気持ちのいい風。穏やかな波。雲ひとつない青空。 それらを体で感じながらサンジはタバコに火をつける。 暇だー・・・。 ふうっと煙を吐くついでにため息もついた。 暇なので少し空を見上げ煙でわっかをつくる。 自分で見ても綺麗にわっかになっていると思う。なんせ子供のときからタバコを吸っているので、このぐらい簡単なことなのだ。 しばらく煙で遊んでいるとペタペタと足音が聞こえてきた。 ・・・これはルフィの足音だな。 サンジはそう思った。なんせこの船でペタペタと音をだす靴を履いている人物はルフィしかいない。 「よお、船長。元気か?」 サンジは何気なく挨拶した。これといって話すこともなかったのでありきたりの言葉を発する。その言葉もルフィを見ずに言った。暇つぶしでやっていたわっか作りにはまっていたのだ。 見るなりルフィは歓喜の表情を見せた。 「すっげー!すげーすげー!それどうやんだよ、サンジ」 ルフィがどたどたとサンジに駆け寄ってくる。 「ああ?何を?」 サンジは何を教えれいいのかわからなかったので遊びを中断し、ルフィに顔を向ける。 「今、やってただろう?煙でぷかぷかするの?」 「ぷかぷか・・・?ああ、もしかしてこれのことか?」 サンジは中断していた遊びをやり始めた。 「そう、それ!それだよ。どうやんだよ。すっげー、かっこいい!」 ルフィは目を輝かせながら言う。 「子供が吸うもんじゃねーよ。お前まだ17歳だろ?未成年だから駄目だ。」 サンジは自分のことを棚に上げる。遊びすぎたのかタバコが短くなってきたので、新しいしいタバコに火をつける。しかしルフィはそのタバコを手で握りつぶした。 「なっ、何すんだよ!」 「お前もまだ未成年だろ?」 ルフィはサンジの言葉を打ち消すように言う。 「俺はいいんだよ。もう定着しちまってるんだから」 「じゃあ、俺も定着させる」 「バカなこと言ってんじゃない。それよりお前手見せてみろ。」 サンジがタバコを掴んだ手を心配する。 「大丈夫だ。死にやしねー。」 「ったりめーだ。そんなんで死んじまうたまかよ、お前は」 そんなことで死んでたら今までこいつは何百回死んでんだろうな? サンジは今まで戦った相手がふっ、と横切った。 「おい、そこでいちゃつくのはかまわねーが飯にしてくれねーか?」 ゾロがかったるそうに入り口のところに寄りかかっている。日差しの加減でゾロの顔が見えない。 「そうだ!俺腹減ったからお前を呼びにきたんだ。それで忘れてたよ。」 ルフィはぷかぷかと浮いている煙に目をやる。 「そうか。そういやもう昼時か」 サンジが吸っていたタバコを捨てる。 「さて、何が食いたい?」 「肉!」 ルフィは速攻で答える。 「お前肉ばっかり・・・。たまには野菜も食え。ゾロは?」 表情の見えないゾロに振る。 「なんでもいい。ルフィの食いたいもんでいい」 「そうしたら毎日が肉肉肉だ。コックとしてはそれは嫌だね。俺的にも嫌だ」 「なら俺に聞くな」 ゾロは淡々と答える。 声に少し怒りがこもっていたのがサンジには分かった。 その原因もサンジには分かっている。 ったく、大人気ねーな。嫉妬丸出し。 サンジは少しため息をつく。 「わーったよ。適当に何か見繕ってやるよ」 そう言うと腕まくりした。 「サンジ、俺肉な、肉」 「あいよ、肉ね。考えとくよ」 そういいながらサンジは厨房へ向かうためにゾロとすれ違う。 「嫉妬心出しすぎ」 「るっせー。お前に言われたくねー」 お互い顔を見ずにすれ違いざま言った。 ゾロはサンジが消えていったのを確認し、ルフィに近づいた。 「ルフィ、お前あいつのこと好きか?」 ゾロはルフィの隣に立ち海を見る。 