この世に愛というものは存在するのだろうか?  

 俺はこの問いかけに何度も悩まされた。

 一体「愛」とはなんなのだろう。

 小さい子供を目の前にして心の奥底で湧いた暖かい小さな気持ち。

 知らず知らずのうちに何度でも自分から会いに行くこの行動力。

 ルフィの顔が見たくて、ルフィの声が聞きたくて、ルフィを抱えたくてしょうがない。

 これはどういう気持ちなのか俺にはわからない。

 多分ルフィを自分の本当の子供のように思っているからこんな感情が芽生えたのか。

 他の子供でもこういう感情が芽生えるのだろうか?

 俺はその疑問がいらだたしく思えた。

「なあ、ベン。もしルフィが敵対する船に乗っていたらお前どうする?」

 シャンクスは酒を飲みながら言った。

「ルフィがか?どうだろうなー。その時になってみないとわからないな」

「そうか」

「・・・どうしたんだ?」

 変な質問をしてくるシャンクスにベンは?マークを頭に浮かべる。

 シャンクスは少し間を置いてから、

「いや、もしルフィが敵対する船に乗っていたら俺はルフィを殺せないんだろうなと思ってさ」

「だろうな。お頭はルフィを愛しちゃってるからな。どうあってもルフィは殺せないだろうよ」

 その言葉を聞くとシャンクスは驚いた表情をした。

「俺がルフィを愛してる?」

「だってそうだろう?いつもベタベタと一緒にいるし。それにこんな小さい町にずっと在住することが珍しくねぇか?」

「ベタベタなんかしてねーぞ」

「してるさ。お頭が気づいてないだけだよ。あんなにデレデレとした顔俺は見たことねーぜ」

 軽くため息をつく。

「お頭は自分では気づいていないだけなんだよ。心のそこではルフィのこと愛してるんだよ」

 くすりとベンは笑った。

 俺がルフィを・・・?

「だって子供だぞ?それに男だ」

「年齢や性別は関係ないさ。問題はその人の魂なんだから。それに男でも今の時代関係ないだろ?ヤレることはヤレるんだから」

 そうだろう?といわんばかりに視線をシャンクスに投げつける。

「だからルフィは殺せない」

 そうハッキリと断言する。

 確かにルフィは殺せないだろう。今の自分にルフィは殺せない。

それは自分でもわかている。わかっているからこそ、それが何なのか悩む。

 ルフィと会っていると暖かい気持ちになれる。

 それは確かだ。

その気持ちが少なくても嫌なものではない。むしろ心地よいものだ。まるで少年に戻ったかのようにドキドキする。

二人でいるときは心地よいのに一人になるとその心地よさが愛しくなる。愛しくて愛しくてたまらない。

大人になろうとするほどそんな自分が滑稽に写る。

こんなに夢中にさせるお前は一体何者なんだ?

一体なぜお前に夢中になるんだ?

お前は何の魔法を俺にかけたんだ?

シャンクスは深いため息をついた。

 その時、トントン、とドアを叩く音がした。

「誰だ?」

 ベンが返事をする。

「副船長?俺だよ」

 扉越しに聞きなれた声が聞こえた。

「ルフィ?!」

 ベンは急いで扉を開け、

「どうしたんだ?こんな夜遅くに」

「うん。ちょっと・・・。なんだか眠れなくて・・・」

 ちらっと、ルフィはシャンクスを見た。

 その時ルフィと目があった。

 ボッ!!

 シャンクスの顔が真っ赤になる。

 えっ?えっ?えっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!なんだ?!なんだ?!

 自分の顔を抑える。

 顔が熱い!しかもなんだこの動悸は?!

 ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク。

血液がまるでかけっこをしているみたいに早くなる。

 そんな様子を見て、

「お頭大丈夫か?顔がやけに赤いぞ」

「シャンクス大丈夫?熱でもあるの?」

 二人とも心配そうにシャンクスを見た。

「だっ、大丈夫だ・・・」

 出す声が上ずる。

「ホントに大丈夫?」

 ルフィは座っているシャンクスに近寄って額をコツンッ、とする。

 ボッ!ボッ!

 更に赤くなる。

 それを見ていたベンは、

「はは〜ん。成る程ね」

 にやにやした顔で二人を見た。

「お頭、邪魔者は退散するよ。――ルフィ、又明日な」

「えっ?うん。でもシャンクス大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ほっときゃそのうち治るさ」

 そういうとベンはシャンクスに近づいて、

「お頭、やっとわかったんだろ?アンタの気持ち」

「・・・ああ、やっとね。何の魔法にかかったかわかったよ」

「魔法?――そうだな。いい魔法じゃねーか」

「だろ?わかったらさっさと行きやがれ」

「はいはい、わかりましたよ」

 言うとベンは部屋から出て行った。

「シャンクス、大丈夫なの?顔赤いよ」

「平気さ。何でもないよ」

「そっか、よかった」

 にこっと、笑った。

「でも魔法がどうのこうの言ってたけど何?」

「それは秘密さ。でもとても心地いい魔法だよ。小さな魔法使いさん」

 額にチュゥ、と唇をおとした。

「何?何?」

「何でもないよ」

 そう、何でもない。

 初めからわかっていたことだったんだ。

 ただ自分で気づいていないだけだった。

 子供相手に恋をしていることに気づいていたくなかっただけなんだ。

 それは大人のプライドとして許せなかった。

 だけど今はそんなことはどうでもいい。

 一度気づいてしまったらプライドとかなんて言っていられない。

 子供だと思っていてもそのうち嫌でも大人になる。

 そうなれば立派な恋愛対象だ。

 今はまだこの心地よい気持ちを大事にしよう。

 そしてこの地を旅立つまでにいっぱい二人の思い出を作ろう。

 思い出せないくらいにいっぱいに。

 今はいっぱい恋をしよう。

 二人でいっぱいに。

 

 

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