「そうですか、香さんの前に現れましたか」

 神埼は秘書にお茶を出させて、退出させるとそう呟いた。

「ええ。でも、とても可愛いお嬢様でしたよ。見たところ20歳前後ってところかしら?」

 香は先ほど現れた令嬢の顔を思い浮かべた。

「確か御歳は19歳だったかと思います。この間の3月で高校を卒業したとか。今は大学に通っているはずです」

「あんな可愛い子、しかも若い子に好かれて神埼さんも悪い気はしないんじゃないですか?」

 香は冗談交じりに言った。

「…はぁ、まあ悪い気はしないですけど。でも、年齢的にも容姿的にも私にはあの子とは吊り合いませんよ」

「そうかしら?」

「そうですよ」

 やんわりと神埼はそう言った。

「別に恋愛なんて年齢や容姿なんて関係ないと思いますけど。それに神崎さんは格好良いですよ。とても綺麗だと思います」

 にこっ、と笑いながら香は言った。

 その表情に神崎は一瞬固まった、が、すぐに気を取り直してティーカップに手を伸ばした。一口飲むと、

「綺麗だなんて初めて言われましたよ」

 そう言って苦笑した。

「あっ、ごめんなさい。綺麗って言葉男の人に使うものじゃないですね」

「いえ、そう思っていただけるなら嬉しいですよ」

 ふうわりと、神崎は笑った。

 ―やっぱり綺麗…。

 神埼の笑顔に見惚れた。

「さて、今日はどこに行きましょうか?香さんのリクエストに応えますよ。――ああ、それと。私のことは神崎ではなく、玲一と呼んでくださいね。香さん」

「あら?又私神崎さんって言ってました?」

 ごめんなさいと、ペロッ、と小さく舌を出した。

 その表情がとても可愛い。

「次からは気をつけるわ、玲一さん」

 笑みを浮かべながらそう言った。

 

+++++

 

 

 

 ふわぁ〜、と撩は欠伸をした。

 とぼとぼと駅までの道のりをだるそうに歩いている。

 最近飲みすぎで、起床する時間が夕方頃になっている。いつもなら、昼飯が用意されているのだが、今日に限って何も用意されていなかった。

 ―たまには香と外で飯食ってもいいかな〜。

 なんて思いながら、空かせた腹を抱えて、仕事に使っている伝言板まで向かった。朝昼夜とまめに仕事依頼を確認しに行っている。きっと今ごろは伝言板に行っているだろうと、撩の推測であった。

 行ってみると、仕事依頼が1件書いてあった。

 しかし香の姿が見つからない。

 ―あれ?いねなー。

 依頼などそっちのけで香の姿を探す。

 いないことを確認すると、もう一度伝言板に目を移した。

 丁寧な字がそこには書いてある。

 撩の感がこの字は男のモノだと告げた。

 ―見なかったことにしよう。

 撩は黒板消しを手に取ると一気に依頼を消した。

「あなたがシティーハンターなの?」

 すると突然、女の声が聞こえてきた。

「ああん?」

 撩はだるそうに振り向くとそこには可愛らしい女の子がいた。

 ―微妙なラインだな…。

 咄嗟に自分のタイプのテリトリー内にはいるか否かの判断をした。

 可愛い顔は好きなのだが、ちょっと幼い気がする。きっと年齢はまだ10代だろう。年齢もちょっと微妙だ。

 撩の周りには美人が沢山いるので、ある程度のヴィジュアルでは心が動かなくなっていた。

「だから、あなたがシティーハンターなの!って聞いているのです!」

 強い瞳が撩を見る。

 なんか苦手なタイプかも…。

「だとしたらなんだって言うんだよ?」

「だとしたら、貴方に依頼したいことがあります」

「依頼?お嬢さんが?」

 眉間に皺を寄せて、撩はその子を見た。

「ええ。私の依頼はある人から女を遠ざけて欲しいの!」

「…はっ?」

 撩は気の抜けた返事をすると、嫌な予感が横切り、はぁ〜、とため息をついた。

 

 

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