「冗談だろ?」 つい口に出して言ってしまった。 周りに誰かいるかどうか確認する。 ・・・よかった。誰もいねー。 ゾロはほっ、とため息をつく。 こんなことアイツらに知られたら一溜まりもないからな。 仲間に知られたらどんな目にあうかわからない。特に、あの航海士だけは。 俺がルフィを好きだということを気づかせるわけにはいかねー。 もし今の声を聞かれていて問い詰められたら、黙っている自信がない。 誰にも聞かれなくてよかったぜ。 聞かれていたときのことを考えて、ぞっとする。 それよりどうすっかな。これから。 ルフィへの気持ちに気づいた今、今まで通りに接することはできない。 いつも通りに接しようとしても、どうしても意識をしてしまうだろう。 どうせならこのまま気づかねー方がよかったな。なんでいきなり気づいちまったんだ? ゾロは気づいた要因を考えた。 いつも通りにぼーっとしていたら、なんとなくルフィが思い浮かんできたのだ。何度振り払ってもルフィを消し去ることはできなかった。ルフィの笑顔が頭から離れない。 今まで何度も、こういうことがあったがいつも振り払うことはできなかった。 しかもいつの間にかルフィを目で追っている自分に気づいた。 まさかと思いながら自分の心の中を整理していくと、ルフィの事を好きだという事実にたどり着いた。その時、「冗談だろ?」とつい呟いてしまったのだ。 ふぅ、とゾロは軽くため息をつく。 考えるのは俺の主義じゃねー。どっか行って体でも動かしてくるか。 そう思うとゾロは、船を降りた。 ++++++++++ 街に行くと、人がたくさんおり、賑わっていた。 うぜーな。なんでこんなに人がいるんだよ。 ゾロはあまりの人の多さにうんざりした。 他の場所へ行こう。 そう思い後ろを振り返った時に、ドンッ!と誰かがぶつかってきた。 「きゃ!」 ぶつかってきた人はゾロの体に吹き飛ばされ、地面に倒れた。 ぶつかられた本人はピンピンしてる。 「おい、アンタ大丈夫―――」 か?と言って手を差し出そうとしが、その手は途中で止まってしまった。 あまりにも知っている顔だったので驚いたのだ。 「ルフィ!こんな所で何してんだよ?」 「えっ?」 ルフィはわけがわからないといった表情でゾロを見た。 「私ルフィって名前じゃ・・・」 「おい、お前。よくも俺から逃げやがったな。許さんぞ」 少し太めな男がルフィを見て、手を取った。 「いや、やめてよ!」 ルフィはじたばたと暴れた。 「ふざけんな!俺はお前を買ったんだぞ!今更いやもなにもあるか!」 「そんなこと知らない!」 「知らないわけないだろう?!ちゃんとお前の親から高い金を出して買ったんだ」 その男は無理にルフィを引っ張ろうとする。 ルフィの表情が青ざめる。 「おい、その辺でやめとけよ。恥ずかしいぜ、おっさん」 ゾロは男の手を払うとルフィを背中に隠した。 「なっ、何だ。お前は!その女をどうするつもりだ!」 男はゾロに向かって指を指した。 女?じゃあこいつはルフィじゃねーのか。 ゾロは横目でルフィに似た女を見た。 ・・・ルフィはあんなになよなよしてねーか。しゃーねー、乗りかかった船だ。助けてやるか。 「別に・・・。どうしようもしねーよ」 「じゃあ、その女をこっちに渡せ。そいつは俺の物だ」 「こいつを金で買ったんだろ?その話は聞いてたぜ」 「なら話は早い。その女を渡せ!さもないとお前が痛い目にあうぞ」 その男の後ろから数人、柄の悪い男たちが現れた。 「・・・どう痛い目にあうか教えてもらいたいね」 丁度良い、こいつらで少し運動するか。 ゾロは刀を2本鞘から抜き、身構えた。 こいつらには2本で十分だろう。2本でも充分過ぎるくらいだ。 「なっ!!そこまで言うなら教えてやる。おい、お前ら殺さない程度に痛めつけろ!」 男は怒鳴った。 「おおうよ!」 男たちの声が重なる。 「兄ちゃん、悪く思うなよ。その女を庇ったりするからこんなことになるんだ。覚悟するんだな」 男達のリーダー格らしき者が口を開いた。 周りは野次馬の人だかりができていて、ちょっとしたイベント状態になっている。 「そんな戯言はいい。早く掛かって来いよ。お前たちが来ないなら俺から行くぞ」 ゾロは刀を交差して、腰を低くした。 