青い空。

 青い海。

 そして真っ白な雲。

 どこをみても今日は晴天だということがわかる。

 ゾロはその良い天気の下で、筋肉トレーニングを行っていた。

「496、497、498、499、500!!」

 鉄の棒の先に大きい重りを3つつけて、振り続ける。

 顔や体から汗が流れ出て、全身を濡らしていた。

「なあ、ゾロ。遊ぼうぜ〜」

 ルフィが退屈そうに言った。

「俺は今忙しいんだ。てめぇー1人で遊んでろ」

「1人じゃつまんねーんだもん」

 ルフィはイジイジといじけながら言う。

「だったらお前も皆と一緒に買い物に行けばよかっただろうが」

 ゾロはじろっ、と一睨みする。

 その視線でルフィはぷくっ、と頬を膨らませた。

 そもそもなぜ二人が一緒にいるかというと、この二人を除いた者たちは、物資を確保のため、街に繰り出していたのだ。

 ゾロは元々見張り番として船に残された。

しかし、ルフィも見張り番をすると言い出した。

 普段なら二人もいらないとナミは言うのだが、今回は違った。

「アンタが街に行くと何かしら問題を起こすからそれが正解かもね。ゾロ、しっかりとルフィのお守りよろしくね」

 とナミはそう言い残して街に行ってしまった。

 ゾロはおいおい、と思いながらもナミの言うとおりだと思い、何も反論はしなかった。

 残された二人は暇な時間をそれぞれ使っていた。

 ゾロは筋肉の鍛錬。

 ルフィは周りにある景色を楽しんでいた。

 しかしそれも飽きたのか、ゾロのところに来て座り込んでしまったのだ。

 ゾロは無視をしながらも、鍛錬を続けていた。

「なあなあ、遊ぼうぜ」

 ゾロの周りをコロコロと転がりだす。

「いきなり転がるな!!」

 周りを転がられてゾロは怒鳴る。

「だって暇なんだもんよ〜」

 ぴたっ、と転がるのをやめてゾロを見る。

「じゃあ、見張り役をやるなんて言わなきゃよかったじゃんか。そうすれば街に行くことができて暇じゃなくなるぜ」

 ゾロは真っ直ぐ海を見つめながら、鉄の棒を振り落とす。

 ルフィはそんな自分に振り向かないゾロに悔しさがこみ上げる。

 なんでわかってくれないんだろう・・・。

 自分の気持ちをわかってくれないゾロを睨み始める。

 誰もいないから一緒にいたいだけなのに。

 仲間が増えてから二人っきりになることが滅多になくなった今日(こんにち)。

 ゾロが見張り役ということは船には誰もいなくなる。

 自分が残れば少しの時間だけでもゾロと二人っきりになれる時間ができる。

 ルフィはそう思って見張り役を買って出た。

 本当は街に行って、色々と観光したいのだが、二人っきりになれるチャンスの方が滅多に少ないので、ルフィは船に残った。

 そんな思いで残ったのに、なんでわかってくれないんだと恨めしい目でゾロを見た。

 ゾロはその視線に気が付いたのか、鉄の棒を振り落とすのをやめ床に置いた。

 軽くため息をつくと、

「今日はもうやめるかな」

 ぼそっ、と言って近くにあるタオルで汗を拭いた

 新しいシャツに腕を通す。

「えっ・・・」

「トレーニングはやめだ」

 そう言うとゾロはいつもの寝ている場所に行って腰を落とした。

 腕を頭に乗せて、寝る体制を整える。

 ルフィはその様子をみて、むかっとした。

 なんで、俺がいるのに寝ちゃうのさ!

 遊ぼうと言っているルフィを目の前にして、寝に入るゾロに怒りが込み上げる。

 ルフィは一言怒鳴ろうとして、口を開きかけた時、

「ゾ―――」

「来いよ」

「・・・へっ?」

 ルフィは勢いを削がれて、素っ頓狂な声をだした。

「俺の隣に来いよって言ってるんだよ」

「ゾロ・・・?」

「ん?違うのか?こうしたいからお前は俺の周りにいたんだろ?」

 的を得ている言葉をゾロは言った。

 ルフィはその言葉を聞くと真っ赤になった。

「なっ!・・・わかっていたんなら最初から一緒にいてよ!久しぶりに二人っきりになれたのに、いきなりトレーニング始めるんだもん」

 キッ、とルフィは睨んだ。

「・・・わかってるとかわかってねーとかよくわかんねーけど、俺はいつも通りの行動を起こしただけだ。二人っきりになっても俺達はかわらねーだ?」

「・・・それは俺のことはどうでもいいってこと?」

 睨んでいた瞳の力がなくなる。

「どうでもよくなんかねーさ。俺は皆と一緒にいても二人っきりでいてもお前に対する態度は変えていないつもりだ。皆の前でも二人っきりの時でもお前に触れたい時は触れる。二人っきりだからって特別な行動を起こそう何て思わない」

