あの人は誰?

 いつも夢の中に出てくるあの人。                                                      

 わかっているのに目が覚めるとその人のことは覚えていない。顔を見ようとするとその人の顔に太陽の光が差し込んで見えなくなる。その人の顔をみようとその人に触れようとすると目が覚める。最近そういう夢を見ることが多くなった。

  疲れているのかねー。こうしょっちゅう見ると何か運命的なものを感じるな。もしかして俺の将来の人とかな。

「なーんてな」

 サンジはあくびをひながらベットから起き上がった。眠たい目を擦りながらいつものスーツ姿に着替える。

「さて、朝飯はなんにしようかねー」

 ぼそっ、とサンジは独り言を言う。

 こう毎日毎日食事を作っていると献立が大変である。朝、昼、夜、夜食と作らなきゃならないのでレパートリーが大変だ。何が食べたいと聞いてもばらばらなことを言う。

 まあ、それはそれで1日多くても4回は作るわけだからそれぞれの好みに合わせることは可能だ。だが聞いてもいつも同じことをいうので勝手に作ってしまう事が多い。

 いちいち聞いて作るのもいいがそうすると栄養のバランスが悪くなる。それで体調でも壊されたら大変だ。この船には船医がいないのだから。

それに料理で体調を崩すのなんてコックなんかくそくらえだ。

 サンジは眠気覚ましの一服をする。深く吸い込むと体中に煙が浸透する錯覚に陥る。何度か吸っているうちに働かなかった頭が動き出した。

「よしっ、今日もナミさんの朝食づくりに励むか」

 そういいながらサンジは部屋を出て行った。  

「ああー、腹減った。サンジのやつまだかな?俺は腹減って死にそうだぞ」

 ルフィはググッーっと虫がなる腹を抱えながらサンジを待っていた。

「なんか食えるもんねーのかなー?」

 きょろきょろと周りを見回す。しかし見渡す限りでは食べ物は見つからない。

 食べ物がないことがわかるとお腹の虫がさらにひどく鳴る。

「ううう、腹減ったーーー」

 厨房にあるテーブルの上に頭を乗せる。

 とするとドアが開いた。瞬時にサンジだとわかりテーブルから頭を離す。

「サンジ!!」

「ルフィ、お前こんなところで何やってんだ?」

 思いもよらない人物にサンジは驚いていた。

 こんなに早く起きているルフィを見るのは久しぶりだ。いつもなら起こしに行くまでねているはずだ。それとも寝ていられないほどお腹が空いたのだろうか。

「何ってサンジを待ってたんだよ。俺腹減っちゃってさ・何か食いもんねーかと思って来たんだけどよ、すぐに食えるのが野菜しかなかったからサンジがくるまで待ってようかと思って」

 ルフィは言いながらお腹をさする真似をする。

「ったく、腹空いたら自分で作れ。いや、お前に作られると食い物全部なくなるな」

「そんなことしねーぞ。ちゃんと野菜は残しとくよ」

「そうか、それなら、ってそれじゃ駄目だろうがっ!!」

 天然ぼけのルフィにつっこみを入れる。

「ちゃんと野菜も食え」

 とサンジが言ったところでググググッーとルフィのお腹の虫が合唱した。一瞬の沈黙が流れる。お互いの目が合いサンジはぷぷっと吹き出すように笑った。

「お前よほど腹が減ってるんだな」

 目に涙を溜めながら言う。

「なんだよ、そんな笑う事ねーだろ」

 珍しくルフィが真っ赤になりながらサンジに講義する。

「わりーわりー。だってタイミングがいいときになるんだもんよ。ついな」

 誤りながらもまだサンジは笑っていた。ぷっくりとルフィは膨れている。

「そんなに笑うなら俺部屋に戻る!!」

 ルフィは悔しさでうっすらと目に涙を浮かべていた。気づかれないように厨房を立ち去ろうとする。が、サンジがその涙に気づかないはずはない。

 泣かした!嘘だろ?!

