それは突然の出来事だった。

「おい、こら!ルフィ!テメー、又盗み食いしたろぉ?!」

 サンジが包丁を持ちながら、ルフィを追いかける。

「うぅ〜ん!!」

 ルフィはブンブン、と首を振り「違う」と言う。

「じゃあ、そのお前の口の中に入っているモンは何だ?えぇ、ルフィ?」

 ぷっくりと膨らんでいる頬をサンジは指す。

 すると、モグモグ、ゴックン!と頬の中に入っていたものを飲み込む。

「ぷはぁ〜、上手かった。あっ、俺、盗み食いなんかしてねーぞ」

 ほらっ、と口の中を見せる。

 これは天然なのかそれともわかっていてやっているのか、サンジはには判断つかない。

 毎度毎度こんなこをとやっていて、いい加減うんざりする。

 ・・・一度絞めるか・・・。

 こめかみに怒りマークが浮かびあがる。

「ほぉ〜う。確かに入ってねーな・・・。じゃあ、お前の胃の中はどうだろうな!!」

 すっかり鬼の気分のサンジ。

 包丁を持ってルフィを追いかける。

「ぎゃーーーーーーーー!!!」

 ルフィは目玉を飛び出させる。

「鬼ジジィだぁーーーーーー!!」

 全力でルフィは船の中を駆けずり回った。

「何ぃ〜?!鬼ジジィ!どこどこ?!」

 チョッパーが興味津々で甲板に出ると、サンジはルフィを鬼のような形相で追いかけていたのを見た。

「ぎゃーーーーー、鬼ジジィだぁ〜!」

 チョッパーも目を飛び出させ、あたふたと慌てる。

 ルフィはチョッパーの方向へ逃げてきた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!来るなぁ!」

 チョッパーは一生懸命に逃げる。

 すると今起きたばかりのゾロが甲板に出て来た。

「一体、何の騒ぎだ・・・?」

 ぽりぽりと頭をかく。

 ゾロの姿を見つけたチョッパーはゾロの足にしがみ付いた。

「ゾロ、助けてくれ!サンジが鬼ジジィになった!」

 必死の形相でゾロに助けを求める。

「はぁ?どういうこった」

 訳がわからんといった表情をした。

 するとルフィの声が真正面からした。

「ゾロ!そこを退け!」

「はっ?」

 何だ?、と思って顔を前に向けたら、どんっ!とぶつかった。

「でっ!!」

「ぎゃっ!」

 どうやら遅かったらしい。

 ルフィに衝突されて、ゾロは後ろに倒れた。

 踏ん張ろうとしたが、足元にチョッパーがいたので踏ん張ることもできずに見事に倒れてしまった。

その上にルフィも倒れる。

「ってて・・・。ワリーゾロ、大丈夫か?」

 下敷きにしたゾロにルフィは声を掛ける。

「・・・この、バカが!一体何して―――」

 そう言った瞬間にその場の時が止まった。

 当事者も固まって、その場を動けない。

 サンジは包丁を持ったまま、チョッパーは口をかぱっ、と開口しながら固まる。

 そのわけは、結論から言うとルフィとゾロがキスをしてしまったのだ。

ゾロが上半身を起き上がらせ、悪態をつこうとしたら、運悪くルフィの顔にぶつかってしまったのだ。

 しかもぶつかった箇所は唇。

 ディープみたいな口付け。

 唇を重ねたまま二人は固まっている。

「な、な、なーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 時が止まっているのをいちはやくサンジが壊した。

