ホント、近頃の俺は不甲斐ないと思う。

 アイツの態度、言葉一つ一つに敏感になり、振り回されっぱなしだ。

 俺はアイツに告白して、キスもしてヤルことだってやった。(無理やりだったけど…。)

 なのに、アイツの気持ちがわからない。

 告白したときには快い返事をもらえなかったし。

 体を重ねても、よくわからないアイツの本当の気持ち。

 何度も体を重ねていると、アイツも観念したのかあまり抵抗は見せなくなった。

 それはそれで嬉しいんだけど、何か空虚感を感じる。

 体だけ手に入れても結構虚しいモノがあるのだ。

 どうせなら、体だけではなくて心まで手に入れたい。

 ――それは俺のわがままなのか?

 がっくし、とサンジは項垂れた。

 今はサンジが見張りの時間帯で、一人で海を見ていた。

 いや、本当に見ているのかどうかは疑問である。

 見張っていても心ここに在らず、といった感じだ。

 しかも、今は項垂れていて海を見つめている目が閉じられているのだ。これならば近くまで敵船が来ない限り気づかないだろう。

 何度も体だけを重ねていると、本当のことが聞き出せなくなってくる。

 もしかして、ただの性欲処理に使われているんじゃないかとか、他に好きな奴がいるんじゃないかとか、マイナス方面に気がいってしまう。

 ――思えば告白してから、アイツの気持ち確かめたことなんてないモンな〜。今更アイツの気持ちが知りたいだなんて、俺って間抜けすぎ…。

 はぁ〜、とため息をつく。

「おい、お前何してんだ?」

「のわっ!」

 急に声を掛けられて、サンジは前につんのめりそうになる。

 危なく海に落ちるところだった。

「び、びっくりすんじゃねーか!急に声を掛けるんじゃね―よ!」

 バッ!と勢いよく振り向くとゾロが不機嫌そうな顔をして後ろに立っていた。

――あっ、やばい。

「じゃあ、どうやって声を掛けたらいいんだ?あぁ?!」

 吊り上っている目が尚更きつく釣り上がった。

「あっ、ご、ごめんなさい」

 つい素直に謝ってしまう。これ以上、ゾロを起こらせたくはない。

「ところで、何でお前ここにいるんだ?あっ、もしかして俺に会いに来てくれたとか?」

「バ〜カ。ちげーよ。なわけねーだろう。もう見張り交代の時間だろうが。だから交代しにきてやったんだよ。それとも、まだ見張ってたいのか?」

「ちぇ、残念だな〜。でも、もうそんな時間か…。時が経つのが早ぇな〜」

「何、おっさんくさいこと言ってんだ。お前は。――ほら、交代してやるからさっさと退きやがれ」

 ゾロはサンジの肩を掴むと後ろに追いやった。今までサンジがいたところに立つ。

 ――綺麗な背中だよな〜。抱きしめたくなる…。

 まっすぐな姿勢で海を見ているゾロにサンジは惹かれる。

「ん?何だ。まだ何か用があるのか?」

 帰らないサンジにゾロは顔を向けた。

「…いや、何でもない」

 サンジは無表情でそう言うと下に降りようと梯子に手を掛けるとゾロが口を開いた。

「お前、何悩んでんだ?」

「…えっ」

「さっき、ここでため息ついてただろ?」

 腕を組みながらそう言う。

 ――もしかして、俺のこと心配してくれてんの?

 思いも寄らないゾロの言葉にサンジは呆然となる。

「んだよ。違うのか?」

 返事を返さないサンジに眉間に皺を寄せる。

「あっ、いや…。悩んでもないことはないんだが…」

 ――お前の気持ちが知りたいだなんて、言えっかよ。

「んだよ、はっきりしねーな。男ならハッキリ言ってみろ」

 ブチッ!

 その言葉にサンジの理性が切れた。

「人の気持ちも知らねーで…」

 ブツブツと言う。

「あぁ?聞こえねーぞ」

「じゃあ言ってやるよ!お前さ、俺のことどう思っているわけ?」

「…どう言うことだ?」

 ゾロはわけがわからなくて、目を細める。

「俺はお前のことが好きだよ!愛してるよ!なのにお前は、俺に抱かれながらも一言も好きだなんて言ってはくれない!俺はそれが不安なんだよ。俺だけ気持ちが走っていて、お前は俺のことなんてなんとも思っていないんじゃないかって…」

 サンジはドキドキしながらゾロを見る。

 ゾロは表情一つ変えずにまっすぐにサンジを見つめていた。すると、ふぅ〜とため息をつく。

「お前さ、この俺が何度もお前に抱かれていると思う?」

「えっ…。それは俺が無理やりやったから…?」

「ちげーよ」

「じゃ、じゃあ、やっぱり性欲処理…?」

 恐る恐る見る。

 もしこれが本当ならば多大なショックだ。

「んなわけあるか!」

 キッ!とゾロは睨む。

「俺が性欲処理だけの為に男相手に抱かれるわけねーだろう!よく、考えてみろよ。痛てぇ思いしてまで性欲処理なんかするか」

 ゾロはそう言うとサンジに背を向けた。

 その時サンジの表情に光がさし始めた。

「じゃあ…。もしかしてゾロも俺のことを…?」

 ぱぁ〜、とサンジの表情が明るくなる。

「ゾロ!」

「うわぁ!」

 サンジはゾロに抱きつく。

「ゾロ、ゾロ本当に俺のこと好き?男なのに抱かせてくれるぐらい」

「………」

 無言のまま、ゾロは海を見つめる。

「ねえ、ゾロ。答えてよ。じゃなきゃ俺、又落ち込むよ?」

「……………好き

「何?聞こえない」

「好きだっつってんだろ!2度も言わせるな!」

 ゾロは顔を真っ赤にしながら言った。

「良かった!俺だけなのかと思った!」

 ギュッ、と強く抱きしめる。

「バ〜カ」

 ゾロはそう言いながらもサンジの腕に自分の手を乗せた。

「へっへっ。なんかすっげー嬉しいな〜。両思いって」

 にやにやとにやける。 

 ゾロは恥ずかしいのか、そっぽを向いた。

「…いい加減離れろよ」

「嫌だ」

「んだと?」

「もう少しだけこうさせて…。後少しでいいからさ…」

 ゾロの肩に顔を埋める。

「ちっ、勝手にしろ」

 ゾロは怒った様な口調で言いながらも、表情は微笑んでいた。

「ああ、勝手にする」

 そう言うとサンジは暫くの間ずっとゾロに抱きついていた。

 両思いという気持ちを噛み締めながら。

 

 

 

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