「おい、ルフィ。ちょっと待て!」

 やばいと思いルフィの肩を掴んで自分に向かせた。本当に涙ぐんでいるのか確認するために目に視線を送る。しかし一瞬だがルフィはの顔は見えなかった。厨房のドアを開いていたため、朝の光がルフィの顔を遮った。

 え?これは・・・。夢と同じ・・・。

 サンジは妙なデ・ジャヴィを感じた。

 あの人はルフィ・・・?

「離せよ!サンジ」

 その言葉でサンジは正気を取り戻す。

「えっ、ああ。わりー」

 サンジは言われたとおりに肩から手を離す。

「ごめん、悪かったよ。後少しで出来るからもう少し待ってくれないか?」

 今度は素直に謝った。

「・・・おう」

 見ると浮かんでいた涙は消えており、その変わりに笑顔が戻っていた。

「なあ、サンジ。夢に出てくる人ってなんだろう?」

 突然ルフィが質問する。

 夢・・・?こいつも何か見てるのか?

 サンジは黙って聞いていた。

「最近さ、夢の中に出てくる奴がいるんだけど、顔を見ようとすると何故か見れないんだ。なんでだろ?」

 同じ夢。

 何故・・・?

 そうサンジは自分の中で質問を繰り返していた。

「さあ。夢はその人の願望の集まりっていうけどな。そう夢に出てくるってことはその人のことがよほど大事なんじゃねーか」

 そういってサンジははっとする。

 大事・・・?俺さっきあの人とルフィを・・・。ということは俺はルフィを大事に思っているってことか?まあ、そりゃそうだよな。こいつは

俺たちの大事な船長なんだから。

 そう自分で納得するように言い聞かせた。

「大事か。そうかもしれないな。俺そいつのこと好きだから」

 ルフィは真っ直ぐな瞳でサンジを見つめた。その瞳にドキッとする。

 サンジはルフィの夢の正体が誰だか知りたくなった。

「ルフィ、そのお前の大事な人って誰なんだ?」

 何故か自分の鼓動が早くなっていく。そんなたいしたこと聞いているわけでもないのに。

 でもすごく気になるのは事実だ。しかもその答えを俺だと望んでいる自分がいる。そのことに気づいたとき、サンジに衝撃が走った。

 そっか、そういうことか。これでわかったよ。俺はルフィのことが好きなんだ。恋愛対象として。だから夢に出てくるんだな。顔が見えなかったのはそれを認めたくなかったからか。

自ら夢の中で規制してしまったんだな。

 そう気づくとなおさらルフィが大事な人の正体が気になった。

「なあ、誰なんだ?」

「・・・教えない。教えるもんか。簡単には教えてやらない」

 ルフィは二カッと笑う。その表情がサンジに愛くるしく見えてきた。

「おい、どういうことだよ」

「内緒だ。そのうちわかるさ。さっ、皆を起こして来ようかな」

 半ドアーになっていたドアを開く。

「ちょっと待て!ルフィ!」

 じれったい気持ちがサンジを焦らせる。

「早く飯作ってくれよ。俺腹空いたから」

 じゃあな、と行ってルフィは出て行った。

 残されたサンジはしばらく呆然としていた。

 余  談

 あの厨房でのことがあってからサンジはルフィが話す人をこと細かくチェックし、会う人会う人に睨みをきかせていた。 

 その態度があからさまなのでゾロやウソップ、ナミにはサンジがルフィのことが好きだということがすぐにわかった。

 しかもルフィの態度を見ていればサンジのことをどう思っているのかも・・・。

 楽しいネタが増えたとこの二人には気づいていることを内緒にしていた。

 そのやりとりを見ていると飽きないのである。サンジにはかわいそうだがしばらくはこの状態のままほっておこうと3人は決めたのであった。

 

 

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