日差しが暑い夏の午後、サンジは昼食の後片付けに精を出していた。

他の皆はあまりの暑さに部屋に入ってダウンしていた。

サンジも本当はそうしたかったが、休んでから後片付けをすると面倒臭くなるので、今やることにしたのだ。

なにせ8人分(カルーを含む)の食器の後片付けた。結構時間がかかる。

作る料理もたくさんあれば、それを盛るお皿はその分だけ必要になってくる。

流し台に山積みされている食器類を見るとサンジは深くため息をついてしまうのだ。

ふぅ、毎回毎回すごい量だよな。

暑いせいもあって食器を洗う動きが鈍ってしまう。

汗をダラダラをかきながら、サンジは食器を洗っていた。

これが冷たい水ならすこしはマシだったのにな。

流れ出てくる水を眺めながらサンジはそう思った。

大方洗い終えて、サンジはひとまずため息をつく。

後少しか・・・。今度はアイツラにも手伝わせるかな。

サンジはアイツラを思い浮かべる。

ルフィにゾロにウソップにチョッパー。

勿論女性にはそんなことはさせません。

ナミさんとビビちゃんにやらせるわけにはいかないもんな。

サンジはそう思うと、ぴたっと手が止まった。

・・・でもあの4人に手伝わせると皿を割りそうだ。ウソップやチョッパーはともかく、ルフィとゾロはやりかねない。

確かルフィがバラティエで雑用をやっていたときは皿がわれかなった日なんてなかった気がする。

いや、日じゃない。分の間違いかも。

ガチャン!と数分後とに聞こえていたかも・・・。

サンジは途方にくれると、深くため息をついた。

やっぱりこれは俺がやるしかないのか・・・。

食器類を洗い終え、近くにある布で食器類を拭きに入った。

水気を良く切ってから拭き取る。

手馴れた手つきで次々に食器を拭いていった。

後半分ぐらいというところで、ドアが開いた。

おや、珍しい。この時間に現れるなんて・・・。

サンジは入ってきた人物を見ると、

「どうしたんだ?ルフィ。お前がこの時間帯にここに来るなんて珍しいじゃないか」

手を止めずに言う。

いつもこの時間、ルフィはご飯を食べて部屋で寝ているのだ。

たらふく食っているので、眠気に襲われるのだろう。

いつもウトウトとしながら、部屋に入っていくのだった。

しかし、今日はそのルフィが食堂に戻ってきた。

だからサンジは珍しいと思ったのだ。

「うん、ちょっと喉乾いちゃって」

べー、と舌を出しながら体温を調節する。

お前は犬かよ。

そう心の中でつっこみをいれながら、冷凍庫から氷を出し、コップに入れてやる。

冷蔵庫からミネラルウォータを取り、コップに注いだ。

ほら、と言ってそのコップを差し出す。

「ありがとう」

そう言うとルフィは一気に氷ごとそれを飲み込んだ。

ごっくん!!

プッハァ〜、とルフィは恍惚の表情をした。

「おかわり!」

ルフィはコップをサンジに差し出した。

「もうちょっと味わって飲みやがれ!」

このボケッ!とと付け加える。

コイツには常識というものがねぇのかよ。・・・ったく、普通氷もろとも一瞬で飲むかよ。

悪態をつきながらも、なぜか心から憎めないルフィを見る。

するとダラダラとかいた汗が、氷水を飲んで少しは引いたのか、うっすらと汗ばんでいる程度になっていた。

暑さで体が少し赤くなっていて、艶かしくサンジには見えた。

赤いベストが汗で張り付いる。

ルフィはあまりの暑さにベストの襟元を掴んで、パタパタとさせて体に微量の風を送っていた。

その仕草が妙に色っぽい。

サンジはその仕草に心を一瞬奪われた。

しかし、はっ、と正気に戻って止まっていた食器拭きを再開し始めた。

やべー、やべー。俺何ルフィに欲情してんだよ。暑さでどうにかしちまったのかな。

抱きしめたい衝動に駆られて、サンジは慌てた。

ルフィを抱きしめたいなんて思うなんて、どうにかしてるぜ。

気温が暑くて汗をかいている汗とは別に、違う汗がサンジの額に浮かぶ。

ルフィはそんなサンジの心境を知ってか知らずか、甘ったるい声でサンジに声をかけた。

「なあなあ、もうちょっと水くれよ」

すりすりと近寄ってきて、上目遣いでサンジを見た。

頬が桜色に染まっていて、その上目遣いがサンジの心にクリーンヒット!

こ、こいつわかってやってるのかよ・・・。

目をうるうるとさせながら、サンジを見る。

しっかりしろ!俺!男に惑わされてどうするよ?!

