ぴくっ、ぴくっ。 体を動かそうとしても動かない。動くのは微かに動く指先だけ。 どうするよ・・・。これは一般にいう金縛りという奴か? サンジはハンモックから起き上がれずにいた。 まあ、いいか。別にやることはねーし。昼食も食ったし、夕食の下ごしらえも既に終わってる。 これといって焦ることはないか。 楽観的な考えでそのままの姿勢で寝付こうとしたその時、誰かが入ってくる音がした。 扉が開いて誰かが入ってきた。 「あれ?サンジ寝てんのか?」 この声はルフィだな。どうせ飯いっぱい食ったから昼寝でもしにきたんだろう。ほっとくか。 サンジは寝た振りを決め込む。 ひょい、とルフィはサンジの顔を覗き込んだ。 すると指先でぷにぷにとサンジの頬を突っつく。 なっ、何すんんじゃ、コイツ!! 「おお?!思ったより柔らけーぞ」 ルフィは楽しそうにぷにぷにと突っついた。何度か突っついていると、後ろからもう1人入ってきた。 「何してんだ?ルフィ」 この声はゾロか。早くコイツを止めやがれ! 「サンジのほっぺたを突っついてる。結構柔らかいんだぞ。知ってたか?」 「うんなもん、知る訳ねーだろ」 「そうか。じゃあ、俺が第一発見者だな」 おい、俺は被害者か?これは殺人事件か?! サンジは心の中で突っ込む。 「そうかもな」 ゾロはあきれた声で言った。 っておい!オメーも同意するんじゃねーよ。ちくしょう、この体がまともに動いてくれりゃーな。 もう一度起こしてみようとするがぴくぅ、とするだけで動かなかった。 駄目か・・・。 軽くため息をついた。 「うに〜んvv」 ルフィはそう言うとサンジの両頬を引っ張り始めた。 痛てーーーーー!!何しやがんだ、このクソゴム!!!いい加減にしないと足蹴りすんぞ!! サンジは心の中で罵声した。 「おいおい、そこら辺でやめておけよ。そろそろそいつ起きるぜ?」 いいぞ!ゾロ!その調子だ。今日はお前がいい奴に思えるぜ。 サンジは応援した。 「そうだな。ここで止めておこう。起きて蹴られたらやだしな」 ルフィはぱっ、と手を離した。 そうそう。その通り。でも俺は本当は起きてるんだぜ、ルフィ。後で覚えてろよ。 サンジはこの落とし前のつけ方を考えた。 やっぱこいつにとって一番効果的なのは飯だろうな。夕食覚えておけ! ふっふっふっ、と心の中で笑った。 「・・・でももうちょっと触っていたかったな」 ぼそっ、とルフィが呟いた。その声はゾロには聞こえない程度の声だった。 間近にいたサンジはその声を聞き取れた。 ・・・どういう意味だ? サンジは思いもかけない言葉に唖然とした。 「そいつも食事の支度が終わってつかの間の休みなんだ。ゆっくりさせてやれ」 「うん。わかってるよ」 「ならいいがな」 そう言うとゾロは部屋を出ていた。 「ちぇ、何だよ。ただサンジに触りたいだけだったのに」 ルフィはぷっくりと頬を膨らませた。 「しょうがないな。俺も出て行こう。・・・あっ、でもその前に」 ルフィはもう一度サンジの顔覗き込んだ。 ん?急に暗くなったぞ。 そう思った瞬間に、唇が何かに押し当てられた。 ・・・これってもしかして、キス?! 軽く触れるだけのフレンチキス。 数秒間押し当てて離した。 「よしっ!」 ルフィは満足気に頷くと部屋を出て行った。 サンジは無意識のうちに起き上がった。 「おっ、動ける・・・」 腕を上げたり手をにぎにぎしたりした。どこにも異常はないようだ。 「それにしても今のは何だったんだ・・・」 出て行った扉を見つめた。 寝ている時に勝手にキスされたのはむかつくが、嫌な感じはしなかった。逆にドキドキする。 「・・・はぁ〜、一体俺は何考えてるんだ?男相手に・・・」 この不思議な気持ちがわからないまま、サンジは夕食の準備をしに食堂に向かった。 |
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