この気持ちはなんなのだろうか?

いつまでも見つめていたい、傍にいてほしい。

こんな気持ちは始めてだ。

こんなにも人に執着したのは生まれてこのかたない。

出会ってからまだそんなに長い年月が経っていないのに、こんなにも愛しく思える。

触れたい。

抱き締めたい。

 その唇にキスしたい。

 こんな風に思うのはおかしいだろうか?

 男にこんな気持ちを持つなんて・・・。

 でも、性別なんて関係なく七地の事が好きだ。

 どうしようもなく。

 どうやったら俺のこの気持ちをわかってもらえるだろうか?

 果たして受け止めてくれるだろうか?

 わからない・・・。

 でも、受け止められなくてもいい。

 このまま黙ったままで、これ以上七地との関係を続けていく事は無理だ。

 いずれ七地をこの手に奪ってしまうだろう。

 もう、限界に来ている。

 だから、七地を傷つける前に七地を開放しよう。

 どうせ受け入れられないのなら、自分から離れよう。

 七地が傷つくよりも俺が傷ついた方がマシだ。

 七地の涙はみたくない。

 闇己は意を決したような顔をすると、制服のポケットに入れてあった携帯を取り出した。

**********

 ピロピロと七地の携帯が鳴った。

 うん?誰からかな?

 七地は携帯を取り出すと、ディスプレイに『闇己君』と表示されているのに気がつくと、すぐさま通話ボタンを押した。

「もしもし。闇己君、どうしたの?」

「・・・ちょっと話があって電話した」

 おや?なんか闇己君の声が低いぞ・・・。なんかあったのかな?

 いつもと様子が違う闇己の声に七地は気付いた。

「何?話って」

「電話じゃ言えない。直接会って話したい」

 真剣な声が携帯から聞こえる。

 何か布椎家であったのかな?

 七地は心配になる。

「神剣の情報でもあった?」

 神剣の話なら電話でも直接言えばいい事だ。

 それは七地にもわかっていたが、とりあえず何か言葉を言おうとして神剣の話をした。

「いや、そうじゃない。でも、会って直接話したいんだ。七地」

 その声に何かあると踏んだ七地は、

「いいよ。じゃあ、会おうよ。俺、もう授業終わって、学校から出れるから直ぐにでも君の家に行けるけど?」

 どうする?と聞いた。

「その必要はない。もうすぐにアンタの所の学校に着く」

「へっ?ここに向かってるの?」

「ああ。・・・迷惑か?」

「まさか!迷惑だ何て思ってないよ」

「じゃあ、直ぐに行くから校門のところで待っていてくれ」

「うん、わかった」

 そう言うと七地は携帯の通話終了ボタンを押した。

 軽くふぅ、と溜息をつく。

 一体どうしちゃったんだろう?闇己君。

 不機嫌な声に七地は少し焦る。

 俺、また何かやらかしたかな・・・?

 七地は内心ビクビクモードに突入していた。

「ねえ、七地くん」

 トントン、と肩を後ろから叩かれた。

「うわぁぁ〜!」

 びっくりして大声を出して七地は飛びのいた。

 見ると美人な女性が七地の後ろに立っていた。

「な、何?」

「ちょっと、そんなに驚かないでよ。こっちがびっくりするじゃない」

 少し吊り上っている目を更に一層吊り上らせる。

「ゴ、ゴメン・・・」

 申し訳ないといった風に七地は謝った。

「まあ、いいわ。それよりもさ、七地君さっきの課題のノート取った?」

「さっきの課題?」

「ええ、考古学の授業の」

 その言葉を聞くと、七地は、

 ・・・なるほど、そう言うことか。ノートを借りに来たんだな。

 ぽん、と手を叩いた。

「いいよ。貸して上げるよ」

「えっ?」

「考古学のノート借りに来たんでしょ?」

 七地は鞄からノートを取り出してその女性に渡した。

「ありがとう・・・。よくわかったわね」

 先ほど目を吊り上げていたのをやめて、にこりと微笑んだ。

「まあね」

 だってあまり面識のない俺に他に何の様があるんだか。ノート取った?なんて聞かれれば普通わかるよ。

「じゃあ、遠慮なく借りていくわね。明日には返すわ」

「いいよ。ゆっくりで」

「そう?悪いわね。・・・じゃあ、お礼に―――」

 その女性はそう言うと、七地の首に抱きついて、頬にちゅっ、と軽いキスをした。

「なっ!!!」

 七地は顔を真っ赤にして、後ず去る。

「可愛いわね。こんな事ぐらいで赤くなるなんて。ノートのお礼よ。気にしないでね」

 そう言うと女性は何事もなかったかのように立ち去っていった。

 今時の女の子って凄い・・・。

 七地はキスされた頬を抑えて、感心する。

「・・・おい」

 後ろで低い、聞きなれた声が聞こえた。

「ぎゃっ!」

 またもや七地は驚いて奇声を上げた。

「く、闇己君・・・。驚かせないでよ」

 よほど驚いたのか七地は心臓の部分の服を鷲掴みにしていた。

「・・・今の女は誰だ?」

「えっ?」

「今の女は誰だと聞いたんだ」

 闇己の表情を見ると怒っているように見えた。

 何で怒っているのさ!俺何かしたかな?

 その怒りは自分に向けられている事という事が七地にはわかった。

「・・・闇己君?何で怒っているの?俺、何かした?」

 上目遣いで闇己に聞く。

 闇己はそんな七地の表情を見ると、ぐいっと、七地の腕を掴んで歩いていった。

「ちょっと、闇己君?!」

 いきなりの行動に七地は驚く。

「黙ってついて来い!」

 迫力のある声で闇己は怒鳴った。

 その怒鳴り声に七地はびくっ!とする。

 ・・・何?何んだか闇己君が怖いく感じるよ・・・。

 大通りに出て、タクシーを捕まえて無理やりに七地を乗せると、闇己は居候をさせてもらっている布椎家へタクシーを走らせた。

「闇己君・・・?」

 七地は闇己に話し掛けてみたが、一向に自分を見ようとしない、返事をしようとしない闇己に不安感が押し寄せる。

 どうしちゃったんだろう?闇己君。こんなわけのわからない闇己君をみるのは初めてだ・・・。

 七地は心配しながらも、不安感を拭いきれないまま無言のタクシーに乗っていた。

 

*****戯 言*****

ついに書いてしまいました!八雲立つ!
まだこの原作を読んで1週間も経っていないのにこんなにはまるなんて!!
闇己×七地の関係最高!!!

 

 

 

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