「ん?サンジのことか?」 「ああ」 他に誰がいるっつーんだよ。 ゾロは悪態をつきながらルフィに顔を向ける。 「サンジのことは好きだぞ。料理うめーし」 ルフィはゾロの苛立ちを分かっていないのかあっけらかんと言う。 「そういうことじゃなくてだなー。・・・ああーもういいや。何でもない。今言ったことは忘れろ」 これ以上言っても埒があかないとゾロは直感した。 ルフィにはまだ恋愛なんて早えーか。 「そういうことじゃなくてどういうことなんだよ」 ルフィがゾロに突っ込む。ルフィを見るとかなり困惑してる表情をしていた。 「だから忘れろって。いずれちゃんと話すよ」 ゾロは嫉妬心から解き放たれたのか、ルフィに笑顔を見せる。 「だったら今聞きたい」 ルフィの真剣な瞳がゾロを突き刺す。 「ルフィ・・・」 その真剣な顔にゾロはドキッとした。 ルフィはいつも笑っているので真剣な表情は戦い以外に滅多にしない。 「今聞くと後悔することになるかも知れないぞ」 ゾロはその瞳を真剣に受け止める。相手が真剣ならばこっちも真剣でなくてはならない。しかし、この真剣さをルフィが受け止めてくれるかそれはわからない。これを言うのはかなりの勇気がいる。 「後悔?後悔なんかしねーぞ」 その言葉はゾロの不安を砕く。 「ルフィ・・・」 「ん?なんだ?」 あどけない瞳がゾロを見つめる。その瞳にドキドキする。 「俺はお前のことが・・・」 「ほい、サンジ様特製スペシャルドリンクだぜ」 サンジがゾロとルフィの目の前にスペシャルドリンクを持ってきた。 「おお!うまそうだなー、これ」 言いながらルフィはドリンクを手に取る。 「・・・おい」 小声でゾロは言う。しかしその声には二人とも気づかない。 いや、サンジは気づかないフリをした。 「うめ〜!これうめーよ、サンジ。さすが俺の見込んだコックだな」 そう言いながらルフィはドリンクを飲み干す。 サンジはその飲みっぷりを見てにかっと笑う。 「だろ?クソうめーだろ」 自慢気に言う。 「おい」 暗い声が二人を包む。 「ん?どうしたゾロ」 ルフィは空になったコップで遊びながら言う。 「どうしたもこうしたもねーよ」 ゾロは顔が引きっている。 「あんだ?なんか文句あんのか?」 サンジが対抗してゾロにガンを飛ばす。手に持っていたお盆をルフィに預ける。 「ああ、大有りだね。てめーにゃー山ほどあるぜ」 負けじとゾロも凄む。 「ほう?俺も今そう思っていたところだ。気が合うねー俺達」 タバコをふかし、煙をふうーっとゾロに吹きかける。 「ぶっ殺すっ!!」 「上等だ!魚の餌にしてやる!!」 互いに距離を取り、戦闘態勢を整える。 「なあ、お前たち何やってんだ?」 ルフィはもうひとつのスペシャルドリンクに手を伸ばす。それをずずずーっと飲み干す。 「ああ?見りゃわかんだろうが!」 ゾロはサンジをガンつけたままルフィに言う。 「船長は黙って見てな」 サンジはルフィにウインクをする。 「俺と対峙してるっていうのに随分と余裕だな」 「ったりめーだろう?てめー相手に本気で相手すっかよ」 先にも増して殺気が鋼板を漂わせる。 「そういうわけにもいかねーよ。だって俺そんなの耐えらんねーもん」 ルフィが二人の喧嘩を止める。表情が暗い。今にも泣き出しそうだ。 「「ルフィ・・・」」 二人の声が揃う。いたたまれなくなり目を一瞬合わせてから戦闘態勢を解除する。 「悪りー。お前を泣かすつもりがなかったんだが・・・」 ゾロは申し訳ないと言わんばかりにルフィに誤る。 「なあ、ルフィ。泣くなよ。俺達が悪かったから、なっ?」 サンジがルフィの肩を触る。 「ホントか?よかったー。