下半身がうずうずとし始めるのを何とか抑える。

これ以上ルフィを見ているとおかしくなりそうなので、ルフィから視線を外す。

「駄目だ。急に冷たい物を飲んだら腹壊すから。それに、皆だって暑いんだ。ただでさ今この船は水不足なんだから、少しは遠慮しろ」

そう言いながら拭き終わった食器を棚に戻す。

「えぇ〜、いいじゃん。後ちょっとぐらい」

ぶぅすか、ルフィは文句をたれる。

「ああ、もううるさいから部屋に戻って寝てろ!そうすりゃ、少しは喉の渇きもなくなるだろうよ」

しっしっ、と手を振る。

ルフィはいきなりペタン、と床に座ってあぐらをかく。

唇をとんがらせて、又上目遣いにサンジを見た。

「飲ませて」

じーっと熱い瞳で見つめられる。

こ、こいつどこでこんな仕草を覚えたんだ?

あまりの可愛さに、サンジは硬直した。

このままだとルフィの言うとおりに水を出してしまう。

この船には本当に後少ししか水がないのだ。

この船長の我侭で水をあげるわけにはいかない。

後少しで街につくのがわかっているのならば、いくらでも水を差し出すのだが。

この船のコックとしてはこれ以上ルフィに水を上げるわけにはいかなかった。

なんとか理性を総動員させて、ルフィに水をあげるのをやめる。

「何度言っても駄目だっていうものは駄目だ」

もうこれ以上俺を悩まさせないでくれ。今日の俺変なんだから。

未だにじーっと自分のことを見ているルフィをキッ、と睨みかえす。

そうでもしない限りルフィは水のことをあきらめてくれそうもなかったし、自分の気持ちも負けそうな気がしたからだ。

「ちぇ、なんだよ。ちょっとぐらいいいじゃんか」

ぷくぅ、と頬を膨らませる。

サンジはそんなルフィの仕草も可愛いと思ってしまう自分がいることに気づく。

・・・これってかなりやばい状態?

どうしても触れたくて、手がわなわなと震えているのがわかる。

ああ、もう!こいつ、何でこんなにコイツが可愛く見えんだろう?!・・・もう、我慢の限界かも・・・。

右手でくしゃ、と自分の髪を掻き揚げる。

顔をあげてルフィを見ると、悲しそうな表情をしていた。

・・・それの表情は俺を誘惑してるのかよ。

そんなはずはないと思いながら、サンジは深くため息をつく。

「ったく、お前はわかってやってんのかよ」

ぼそっ、とサンジが呟く。

「・・・何が?」

キョトン、とした顔をする。

やっぱりな。コイツわかってねーよ・・・。コイツ・・・。

「・・・そんなに喉が渇いているなら、潤してやるよ」

サンジの顔つきが変わる。

「本当?!」

ルフィはその変化に気づくはずもなく、ぱあぁ、と表情が明るくなった。

「ああ、本当さ」

そう言うとサンジはルフィの近くに行って、しゃがむ。

するとルフィの顎をくいっ、と持ち上げた。

「えっ・・・」

ルフィが一言漏らすと、その唇はサンジの唇で塞がれてしまった。

ルフィは衝撃を受けていると、その間にサンジの舌が入ってきた。

びっくりして押しのけようとするが、動きが封じられて押しのけられない。

サンジは動きがとれないことをいい事に、何度も舌を絡ませた。

すると二人の唾液が口内から溢れてきて、二人の顎を濡らした。

十分過ぎるほど濡れると、サンジは唇を離した。

「・・・どう?潤っただろ」

にやっ、と笑う。

ルフィはその笑顔を見て、かぁぁぁぁ、と顔が真っ赤になっていくのがわかる。

「なっ、何すんだよ!」

耳まで真っ赤になりながら怒鳴る。

「何ってキスだよ。お前が喉が渇くって言ったんだろう?だから俺が潤してやったのさ」

いけしゃあしゃあとサンジは言い放った。

言われてルフィはぐっ、と黙り込む。

確かに喉はもう渇いてはいない。

それは驚きによるものなのか、それともサンジの水分で潤ったのかわからないが。

「それともまだ、渇いてる?」

意地悪くサンジは言った。

「っ!!・・・もう渇いてないよ!」

そう言うとルフィは食堂を駆け足で去っていった。

「あら?行っちゃった・・・。ちょっとやりすぎたかな・・・」

サンジは先程のキスを思い出した。

自分でもなぜルフィにキスをしたのかわからない。

ただ無性に腹が立ってついキスをしてしまったのだ。

男相手にキスしたのは初めてだったが、そんなに嫌ではなかった自分に気づく。

あ〜あ、こりゃマジでやばいかもな・・・。

気持ちを落ち着けようとして懐からタバコを取り出し、一服する。

これもきっとこの暑さのせいだな。でなきゃ、俺が男相手にキスなんかするはずねーし。

きっとそうだ。

と自分に言い聞かせる。

でなきゃ、やってらんねーよ。

ぷかぁ〜、と煙を吐き出した。

少し自己嫌悪に陥りながら、暫くの間ため息の嵐を起こしていた。

 

 

 

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