「何してんだっ!テメーら!!!」

 ぐいっ、とルフィをゾロから引っぺがして、放り投げる。

「のわぁ!」

 ルフィは壁にぶつかった。

 いてててっ、と頭を抑えて2人を見る。

 サンジはそんなルフィにおかまいもなく、

「ゾロ、大丈夫か?!」

 包丁を近くの壁に突き刺し、ゾロの方を揺さぶる。

「だ、大丈夫だよっ!」

 がくがく、と強く揺さぶられたので多少視界は揺らいだものの、ゾロはサンジを押しのけて立ち上がった。

「大丈夫なわけねーだろ?俺以外の奴とキスしやがって!!」

 血相を抱えて、ゾロを見る。

「おいおい・・・。あれはキスなんかじゃねーだろうが。ありゃただの事故だ、事故。どう見たって不可抗力じゃねーかよ」

 キスと呼ぶには痛すぎる。

 思い切り口をぶつけたので、歯で唇が切れたらしい。

 少し血の味が口内に広がった。

「って、ちょっと待て!俺がいつお前とキスしたんだ?!」

 サンジの言動にゾロは遅くなりながらも気づく。

「うぅぅ、してねーけど、俺以外の奴とは駄目だ!」

「何でだよ」

「そんなのお前が好きだから決まってるじゃねーか!そんな事もわかんねーのか!」

 サンジは怒鳴りながら告白する。

「・・・・・・・・俺、そんなの初めて聞いたが」

「当たり前だろ?言ったことねーもんよ!」

 大威張りに言うサンジにゾロが切れた。

「だったら知るわけねーだろ?!それに俺はお前のモンじゃねーんだから、俺が誰とキスしても関係ねーじゃねーか!」

「何だとぉ?!じゃあ、やっぱりさっきのはお前にとってキスに入るんだな?!この嘘つき野郎!!罰として俺にもキスさせろ!」

「はぁ?何でそういうことになんだよ」

「どうでもいいだろう!俺がキスしたいんだから、キスさせろ!!」

「俺は嫌だ!」

「それは俺が嫌だ!」

「何だ、それ?」

「何でもいいからキスさせろ!」

 サンジは唇を尖がらせて、ゾロに迫った。

「ちょ、ちょっと待て!」

 ゾロはサンジの顔を近づけさせないように、がしっ!と掴んで阻んだ。

 サンジも引けないのか、顔を押し出す力が強い。

 しかしゾロもキスされてはかなわんと、押しのける腕に力が入る。

「ぐぅぅぅ!」

「っ!!」

 両者一歩も譲らない。

「・・おい、ルフィ、チョッパー!この素敵眉毛どうにかしろ!」

 二人の戦い(?)を傍観していたルフィとチョッパーにゾロは言う。

 その言葉を聞くとサンジは二人を睨む。

 邪魔するんじゃねー、という意味の視線を込めて。

「む、無理!!俺には無理だーーー!」

 びびるチョッパー。

 ずさずさっ、と後に去る。

「・・・何とかしてもいいけど、何とかしたら願い叶えてくれる?」

 ルフィはじーっと、しゃがみながら二人を見ていた。

「何言ってやがる!元はといえばお前が俺にぶつかってきたからこんなことになったんじゃねーか!!こいつを何とかすることがお前の仕事だろう!」

「ルフィ、邪魔すんじゃね―ぞ!」

 脅しの視線に屈しないルフィに、今度は念の恨みを込めて言葉を発する。

「じゃあ、やだ」

「やだじゃねー!」

 ゾロがルフィに気を取られた瞬間をサンジは見逃さなかった。

 ゾロの手を取り、壁に体を押し付けて拘束する。

「駄目だよ〜ん、ゾロちゃん。俺に隙を見せちゃ」

 にんまりとサンジは笑う。

 するとう〜ん、とサンジは唇を寄せてきた。

「わ、わかった!何でもするから早くこいつを何とかしろー!!!」

 ゾロがそう叫んだ瞬間、

「ラジャ!!」

 ルフィはサンジの腰に腕を回して、ゾロからはがした。

 そして、後ろにのけぞりジャーマンツープレックスをかました。

「ぬわっ!」

 サンジの頭はばきっ!と板を突き抜けた。

 と思ったら、サンジは両腕で床を押しのけそれをかわした。

「何しやがんだ、ルフィ!俺を殺すきか?!」

 ルフィから離れて、サンジは邪魔してくれたルフィを睨む。

「こんなことぐらいでお前は死なないだろう?それにゾロが何とかしてくれって言ったんだし」

 ぐるんぐるん、と腕を回す。

 まだ何かをやるらしい。

 サンジは顔を顰めて、

「上等じゃねーか。この喧嘩受けて立つぜ・・・」

 どんどん話がずれていく。

「一度お前と勝負してみたかったんだよな。俺」

「・・・お前の拳と俺の足技。どっちが上かはっきりさせようじゃねーか」

 二人が睨み合う。

 腰を落として戦闘態勢に入った時、

「このバカ者たちがぁーー!!!」

 どんっ!とルフィの頭上にナミの拳が炸裂する。

「いっでーーーーーーー!!!」

 涙を流しながら、しゃがみこんで痛みを堪える。

「サンジ君も!!」

 ナミはつかつかと歩いていくと、サンジの頭上にも拳を降らせた。

「でっ!!!」

 ぷっくりと小さなこぶができる。

「全くあんたたちときたら、少しは大人しくするってことができないの?!」

 こめかみをピクピクと痙攣させながら、ナミは怒る。

「「ご、ごめんなさい・・・」」

 二人はぺこり、とナミに謝る。

「サンジ君!食事の支度を早く急ぎなさい!ルフィ、アンタは盗み食いをしたから、罰としてこの船の掃除!」

 びしっ!と指を指した。

「は、はいっ!!」

 サンジは敬礼すると一目散に調理場に駆け込んだ。

「えぇぇ、そんなの面倒くせ〜」

「す・る・の・よ!」

 そしてバコンッ!という音とともに、先ほどできたこぶの上にもう一つこぶができた。

「☆#%&★■!?」

 言葉にならない声を発する。

 そしてナミは青ざめているゾロを見た。

 ゾロはびくっ!と体を振るわせる。

「・・・いい様ね、ゾロ」

「うるせー・・・」

「全く、ちょっとはサンジ君の気持ちを汲んで上げなさい?可哀相じゃない。アンナにアンタの事好きなのに」

「・・・んなモン知ったこっちゃねーよ。それにそんなの初聞きだ」

「結構あからさまにアンタにアピールしてたわよ?」

「・・・知らん」

「あっ、そう。まあ、いいわ。人の恋愛だし」

 肩をすくめて、ため息を吐く。

「まあ、これから頑張りなさいよ」

「何をだ」

「喧嘩腰とはいえ、サンジ君アンタに告白しちゃったんだから、今まで以上にもっとアピールしてくるわよ。・・・それに」

「?」

 ナミはくすっ、と笑うと、

「さっきのことで恋に自覚しちゃった奴もいるみたいだし?これから面白くなりそうね。一体どっちがアンタを落とすのかしら?」

「どう言う意味だ」

「そのうちわかるわよ。―――さっ、チョッパーいらっしゃい。一緒にお茶しましょう」

「う、うん!」

 意味深な言葉を残して、ナミはチョッパーを連れて甲板から去っていった。

「なんでーアイツ・・・」

 よくわからん、と呟きながらも今日は最悪な日だとゾロは思った。

 寝起きからこんなごたごたに巻き込まれちゃ身がもたん・・・。よし、今日は一日中寝ていよう。

 そう思うと、ゾロはもう一度寝るために寝室に戻っていった。

 

 

 


さあ、これから三人の恋はどうなるのでしょうか?!

果たしてルフィの願いとは?!

サンジのバカさ加減はどうなるのか?!

そして、ゾロは二人の恋を受け入れるのか?!

以後、お楽しみに!!(笑)←続くのかよ、おい!!

 

 

Back

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送