俺腹減って死にそうだったからさー。よかったよかった」 ぎゅるるるるー。とルフィのお腹の音が聞こえる。 「えっ?腹」 「ルフィ、マジかよ・・・」 サンジとゾロは鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔になる。 「なあ、サンジ。早く作ってくれよ。俺腹減って死にそうだよー」 ルフィが涙目になる。 「なんだ。つまりお前は俺達が喧嘩してて止めたんではなく、おめーが腹空いたから喧嘩を止めたんだな?」 「そうだよ。他に何かあるんだ?ゾロ」 ルフィは顔に?を浮かべる。 「いや、何でもない」 ゾロは深くため息をつく。 「そうそう。何でもないよ、ルフィ」 サンジはルフィの思考回路に笑みを浮かべる。お子様はしょうがないな、とでも言わんばかりに。 「それより、ルフィ。腹減ったんだろ?何かつまさしてやるよ」 「やったー!早く行こうぜ。サンジ」 ルフィは持っていたお盆をサンジの手に戻す。 「先厨房へ行ってろ。後から行く。そのかわり勝手につまむんじゃねーぞ。勝手につまむと食料なくなっちまうからな」 「おう。わかった。勝手にはつままねー」 たたたたー、とルフィは厨房へ向かい、入り口に差し掛かったところで振り返った。 「おい、サンジ。早く来いよ」 「わかってるよ」 にこやかな顔でルフィを送る。ルフィが完全に中へ入ったことを確認し、再び対立する。 「で?てめーはなんでここに残ったんだ?」 ゾロがピクピクとこめかみを痙攣さる。 「ああ?お前に一言いっておこうと思ってな」 「何を?」 「あいつは俺が貰う」 サンジは短くなったタバコを消す。その言葉に痙攣の回数が増える。 「はっ、何だって?もういっぺん言ってみな」 「聞こえなかったのか?何度でも言ってやるよ。あいつは、ルフィは俺が貰う」 きっ、とゾロを睨みつける。しかしそれで引くゾロではない。 「けっ、お前にはやんねーよ。あいつは俺のものだ」 「いつからお前のものになったんだ?」 「いずれは俺のものさ」 「ふん、それはどうかな?」 又新しいタバコに火をつける。 「あいつは俺のものだ。手だしはさせない」 「勝手に決めなんな。いいだろう。じゃあ、勝負しようぜ」 ふう、と空に向かって煙を吐く。 「勝負?どんな勝負だ」 「どっちが先にルフィを落とせるか」 「けっ、くだらねー。まっ、いいだろう。でも負けないぜ」 ゾロは挑戦的な目を向ける。 「こっちもだ。まあ、今は俺が一歩先を行ってるがな」 サンジは言いながら厨房へ向かい、にや、と笑う。 「もう、勝負は始まってるんだよな?」 意味深な台詞をはき、中へ入っていく。 『もう、勝負は始まってるんだよな?』 その言葉がゾロの頭の中に残る。それはいかにも今から勝負に入ると言っているように聞こえた。 ゾロはふとあることに気づく。 しまったー!ルフィを持っていかれたーーーー!! 「あのくそコック!手ぇー出したらぶった切る!」 一目散に厨房へ駆け出した。 すると入り口から手がぬうーっと伸びてきた。 「のわっ!」 ゾロはいきなり伸びてきた手に肩を掴まれ、ぐぐぐっと前へ引っ張られた。 しかしゾロは引っ張られる力に対抗しその場に踏みとどまる。 「どういうつもりだ!ルフィ!」 こんなことが出来るのはこの船ではたった一人しかいない。しかもこんなにバカ力。 引っ張るのを止めたのか、力がすっと緩まる。と思いきや今度は伸びた手を戻すかのようにルフィの体ごとゾロに向かってきた。 「ゾロ!」 そう言いながらゾロに抱きつく。 「ルフィ・・・?」 ゾロはルフィに抱きつかれて少し唖然とする。いつもどおりの自分を演じようと胸に顔をうずめているルフィに話し掛けた。 