闇己は一人、街の雑踏の中に佇んでいた。

壁に寄り掛かり、腕と足を組みながら相手の到着を待った。

時計を見ると待ち合わせの時間より10分は過ぎている。

時間通りに行動しないと気が済まない闇己は、いつも予定時間より10分前に来ていた。

待ち合わせ時間になっても来ない恋人に、闇己は溜息をつく。

(遅い!あの馬鹿いったい何やってるんだ。)

待っても姿を見せない恋人に苛立を覚える。

周りできゃー、きゃー言う女共がとてもうざい。

(早く来いよ、七地。)

早くこの雑踏から抜け出したい。

抜け出さなくても七地がいれば何とも思わなくなる。

いや、何とも思わなくなるのではなく、七地の事しか考えられなくなるのだ。

出会ってから一日でも思わなかった日はない。

いつの間にか俺の心に住み着いていて、俺を捕らえて離さない。

あの屈託のない笑顔がとても愛おしい。

優しく包んでくれるあの温かい気がとても心地良い。

あの笑顔が見たくて、温かい気に包まれたくて七地の傍にいる。

本当なら俺の手の内に閉じ込めて、一生、永遠に傍におきたい。

そう思う事が多々あった。

恋人同士になる前は本当に閉じ込めてしまおうかと思った事もあるくらいだ。

付き合いたしてからはそう思う事は少なくなったが、やはり閉じ込めておきたいという気持ちはある。

しかしそれは七地と会っていない間だけだ。

会えば愛おしい気持ちで心が一杯になる。

闇己は走って来る七地の姿を見つけた。

「ご、ごめん!闇己君!待った?」

肩で息をしながら七地は言った。

闇己はじろっ、と見ると、

「10分の遅刻だ。いい加減にその遅刻癖直せよ」

「ごめ〜ん。出て来る時に夕香に見つかっちゃって。まいてたら時間過ぎちゃった」

情けなさそうに言う。

闇己は軽く溜息をつくと、

「夕香に捕まるのはいつもの事だろう。少しは遇う事でも覚えやがれ」

「うん、そうだね。兄貴なんだから少しは威厳を見せなきゃね」

「・・・期待はしてないけどな」

「あっ!酷〜い!俺だって兄の威厳くらい見せる事できるもん!」

ぷっくりと頬を膨らます。

「わ〜たよ。いずれその威厳とやらを見せてくれよ」

くすっと闇己は笑った。

「あっ?笑ったな〜」

七地はにこりと笑顔を見せる。

(・・・この笑顔。)

闇己は心の中に温かいものが流れ込んでくるのがわかった。

自然に笑みが零れる。

「ねえ、そろそろ場所移動しようか?」

「そうだな。時間が勿体ないし」

遠回しに遅刻の事を言う。

「今度は遅刻しないようにするよ。だから今回は許して。ね?」

七地は顔の前で両手を合わせた。

「今回だけだぞ」

「うん。ありがとう。じゃあ行こうか」

七地は笑みを見せる。

この笑顔を守れるなら俺はどんなことでもしよう。

お前がいつも笑っていられるように。

(俺が好きなその笑顔を失わないためにも。)

闇己はそう思うと、七地と共にこの場所から去って行った。

 

 

*****戯 言*****

 この話は待ち合わせしている時に、暇だったので、

携帯で書いてみました。なので、かなりの短編です。

携帯って便利だな、と思った瞬間でした。

 

 

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