「・・・ゾロが言ってること俺には理解できないよ」

「理解してくれなくてもいいさ。俺にはお前が理解できないから」

「!!!!」

 心臓に激しい痛みが走る。

「何でそんな事言うの?・・・俺の事嫌いになった?」

 目に涙をためながらルフィは言った。

「なわけねーだろ。嫌いならとっくに船を降りてるよ」

「じゃあ何でそんな冷たい言葉を言うの?」

「冷たい?理解できないって言う言葉か?俺は別にお前を泣かすつもりでいったわけじゃねーぜ。実際にそう思っていることだから言ったんだ。お前は俺を理解できないし、俺はお前を理解できない。そうだろう?実際に」

 ルフィは少し考えると、コクンと頷いた。

 確かにゾロが何を考えているかわからない。

 どんな考えをもっているのか。

 ルフィは正直に答えた。

「じゃあ、あってるじゃねーかよ。お互いを理解しちまったらつまんないだろう?理解しちまったら一緒にいても行動や思考すべてにおいて理解しちまったら一緒にいてもつまらないだろうが。だったら理解できないほうがいいんだよ。だから俺達は理解できないままでいいんだ。俺はそう思う。・・・お前は違うかもしれないけどな」

「ゾロ・・・。よくわかんないけど、それは俺のことが嫌いじゃないってことだよね?俺と一緒にいたいってことだよね?」

 ルフィは自分なりに考えた事を言った。

 ゾロはその言葉を聞くと、にやっ、と笑って、

「勿論だよ、ルフィ。だからここにおいで」

 ゾロは手をルフィに伸ばした。

 ルフィはすぐにゾロの元に走って、胸に飛び込んだ。

「おい、そんなにひっつくと汗臭いぞ」

 ぴったりと顔を胸に埋めているルフィにゾロは言った。

「いいんだ。いいの。・・・だってゾロの汗なら臭くないもん」

 ぎゅう、とルフィはゾロの背中に腕を回して抱きしめた。

「・・・そうか?俺は汗臭いと思うけどな・・・」

 ゾロはそう言いながら、ルフィを抱きしめる。

「やっぱりお前のことは理解できねーや」

 ぼそっ、とゾロは言った。

「・・・うん、俺も。俺もゾロのことは理解できない。だから一緒にいたい。理解できないからこと一緒にいたい」

 ルフィは顔をあげて、にこっと笑った。

「・・・わかってんじゃねーか」

 ゾロは微笑むと、軽く額にキスをした。

 ルフィはしししっ、と笑う。

「ねぇ、もう少しこのままいてもいい?」

「かまわねーよ。皆が帰って来てもこのままでいてもいい」

「・・・本当?」

「ああ、かまわない」

 ゾロは又額にちゅう、とした。

「へっへっへっ・・・」

 ルフィは思わず笑いが込みあがる。

「・・・気持ち悪い笑い方すんな」

「だって嬉しいんだもん。皆がいるまえでイチャイチャできるのって。てっきりゾロはそういうのさせてくれないかと思った」

「俺はイチャイチャするのは嫌いだな。自分がアホらしく思えてくる。―――でも、お前とこうしているのは悪くはない」

 ルフィはその言葉を聞くと、

「やっぱりゾロは何を考えているのかわかんないや」

「それはお互い様だ」

 二人は視線を合わせると、にかっ、と笑った。

 するとルフィはゾロの胸に顔を埋め出した。

 にこにこと顔を緩めながら。

 ゾロはその笑顔を見ると、瞼を閉じた。

 ルフィが自分の胸にいるということが安心感を与えたのか、急激な眠気を誘ったのだ。

 いつしか二人は深い眠りに入ってしまった。

 すやすやと寝息を立てながら、のどかな時間を過ごした。

 買い物から帰ってきたナミたちは二人を起こそうとしたが、あまりにも幸せそうに眠っている二人を見て起こすのはかわいそうだと思い、そっとしておいた。

 二人はしばらくの間、皆がいるなかでゆったりとした時間を過ごした。

 

 

 

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