「どうした?ルフィ。あのくそコックに何かされたのか?」 一つ一つの言葉が重く感じる。なんせ好きな相手が自分の胸の中にいるのだ。緊張しないほうが難しい。 声を出しているのに心臓の音でうるさいので、ちゃんと聞こえているか疑問になり、ついつい大きな声で言ってしまう。 ルフィはプルプルと首を振った。だが顔は上げない。 ゾロは不信に思い無理やりにでもルフィの顔を自分に向けさせようとする。だが抵抗されて向けさせられない。なおさら不信に思う。 「ルフィ?下を向いていちゃ分かんないだろ?どうしたんだ?お前らしくもない」 何とか顔を見ようとするが、ぴったりとくっついているので全然見えない。 「俺らしいってどんなのだ?」 ルフィが言葉を発する。 「そういわれると困るな。お前はなんせめちゃくちゃだからな。ホントにどうしたんだよ。ルフィ。あいつに何かされたのなら俺がぶった切ってやるぜ」 ゾロが優しくいう。そうするとルフィは又首を振る。 「じゃあ、何だよ。いつまでもこうしてるわけにはいかないだろが」 内心嬉しくてしょうがないが、いつまでも好きな相手に抱きつかれていて理性を保っている自信がないのだ。このまま抱きしめたいが、抱きしめたら最後ルフィを自分のものにしてしまいそうで怖い。ゾロの両腕はルフィに触れないまま自分の両足にくっつけている。 「俺、変なのも飲んじゃったらしくて。それを飲むと大変なことになるって」 「何を飲んだんだ?」 「わかんねー」 「ああ?わかんねーだと。ざけてんじゃねーぜ。それに大変なことって誰に言われたんだよ」 心臓の鼓動がルフィに聞かれないように空を見て少し気持ちを落ち着かせる。 「ウソップ」 「なんだ、ウソップか。だったら嘘なんじゃねーか?」 「わかんない。でもそれを飲んでから体が変なんだ」 ぎゅうっとゾロに抱きつく力が加わる。 「体が熱くてしょうがないんだ」 言われてみればルフィの体は少し熱を帯びているような気がする。 「毒だったのか?」 「ううん。違う」 「毒じゃないんなら寝てれば直るんじゃねーか?」 「だといいけどよー。でもウソップが誰も見るなって」 「誰も見るな?何だそれ」 ゾロは首をかしげる。 「さあ、わかんねー。だから俺まだそれ飲んでからまだ誰も見てない。飲んだ瞬間に視界を奪われたから」 「なんだそりゃ」 「だから今こうして誰も見ないようにしてる」 ルフィの吐く息が胸に掛かってゾロをなおさら興奮させる。 「俺は目くらましかよ」 ごまかすように荒く言う。 「そうじゃねーけどよー。ウソップが見るなら自分が好きな奴にしろって言うからさ・・・。だから俺、ゾロのところにきた」 ルフィの口から意外な言葉を聞いて一瞬思考が止まる。 「えっ?ルフィ今なんて・・・?」 「あ?だから見るのは好きな奴を見ろって」 その言葉にゾロはドキッとした。 「ル、ルフィ。好きって」 そうゾロが言いかけたときまたしても邪魔が入った。 「ルフィ、こんなところにいたか。厨房に行ってもいないから探しちまったぜ」 ゾロを睨みながらサンジは言う。 「ったく、てめーはいつもいつも邪魔しやがるな」 苛立ちを見せながらサンジをけん制する。 「ゾロ。お前いいもん抱えてるな」 「ふん、やんねーよ」 ぎゅっとルフィを抱きしめる。こいつは俺のものだ。誰にもやらないと言わんばかりだ。バチバチと二人の間に火花が散る。 「おお、こんなところにいたか。・・・何やってんだ、お前ら?」 ウソップが異様な雰囲気を読む。 「まあ、いいや。それよりゾロ。そのままルフィを抱えててくれ。いいか?顔を誰にも見せるなよ」 ウソップがゾロとルフィに近づく。