「ねぇねぇ、さっきから校門にいる男の人見た?」

 クラスの女子がキャーキャーと騒いでいる。

 闇己はくだらないと思いながら、帰り支度をする。

 久しぶりに学校に来たので、あまり授業にはついていけなかったが布椎家には関係ない。

 様は優秀な巫覡ならばよいのだから。

「見た見た。すっごい可愛い人でしょう?どこの学校の人かな?うちの学校じゃみかけないよね」

 相方の女子が答えた。

「当たり前じゃない。うちの学生だったらあんなところで待ってないって。それにあんなに可愛かったら目立つもん。誰待ってるんだろう?気になる〜」

 地団駄を踏む。

・・・よくもまあ、こんなにも騒げるものだ。

闇己は感心する。

くだらない。

「お前らよくそんなに騒げるよな。ただ顔がいいだけじゃねーかよ」

 近くにいた男子が言う。

「何よ、自分の顔をよく見てからそういうこといいなさいよ!」

 気の強い女子が言う。

 男子は何も言えずにぐっ、と黙った。

 どうやら自分の顔に自信がないらしい。

「でも、お前らの言い分わからないでもないな」

 その男子学生の隣にいた男子が口を挟んだ。

「さっきちらっ、と見に行ったんだけどさ、男の俺から見ても可愛いと思ったぜ。顔とかは勿論可愛いんだけどさ、なんか雰囲気というかなんというか。

すっごく優しい感じがするんだよな。それに抱きしめたくなるというか」

 そう言うとぎゅう、と自分の両腕を抱える。

「そう、そうなのよ!可愛いだけじゃないのよね。もう、ホント、誰を待っているのかしら?」

 女子が顔を少し赤くして騒いだ。

 ・・・そんなに興奮するようなことか。

闇己は横目で見ながら、冷たい視線を投げかける。

しかし、その言葉を聞いて、(なんだか七地みたいだな。)直感的に闇己はそう思った。

アイツもほんわかとした、優しい雰囲気を持っている。側にいるだけですごく自分が優しい気持ちになれる。アイツが俺に笑いかけてくれるだけで幸せな気持ちになれる。あの笑顔を見るだけで俺も自然に笑みがこぼれてくる。あんな人間に出会ったのは始めてだ。ずっと側にいて欲しい。

あの笑顔を俺に向けていて欲しい。そう思うのは俺の我侭だろうか?

でもきっとこの我侭は許されるだろう。何せ闇己と七地は列記とした恋人同士なのだから。

闇己は無意識に笑みが顔にでる。

七地の事を思うと微笑まずにはいられない。

 その瞬間、周りにいた人達の行動が止まる。

 闇己はそんなクラスメイト達に気付かずに鞄を持って教室から出て行った。

「・・・おい。今の布椎の顔見たか?」

 男子学生がぼそっと呟いた。

「ああ、見た。俺、始めてみた。布椎の笑顔なんて・・・」

 あまりの珍しさに行動が止まってしまった。

 そしてあまりにも綺麗過ぎる笑みに。

「・・・なんか今日良い事あるかも」

 その言葉に皆が頷いた。

 そんな事がクラスに起こっているなんて気付くはずもなく、闇己は校門を出ようとした。

 すると、クラスで話題になっていた人物が闇己の姿を見つけると、

「闇己君!」

 にこりと笑って、話し掛けてきた。

「えっ?!そ、その声は七地?!」

 闇己はびっくりして、大声を出した。

「他に誰がいるのさ」

 七地はにこにこと笑う。

「お前眼鏡はどうしたんだ?それに髪型も」

 あまりにも姿が違う七地に闇己は戸惑った。

 七地はいつもかけている眼鏡を外し、いつもぱさっ、と目に掛かっていた前髪がふんわりと横に流れている。

 とても普段の七地とは考えられない。

「えっ?あ、これ。ちょっと雰囲気を変えてみようかと思って、コンタクトにしてみたんだ。髪型は夕香がいじくったの。・・・似合うかな?」

 少し照れくさそうに七地が聞く。

 軽く赤く染めた頬がとても可愛い。

 似合わないわけねーだろ。すっげー、可愛い!

