「ルフィ、何か食いたいモンあるか?」

 サンジが船の先頭の指定席に座っているルフィに話し掛けた。

 悪魔の実の能力者の癖に、よくこんな所に座ってられるよな。もし、落ちたらどうするんだよ。

 サンジは危なっかしい所に座っているルフィを尻目に睨む。

 きっとコイツは先の事なんて考えてないんだろうな。

 能天気なルフィの思考回路に軽くため息をつく。

「肉!肉ったら肉!!」

 ルフィは意気揚揚と叫んだ。

 ・・・聞いた俺が馬鹿だったな。

 ルフィが何て応えるか分かりきっていたが、一応今回の主役に話を振ってみた。

 今日はルフィの誕生日。

 夜誕生日パーティーをしようと皆で決めていたのだ。

 その主役が食べたい料理を作ろうとサンジは思った。

 聞いたところで返ってくる返事はわかっていたが、いざ聞いてみると聞いた自分が馬鹿みたいに思える。

「そうか・・・」

 やっぱりな。じゃあ、前から決めておいた献立でいいな。

 そう思うとサンジはくるりと向きを変えた。

「サンジ!」

 ルフィの元気な声がサンジを呼び止める。

「・・・なんだ?」

「何で今日は聞いてきたんだ?」

 いつもなら即効で却下されるはずの要求。

 しかし今日に限っては拒みもしないで、すんなりと受入れてくれる。

 ・・・コイツ自分が今日誕生日って事忘れてんのか?

 首を可愛く傾げているルフィを見る。

「・・・今日はお前の誕生日だろう?だから主役のお前が食べたい物を作ろうとして聞いたんだ。まあ、はなっからお前が食べたいモンなんてわかっていたけどな。一応念のため」

 そう言うとルフィはぽんっ!と手を叩いた。

「そっか、俺今日誕生日だった。忘れてた」

 てへっ、と笑う。

 その仕草がとても可愛い。

 くらっ、ときそうな勢いだ。

 サンジは何とか冷静に保とうとして、ルフィから視線を外す。

「だと思ったぜ。今日はお前の好きなモンを作ってやるよ」

「ありがとう!」

 素直にルフィは喜んだ。

「まあ、こんな船の上だ。プレゼントなんて言うモンは渡せないからな。食事だけでも豪華にしてやるぜ」

 そう言うとサンジは去ろうとする。

「サンジ!」

 又ルフィの声がサンジを呼び止める。

「・・・何だよ。俺は忙しいんだ」

 そう言って振り向くと、目の前にルフィの顔があった。

 えっ・・・。

 そう思った瞬間にサンジの唇はルフィの唇に塞がれていた。

 あまりの突然の行動にサンジは呆然とする。

 ・・・今、ルフィとキス、したのか・・・?

 一瞬のことだったので、サンジは理解に苦しんだ。

 しかし、唇に微かに残っているルフィの唇の感触がそれを現実だと言わせていた。

「ル、ル・・・」

 理解できるとサンジは顔を赤くした。

 ルフィと呼ぶ声がどもる。

 ルフィはくすっ、と笑うと特等席に戻った。

「これが俺へのプレゼント」

「へっ?」

「だから、これがサンジから俺へのプレゼントなんだってば」

 こっちを振り向かずにルフィは言った。

 ・・・してやられたぜ。俺としたことが・・・。

 ポリポリと頭をかく。

 これじゃあ、どっちがプレゼントかわかったもんじゃねーや。

「ルフィ」

 サンジはルフィに近づくと、ルフィの顔を自分に向けさせた。

 今度は自分の方からプレゼントを渡すために、口付ける。

 唇を離すと、ルフィの真っ赤になっている顔が目に入った。

「誕生日おめでとう。ルフィ」

 にっこり、と微笑んで誕生日を祝う。

「お、おう・・・」

 声が上ずりながらも、ルフィは俺を言う。

 サンジはそんなルフィを見て、くすっ、と笑うと、

「今日はお前の為に豪華な飯にしてやるよ」

 そう言うとサンジは厨房に戻っていった。

 愛しい子の大事な誕生日。

 皆に愛される子だから、皆で大切に、楽しく祝おう。

 これからもずっとルフィの笑顔が絶えませんように。

 ずっと幸せでありますようにと。

 サンジは自分の唇を軽く触れると、無意識に笑った。

 

 

 

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