がウソップの肩に手をおき、引き止める。 「おい、ウソップ。お前何か知ってるな?どういうことだ」 サンジが鋭い目でウソップを睨む。自分では睨んでいるつもりはないが、好きな人が目の前で違う男と抱き合っているのを見てると自然に目つきが悪くなる。ウソップはその視線にびくつきながらも訳を説明した。 「簡単に言えば俺が発明したほれ薬をルフィが飲んじまったんだよ」 「あんだと〜?!」 「何っ!!」 ゾロとサンジの声が一緒になる。その剣幕にウソップは少し体を引く。 「お、俺のせーじゃねーよ。勝手に飲んだルフィが悪りぃんだよ」 「そんなの作るお前が悪い!」 サンジはウソップをグーで殴る。 「いってー!!何だよ。あっ、そんなことより早くルフィを何とかしないと」 殴られた頭を抱えながらルフィに近づく。 「ルフィ、これ。解毒剤だ。早く飲め!ただし、目を瞑ってろよ」 ウソップはゾロからルフィを離そうとする。がサンジはそれを止めた。 「おい、ウソップ。ほれ薬っていうのは本当なんだろうな?」 サンジはウソップを睨みつけるように言う。 「おう、多分な。まだ試した事はねーが俺様が作ったんだから本当だ」 ウソップは自信満々に言う。その言葉を聞くとサンジの顔に笑みが戻る。 よし!今ここでルフィに俺の顔を拝めさせばルフィは俺の物だ。 邪な思考がサンジを襲う。 「くそコック。てめー何考えてやがる。まさか変なこと考えてねーだろうな?」 「何だ?その変なことって?」 「今の状態を使ってこいつをお前に惚れさすとかな」 魂胆見え見えなんだよ、と目が語っている。 「ふん、そんなの当たりまえじゃねーか」 サンジは鼻で笑う。 「さあ、ルフィを渡してもらおうか」 「お断りだ。誰が渡すもんか」 「…だと思ったぜ。力づくでもいただく」 「できるもんならやってみろよ」 二人の闘争心が頂点に達しようとしている。 なんだんだー!この二人はっ!!前から変だと思ったんだ。このルフィに対する態度が異様に優しすぎるから。この話からいくとどうやらルフィをどっちに惚れさすかっていうことだよな。しかもそのことでめちゃくちゃ真剣になってる。殺気がはんぱじゃねー。俺ってもしかしてとんでもないもの作っちまったのかー?! ウソップは顔を真っ青にしながら冷や汗をだらだら流す。 「な、なあ?お二人とも、ここは仲良くしてさー早いとこルフィに解毒剤飲まそうぜ」 自分のせいで死人だでは出したくないと思ったのか、何とか二人の仲を取り持とうとする。 「黙ってろ、ウソップ」 サンジがウソップを睨む。 「黙ってられるか!大体そうしたらルフィの気持ちはどうなんだよ!ルフィ、お前はどうなんだ?」 こうなったら当事者であるルフィに何とか説得してもらうほかはないと思ったのか、話をルフィに振る。 「・・・・・何言ってるか俺にはよくわかんねーけど、俺は薬でどうこうされるのはやだ」 はっきりと拒絶の言葉を言う。 「だそうだ。わかっただろ?サンジ。だから早く解毒剤飲ましてやろうよ」 「・・・・・」 サンジはショックを受けたのかルフィをずっと見ている。 「だよなー。こいつは薬でどうこうできる相手じゃねーよ」 ぼそっとゾロは言う。 「あきらめるんだな。ウソップ、悪いけどこっちに来てくれないか?見ての通り動けそうもないんだ」 「ああ、わかってる」 とことこと二人に歩み寄る。 「ルフィ、目を瞑ったままこっちを向いてくれ」 「ん?わかった」 ルフィが顔をウソップに向ける。小瓶の蓋をはずし中に入っている解毒剤をルフィに飲ます。 「うげー!苦い!」 ルフィの顔があまりの苦さに変化する。 「我慢しろ。