寒い夜の中、ルフィは赤髪快速団の頭領、シャンクスの船に泊まりに来ていた。

「ねえねえ、シャンクス。いつも俺が使っている枕は?」

 ルフィはベットの上でごろごろとしながら聞いた。

「ああ、ちょっと、昼間干している時に海に落こっちまってさねぇんだよ。だから今日は俺と一緒の枕で我慢してくれ」

 そう言うとシャンクスは上半身のシャツを脱いで、ベットに潜り込んだ。

「えぇ〜。だってそうすると狭いじゃん!」

 ルフィは不服そうな面をした。

「しょうがねーだろ?それにお前はまだ子供だし頭小せーからいいだろうが。文句、言うな」

 ほら、と枕をポンポンと叩いてルフィを誘った。

 ぶきっちょ面をしてルフィはしぶしぶ布団のベットに入って枕に頭を預けた。

 それを見届けるとシャンクスも枕に頭を乗せた。なるべく端の方に。

「狭いよ、シャンクス」

「しょうがねーだろ。俺だって結構気ぃ使ってるんだぜ」

 言われて少し頭を横にずらした。頭が半分枕に乗っている状態で、少しきつい。

 ルフィはずらしてもらったぶんだけ、頭をずらした。

「うん。これならいい」

 すっぽりとルフィの小さい頭が枕に埋まった。

 この枕は普通の枕よりも少し大きめに作られてあったが、二人分の頭を乗せるのにはぎりぎりの大きさだ。まだルフィが子供で助かった。

 ぴたっ、と体が密着するぐらいにくっつく。腕とかが重なり合う。

・・・う〜ん。いい状況かも・・・。

嫌な表情を浮かべながら内心、ルフィとくついていられにやにやしていた。

「なあなあ、ルフィ。久しぶりに手を繋いで寝ないか?」

「えっー。やだ。シャンクス手、冷たいモン」

 ルフィはあからさまに嫌な顔をした。

「・・・お前、その顔すっげーショックだぞ」

 心底嫌な顔を見てシャンクスはショックを受けた。

「だってさ、シャンクスの手、すっごくひんやりとしてて眠れないモン」

「大丈夫!お前の体温でそのうち暖まるから」

「どこが大丈夫だよ!それは俺の体温を奪うってことじゃないか!」

 ルフィはシャンクスが触ってくる手を払いのけた。

「奪うって、お前、最近そういう言葉どこから覚えてくるんだ?」

 払いのけられて更にショックを受けながらも、負けじとルフィの手をつかもうとする。

「シャンクス。・・・っーーーーー、冷たい!」

 ルフィはがしっ、とシャンクスの手に捕まってしまった。

「ちゅめたい・・・」

 ルフィは泣きそうな顔になる。

「そんな顔することねーだろうよ」

 しかしルフィの『ちゅめたい』という言葉がすっごく可愛く聞こえた。

 『冷たい』じゃなくて『ちゅめたい』がポイントだな。

 シャンクスはほんの小さな幸福感を味わった。

 可愛い・・・・。

 鼻血がでそうな勢いだ。しかし、その幸福感も長くは続かなかった。

 ルフィはあまりの冷たさにブンブンと手を振った。

「こらっ!暴れるな!」

 捕まえていた手を動かないように押さえ込む。

 俺の手ってそんなに嫌がられるほど冷たいのかよ・・・。

 本当に嫌がっているルフィにシャンクスは泣きそうになった。

「あっ、でも段々冷たくなくなってきた」

 そう言うとルフィはぴたっ、と動きを止めた。

「だろう?だから大丈夫だって言ったじゃんよ」

 シャンクスはにこにこしながら言った。

「でも、これって俺の手を握ってたから暖かくなったんだよね」

 ぐさり。

 言葉が心臓を掠めた。

 そんな事に気づかないでくれよ、ルフィ。

 はっはっはっ、と心の中で苦笑いした。

「まあ、そうとも言うわな。でも俺、ルフィと手を繋いで寝てたいんだ」

 真剣な顔をして言った。

「・・・37歳が7歳のガキ言う言葉じゃないね」

 ぼそっ、とルフィは言った。

 ピキーン!!

 どこからともなく吹雪が舞い、シャンクスを凍り漬けにする。ブリザードが痛い。

・・・そんな風に言わなくてもよ・・・。それにしても何て達観しているガキなんだ・・・。

 又シャンクスは泣きそうになった。

 そんな事俺だってわかってるさ。でも、俺はルフィと手を繋ぎたいんだーー!

 凍結している中でシャンクスは叫んだ。

 そんなシャンクスを見てくすっ、と笑った。

「でもしょうがないか。俺もシャンクスと手を繋いで寝たいし」

その言葉を聞くと同時に、凍結していたものがドロドロと融けていく。

「マ、マジ・・・?」

「うん。マジ」

 にこっ、とルフィは笑った。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉ!おっしゃーーーー!

 シャンクスは心の中で雄たけびをあげた。

「じゃあ、早速気が変わらないうちに手を繋いで寝ようぜ」

 言いながらシャンクスは手をがしっ、と握って部屋の元気を消した。

「・・・シャンクスって結構、子供なんだな」

 ルフィはシャンクスに体制を向けて言った。

「恋する男は皆好きな奴の前では子供になるんだよ」

「恋?何それ」

「何でもない。お前がもっと大きくなったら教えてやるよ。―――さあ、とっとと寝ようぜ」

 おやすみ、と手探りでルフィの顔を探し当て、額にちゅう、とキスをした。

「絶対だぞ!大きくなったら絶対に教えてね」

「はいはい。おやすみなさい」

 そう言うとシャンクスはルフィを抱え込むようにして寝た。

 気がつくとさっきまで冷たかった手が、汗でしっとりと濡れている。

 よほどルフィに暖められたのか、それとも好きな人のでだからこんなにも汗ばんだのかシャンクスには理解できなかったが、ぎゅう、と手を握った。

 するともうルフィは眠りに入ったのかスースーと寝息が聞こえてきた。

 シャンクスはふっ、と笑うと自分も眠りに入った。

 

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