ふわぁ、とサンジは欠伸をした。

 ったく、最近やたらと眠いぜ・・・。

 手を口に当てる。

 しきりに欠伸が出て、顎が外れそうだ。

 サンジは眠気を覚まそうとして、甲板に出る。

 すると視界の端に緑頭が見えた。

 ・・・ゾロ。

 2階から下を見下ろすと、ゾロの姿が見えた。

 よくもまあ、寝る人だこと・・・。

 タバコに火を付けると、口にくわえた。

 ゆっくりと煙を吐き出す。

 今日は波が静かで、太陽がぽかぽかと地上を照らしている。

 暑くもなく寒くもなく。

 昼寝をするのにはいい陽気だ。

 いつもなら騒がしいルフィやウソップがいない。

 どうやら良い天気なので、皆昼寝をしているらしい。

 ・・・平和だね〜。

 柔らかい風がサンジの髪を軽く揺らす。

 煙が緩やかに消えていく。

 サンジは軽く溜息をつくと、ひょいっと2階から飛び降りた。

 ふわっと、舞うとすとん、と静かに着地した。

 口にくわえていたタバコを取り、下に灰を落とす。

 サンジはゾロの目の前に立つと、しゃがんだ。

 ・・・なんちゅー無防備なんだ。俺が敵だったらお前の命はねーぞ。

 いくら気配を消して、行動したとはいえ全然気付かないゾロにサンジは苦笑する。

 それに・・・・。

 サンジはゾロの顔を覗き込んだ。

 何て無防備な寝顔だ。こんな顔見た事ねー。

 いつも見る顔はぶすっ、とした表情か、怒った表情しか見た事がない。

 今目の前にいる本人とは全く違う人間の様だ。

 ・・・いつもこんな顔してればいいのにな・・・。

 自分に見せる怒気の表情よりも、ルフィに見せる笑顔を俺に見せて欲しい。

 付き合いが長いのかなんなのか知らないが、この2人はとても強い絆で繋がっているように思える。

 たまに入り込む隙がないことがあるのだ。

 2人の世界に浸っており、側にいる俺はなんだかとても居心地が悪い。

 それにルフィには笑顔で話し掛けるくせに、俺にはそんな笑顔ひとつも向けたことがねぇ。

 それが一番むかつく。

 少しでもゾロの笑顔が見たくて、ゾロの好きな料理を作る。

 少しでもゾロの笑っている姿が見たくて、良い雰囲気を作る。

 全てゾロのためにやっているのに、一度も俺に笑顔を向けたことはない。

 向けられた事のある笑顔といえば、不敵に笑う笑顔だけだ。

 そんなゾロも可愛いと思うが、どうせならやっぱりにこりと笑っているゾロが見たい。

 ・・・俺ってかなりやばいかな?

 普段じっくりと見られない無防備な顔を堪能する。

 ふと、サンジの心に悪戯心が湧いてきた。

 ・・・起きないよな?

 無防備な顔の一部にサンジの視線が集中する。

 ・・・どうか起きませんように。

 そう言うとサンジはゆっくりと、気付かれないように顔を近づけた。

 ちゅ。

 軽く唇を重ねた。

 そして素早く離れる。

 そんな無防備に寝てるお前が悪いんだからな・・・。

 サンジは自分の行為を正当化しようとして、自分に言い聞かせるように言った。

「さぁ〜て、俺も一眠りするかな?」

 そう言ってサンジは立ち上がる。

 そしてゾロを起こさない様に静かにその場から立ち去った。

 少しするとゾロの目がゆっくりと開いた。

 さっきまでいたサンジの気配と唇に残っているサンジの感触がゾロを目覚めさした。

 普通なら嵐がきても起きる事がないゾロ。

 しかし今日は違った。

 起きざるを得なかった。

 サンジの香水が周りに漂っている。

 その香を嗅ぐだけで、今は赤面しそうだ。

 少し赤くなっている自分にゾロは気付く。

「・・・クソコックのバカ」

 ゾロは気持ちを落ち着かせると、もう一度寝に入った。

 

 

 

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