おめーが惚れ薬なんてもん飲まなきゃ、それも飲まずにすんだんだろうが」 ゾロはぽすっと軽くルフィの頭をこずく。 「だってよーすっげーうまそうに見えたんだもん。飲みたくなるだろう?」 「お前はうまそうだったら何でも口の中に入れるのか?」 「おう!ゾロは違うのか?」 「まあ、時と場所によって違うがな。お前はこれが敵の罠だったら一番に死んでるな」 あきれたように言う。 「ルフィ、もう目を開けても大丈夫だぞ」 「お?ホントか?」 ぱちっとルフィの瞳が現れる。ゾロとウソップはごくっと喉を鳴らす。 「おおー!何か久しぶりに外を見たような気がするぜ」 はしゃぐ子供のように辺りを見回す。 「ルフィ、大丈夫か。普通か?」 「ったりめーだろ。俺様が作った薬に失敗はねー」 ウソップは腕を組みながら答える。 「お前に聞いてんじゃねーよ。ルフィ、ホントに大丈夫か?」 心配そうにゾロは言う。 「ああ、平気だ。なんともないぞ。それより腹すいた」 ぐーーっとルフィのお腹の虫が鳴る。 「みたいだな」 人騒がせなやつだ。ホントほっとけねーよ。このキャプテンは。 安堵のため息をつきながらゾロはそう思った。 「なあ、サンジは?サンジいねーぞ」 三人とも辺りを見回すが見た限りではサンジの姿はなかった。 「ホントだ。どこいったんだろうな。あいつ自分がやろうとした事に反省でもしてんじゃねーか?まっ、何事もなくてよかった」 じゃあな、と言いながらウソップはその場から立ち去ろうとした。 「ほおー。こんなことになったのは誰のせいかな?」 ぽきっ、ぽきっと指を鳴らす音がする。 「・・・さ、さあー。誰だろうな?」 顔面蒼白になりながら後ずさりする。声が少し上ずっている。 「おめーだ!ウソップ。もしルフィがあのくそコックに惚れちまったらどうするんだ?!」 「・・・大丈夫だよ。もし仮にルフィがサンジのことを好きになったりしても、ホントに心から好きな奴は一人しかいねーはずだよ。薬で人を好きになってもどこかで拒否反応がでると思うぜ。だから最後は一番好きな奴に戻ると思うよ。まっ、相手もそいつのことがホントに好きだったらの話だがな」 ウソップは意気ようようと話す。 「何を根拠に言ってやがる。このバカ!」 ゴンとウソップの頭を殴る。 「いってーーーーーー!サンジと同じところ殴るなよ!」 もうしらねー、ばっきゃろー!と言いながらウソップは立ち去っていった。 「おい、まだ話はすんじゃいねーぞ!ったく、逃げ足だけは天才的だぜ」 ちっ、と舌打ちをする。 「おい、ルフィ。二度と拾い食いなんかすんなよ。今のように何か薬が入ってるかもしれないんだからな」 そう言いながらルフィの隣に座り込む。 「うん、わりー」 声のトーンが低い。反省している事がわかる。 「わかればいいんだ。わかれば」 こんなに素直に反省の意を見せるとは思わなかった。なんか逆に俺が悪い事したように思えるじゃねーか。いつものように少しぐらい反抗すると思ったのにな。まあ、実際、俺も少しはあいつと同じアブねー事考えたし、あいつをあまり責める事できねーな。 気まずい雰囲気が流れる。こんなときに他に何を言えばいいかゾロにはわからなかった。 怒る事は簡単。でも慰める事は難しい。 「ルフィ、お前腹減ってるんだろ?飯でも食ってこいよ」 気まずい雰囲気を壊そうとしてゾロはルフィを遠ざけようとした。無口なのは慣れているが、こういうときの無口ほど嫌なものはない。 しかしルフィからの返事はない。 「ルフィ?」 ゾロは隣りに立っているルフィを見上げる。見ると泣きそうな顔をしていた。 「なっ、どうしたんだ?ルフィ」 俺何か変なこと言ったかー?! 