 そう言いたかったが、恥ずかしいので、

「ああ、まあな」

 とぶっきらぼうに言った。

 なるほど・・・。これがクラスの奴らが騒いでいた原因か。こんなに可愛いなら騒がないはずがない。

 その時ふと、男子が言っていた事を思い出した。

『男の俺から見ても可愛いと思ったぜ。顔とかは勿論可愛いんだけどさ、なんか雰囲気というかなんというか。すっごく優しい感じがするんだよな。それに抱きしめたくなるというか』

この言葉を思い出してムカッ!とする。

 闇己の表情が変わり、七地は心配する。

「どうしたの?闇己君。・・・やっぱり俺の格好似合わないかな?」

「似合い過ぎる」

 ぼそっ、と闇己は言う。

「えっ?」

 七地はキョトン、とした顔になる。

 こんな可愛い七地を他の奴等に見せてたまるかよ。

 醜い嫉妬心な闇己に宿る。

「七地。その格好は今日だけにしておけ。それか俺以外に見せるな」

「はい?何で?」

 訳がわからずに、目をぱちくりとさせる。

 ああー!ったくもう!可愛いぜっ!

 ここが学校でなかったら速攻で抱きしめてキスするところだ。

 なんとか欲望を抑えると、ズイッ、と七地に詰め寄る。

「なっ、何?」

 七地はいつもの闇己の雰囲気と違う事に気付いて、何度も瞬きをした。

 闇己は顔を少し右斜めにして七地の顔に近づける。

 闇己の顔が後、数センチというところで止まった。

 うわぁ〜。久しぶりに見た。闇己君のアップ・・・・。すっごく綺麗・・・。

 顔が真っ赤になっているのがわかる。

 すっごいドキドキしてるよ・・・。やっぱり綺麗な子って迫力あるな。

 七地は闇己の顔に見とれる。

「アンタ、それ以上俺を誘う仕草してみろ。・・・キスするぞ?」

「!!!!!!!!!」

 七地はパクパクと口をあける。

 目がマジだ。

「わかったら、さっさとこの場から離れよう」

 闇己はそう言うと七地の腕を取って学校から離れる。

「ちょ、ちょっと待ってよ!闇己君」

 力強く引っ張る闇己に七地は慌ててついていく。

「何だ。アンタここでキスされたいのか?」

「ち、違うよ!そうじゃなくて・・・」

「じゃあ何だ」

 闇己はぴたっ、と止まる。

「あ、あのね・・・。俺、闇己君を誘う仕草なんてした・・・?」

 上目遣いで七地は見た。

 とても5つ年上には見えない。

 眼鏡をかけていない分、可愛らしさのグレードがアップしている。

 ああ、もう!その仕草が俺を誘っているっつーんだよ!

 七地の可愛さに闇己は頭を抱えた。

 いけない欲望がムラムラと湧きあがってくる。

 自覚がないっていうのは恐ろしいな。

 闇己は人通りのないことを確認して、

「・・・七地」

 闇己は七地の腕を引っ張り、自分の胸に収めた。

「く、闇己君?!」

「黙れ」

 そう言うと闇己は七地に口付けた。

「んっ!!」

 深い口付けに七地は抗う事が出来なかった。

 お互いの舌が絡み合い、ぴちゃぴちゃと音を鳴らす。

 そして充分に口付けを楽しむと、闇己は七地を離した。

「アンタ、もう少し色っぽいってことを自覚しろよ」

 耳元で囁く。

 七地はぼーっとしていて、聞いているのかいないのかわからない状態だ。

 闇己はそんな七地の状態を見て、くすっ、と笑った。

「七地、帰ったら続きでもしようか?」

 にやりと笑う。

「なっ!!」

 七地はその言葉にボッ!と赤くなる。

「こ、こ、こ・・・」

 口をパクパクと開ける。

「何だ?鶏の真似か?」

「このスケベーーーーーーーーーー!」

 七地はそう怒鳴るとスタスタと闇己を置いて歩いて行く。

「おいおい、ちょっと待てよ。そんなに怒ることないじゃないか」

 闇己は七地の後を追いかける。

「ふん!」

 歩みを止めない七地。

・・・ったく、お子様なんだから。まあ、そんな所が可愛いんだけど。

怒鳴られながらも、闇己はニヤニヤと笑っていた。

たまにはこんな日もあってもいいだろう。

闇己は暖かな日差しを感じながら、七地の隣を歩いていった。

 

*****戯 言*****

七地の美人ネタを書いてみたくて、書いたら

こうなってしまいました。七地って結構美人面

だと思うんだよね。可愛いし。きっと眼鏡を外

したらモテるはず!う〜ん、そんな七地に嫉

妬する闇己!!最高!!

 

 

 

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