( 今日でさえ疲れているのに、明日なんて大丈夫かしら?) こうしてベットで起きていること事態が既に辛い。 (・・・流石にミックはタフね。撩と張り合っていけるわけだわ。) 自分がこんな状態であるのに、ミックが飲みに行く体力があること事態に香は驚いた。 ミックに関しては、今日の練習はそれほど辛くはなかった。 辛かったのは香に手を出さないように気を張り詰めていた事だ。 手を出したいという気持ちと出したいという気持ちが反発しあって、ミックの精神面を疲労困憊させていた。 肉体的には元々体力はあるほうだし、背筋も普段から伸びている。さほどこれといった筋肉を使うことはなかった。 「・・・駄目かい?」 返事がこなくて不信に思ったミックは答えを再び聞いてきた。 「いや、駄目ってことはないんだけど・・・。いいわ、明日体力があったらそのお誘いお受けするわ」 (たまには撩以外の人とお酒を飲むのもいいかのね。・・・それに、昔の撩の話が聞けるかもしれないし。) 「よかった。断られたらどうしようかと思ったよ」 心なしかミックの声が明るくなった気がする。 「じゃあ、カオリ。今日はゆっくりおやすみ。疲れているのに悪かったね」 ミックは最後まで紳士的な態度を貫く。 撩とは大違いだ。 (やだ・・・。こんな時まで?のことを考えるなんて、私どうかしてるわ。) 「いいえ、こちらこそごめんなさい。せっかく誘ってくれたのに・・・」 「カオリが気にすることじゃない。それに明日もあるし。・・・じゃあ、カオリ。俺はもう自分の部屋に戻るよ。なにかあったら直ぐに連絡するんだよ。いいね?」 「ええ、ありがとう。ミック」 「どういたしまして。・・・Good night、カオリ。良い夢を」 「おやすみなさい、ミック」 するとミックはゆっくりとドアから立ち去っていった。 (明日か・・・。明日もちゃんと練習をこなしていけるかかな?) きっと明日になればもっとハードな練習になるに違いない。 (依頼、引き受けなきゃよかったかな・・・。でも、生活苦しかったし・・・。) 香は弱気になる。 (まあ、後2日間だしなんとかなるかな?頑張ろう!) 香は気合を入れると、シャワーを浴びにお風呂場へ向かった。 ********** 次の日の夕方、明日が本番なので二人を休ませる為に、早く練習を終わらせた。 「絵梨子、じゃあ私達先に上がらせていただくわね」 香が着替えを済ませて絵梨子の元に来た。 「ええ、お疲れ様。明日のために今日はゆくっり休んでね」 まだ仕事をしている絵梨子は忙しそうに言った。 「あっ、ミックさん。あまり香を疲れさせないでね」 絵梨子はミックの考えを見通したのか、そう言った。 一瞬ギクッ、としたがミックは、 「OH〜、勿論です!明日のためにも今日はゆっくりと休みますよ」 にかっ、と笑った。 そのとき、絵梨子のアシスタントが近くまで来た。 「先生、お電話が入っていますが・・・」 「そう、わかったわ。今行くから少し待っててもらって」 「はい、わかりました」 アシスタントはそう言うと走り去っていった。 「じゃあね、お二人とも。明日で最後だからよろしくね」 絵梨子は手を上げてその場を去った。 「じゃあ、香。行こうか」 ミックが自然に肩を抱いた。 すると香はその肩に置かれた手をつねる。 「いてててててぇ」 ぎゅう、とつねられて顔を顰めた。 つねられたところをふーふーする。 「どこに行くの?」 「うん?そんな怪しい目で見ないでくれよ。ちょっと食事しに行かないかな〜と思って」 「・・・そうね。昨日約束したしね。いいわ」 香は軽く息を吐いた。 「本当かい?カオリ」 ミックは嬉しそうな表情をした。 「ええ、いいわよ。どこに食事にしに行くの?」 「そうだな〜・・・。ここの近くにイタリアンレストランがあるんだけどそこでどうだい?」 「じゃあ、そこにしましょう」 にこっ、と香は微笑んだ。 (イタリアンレストランって久しぶりだわ。撩なんてそいうところ前々連れて行ってくれなかったし。食事に行ったら行ったで女の子ナンパするし。ああ、もう!なんであんな奴好きになっちゃったのかしら!) 考えれば考えるほどむかついてくる。 無意識のうちに香の表情は怒気を含んでいた。 「カ、カオリ?何か気に障るようなこと俺、言ったかな?」 ビクビクしながらミックは香の表情を窺った。 「えっ?いや、なんでもないのよ・・・」 ははっ、と誤魔化すように笑った。 「そう。ならいいんだけど」 悲しそうにミック微笑む。 「・・・ミック?」 「さっ、行こう。カオリ」 そう言うミックの表情はいつもの表情に戻っていた。 「ええ・・・」 香は少し戸惑った表情をしたが、ミックが先に歩いていったので香はすぐにその後を追った。 ********** 絵梨子は急いで事務室の中に入った。 中には誰もいなく、電話を受けたアシスタントの姿もいなかった。 絵梨子は保留中になっている受話器を取る。 「お待たせいたしました。北原ですが」 絵梨子はそう出ると、相手の受話器からはツーツーと機械音が流れていた。 がちゃ、と受話器を元に戻すと、 「あら…?切れっちゃってるわ。そんなに待たせたかしら・・・?」 ふぅ、とため息をついた。 「まあ、少しぐらいかな。待ったの」 すると絵梨子の後ろで男の声が聞こえた。 「えっ?!」 聞き覚えのある声に絵梨子は驚いた。 (この声はもしかして・・・。) 振り向くとそこには絵梨子が思った人物の姿が入り口に立っていた。 「さ、冴羽さん…」 そう呟いた。 |
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