一気にゾロの表情が変わる。 「・・・・ロが」 「えっ?」 「ゾロがどっか行けっていうから!」 ぽろぽろと涙を流す。 ゾロは泣き叫ぶルフィに驚く。しかもそんな言葉言っていないのに、そういったことになっている事にも驚いた。 「ちょ、ちょっと待て!俺はそんな事言ってないぞ!しかも何で泣いているんだ!」 思いもしなかった行動にただゾロは狼狽するだけだった。その言葉を聞いてルフィはきっとゾロを睨む。 「言った!腹空いてるなら向こう行けって!」 「確かに言ったけど向こう行けとは言ってねーぞ!」 なんでそんな風にとるんだ!俺の言い方がまずかったのか?!第一なんで俺の態度見ていてそうな風に思うんだーーーー! こんなことになるなら無言のままでいればよかった、と今更ながら後悔する。 「だってゾロ俺のこと嫌いなんだろ?」 思いもかけない言葉に心臓が止まりそうになる。体が硬直する。 「俺はゾロの側にいたいのにゾロは向こうへ行けっていうし」 側にいたいという言葉がゾロを動かした。 「ルフィ、それは誤解だ」 「誤解なもんか!」 「誤解だ!俺はルフィが好きなんだ!嫌いなわけねーだろうが!!」 バカかおめーは!という顔をする。 「う・・・そ。嘘だ!」 「嘘なんかじゃねーよ。このバカキャプテン!」 ルフィを座っている自分のところに引き寄せる。 「わっ、何する」 バランスを崩しゾロの腕の中に抱えられる。 「って、・・・ゾロ?」 「これでも信じられないかよ」 ゾロはルフィの顔を引き寄せ唇を重ねる。 「!!」 ルフィは信じられないといった顔をするが次第に目を閉じていく。 重ねるだけの軽いキス。 しかしそのキスでルフィの高まっていた感情が落ち着いていく。触れているところが熱をもって熱い。 ゾロはゆっくりと顔を離す。ルフィを見るとまだ目は閉じたままだった。頬には微かに涙の後があり、それを拭う。 「これでも信じられないか?」 もう一度同じ言葉を言う。落ち着いている今ならわかってもらえるはず。 自分の気持ちを。 「・・・ゾロ。わかんない」 「何だと?!」 「だからもう1回して。今の」 ルフィは恥ずかしそうに言う。 わかんないというのは嘘だということはゾロにはわかった。 「ったく。しょうがねーな」 今度は軽いキスではなく濃厚なキスをする。目がくらむようなキス。 「これでわかっただろ?キャプテン?」 ゾロは額に口づけながら言う。 「おう、わかった」 にか、っとルフィは笑う。そこにはいつもの笑顔が戻っていた。 「だからもう1回しようぜ」 又キスの催促をする。 ・・・こういうのって惚れたもんの負けっていうけどそうなのかね。こいつの顔を見てると何でも言う事聞きたくなっちまうぜ。まっ、こういうのなら何度でもOKだけどな。 ゾロは心が満たされていく気がした。 もうこいつは絶対に離さない。どんなことがあろうとも。今確実に手に入れた。一切迷いはない。こいつは俺のもんだ。 そうゾロは確信した。 サンジお前には絶対に渡さない。多分これからもあいつはちょっかいだしてくるだろう。だがルフィの気持ちをはっきり聞いた以上はそうはさせないぜ。 今はまだ手を出してはこないとは思うが、用心に越しておく事はないからな。 「おい、ゾロ?」 返事をくれないのでやっぱり嘘だったのか?という表情でゾロを見る。 「ああ。わりー。しようぜ、いっぱい。色々とな」 ついばむような軽いキスをして又大人のキスをする。 渡さねー。 そう思いながらゾロは今この手に抱いているものを大事そうに抱きしめた。 |
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