「うるさい!行くぞお前ら!」 リーダー格の男が声を掛けてゾロに向かった瞬間に、ドサッ!ドサッ!という音がリーダー格の後ろから聞こえた。 「えっ・・・」 前にいたはずのゾロの姿が見当たらず、後ろを振り返ってみると部下が地面に倒れていた。その真ん中にゾロの姿はあった。 「なっ・・・」 リーダー格の男は青ざめる。 「いつのまにやりやがったんだ!」 「いつのまに?愚問だな。お前も斬られるか?」 ゾロは刀を1本リーダー格の男に向けて、言った。 「ひっ・・・。お、お助け〜!!!」 そう言うとリーダー格の男はその場から逃げていった。 ゾロは太目の男にその矛先を変えた。 「アンタはどうする?こいつらの様になりたいか?」 「あっ・・・」 男は首を思いっきり振った。 「そうか。だったらもう二度とこの女には手を出すな。手を出すなら俺が容赦しないぜ」 ぎろっ、と睨んだ。 「はっ、はい!はい!わかりました。もう二度とこの女には手を出しません!」 そう言うと男はその場から逃げていった。 「ふぅ・・・」 深呼吸をし、刀を鞘に収める。 「おい、アンタ大丈夫か?」 後ろでガタガタと体を震わせている女に話し掛けた。 「はっ、はい・・・」 女は何とか立とうとするが、腰を抜かしたらしく中々立てない。 「大丈夫じゃないらしいな」 そう言うとゾロは女の子の体を抱えた。 「きゃ!あっ、あの!」 「何もしねーよ。こんな人目があるところにずっといるのアンタ、やだろう?他の場所に移動しよう。―――おらおら、見せもんじゃねーぞ。とっととどきやがれ」 ゾロは睨みを野次馬たちに効かせると、その場を立ち去った。 ++++++++++ ゾロはルフィにの女を抱えたまま、海沿いに連れてきた。 「よし、ここなら人いないだろう」 座れそうな場所を探し、女を降ろした。 「あっ、ありがとう」 女は少し赤くなりながら下を向いた。 「ところでアンタ、これからどうすんだ?アンタの親が売っちまったんだろ?」 「・・・わからない。これからどうしようかなんてわからない。ただ・・・」 「ただ?」 「親が私を売っただなんて信じられない」 女はポロポロと涙を流した。 ・・・参ったな。女の涙には弱いんだよ。こういう場合、どうすりゃいいんだ?あのクソコックならなんとか慰め方知ってるんだろうが・・・。 しくしくと泣いている女をどうすればいいかわからずに、ただ見守っていた。 しばらくしてゾロは口を開いた。 「アンタさ、これからどうするかわからねーけど、親への復讐を考えているんだったら覚悟しておいたほうがいいぞ。自分を親を殺るんだ。中途半端な覚悟じゃ殺れねーぞ」 「私そんなつもりありません!!」 女はゾロを睨んだ。 「実の両親を殺すだなんてそんな恐ろしいことできるはずないじゃないですか・・・」 「そうか。悪い。ちょっと俺が先走りすぎたみたいだな」 ゾロは素直に謝った。 「いいえ。とんでもないです!助けてもらった貴方に怒鳴るなんて私のほうがどうかしていたんです。助けていただいてありがとうございました」 女は深々と頭を下げた。 「いいよ、別に。頭を下げなくても。俺がしたくてしたことだ。気にするな」 「・・・はい。―――あの」 「ゾロ!!」 女が何か言いかけた時にゾロを呼ぶルフィの声がした。 声の方向を見るとルフィが小走りにやってきた。 「ルフィ。どうした?」 少し嬉しそうな顔をしてルフィを見た。 「ルフィ?この子が・・・」 女はぼそっ、と呟いた。 ゾロを見ると優しそうな顔をしてルフィを見てる。 「なるほど・・・。そう言うこと」 女はくすっ、と笑った。 ルフィは二人に近づき、 「ちょっと散歩してたらゾロを見かけてさ。おや?この人誰だ?」 「ああ、ちょっと訳ありでな」 「ふ〜ん・・・。俺、ルフィって言うんだ。よろしくな」 ルフィはいつもの笑顔で手を差し出した。 「あっ、私はエリー。よろしく」 エリーはルフィの手を握り返す。 ・・・エリーって言うのか。知らなかったぜ。 「剣士さん。私はもう行くわ。貴方の大事な人も見れたみたいだし」 「はぁ?!何言ってるんだ?!」 ゾロはどきっとして慌てふためいた。 「女の感。そうじゃなくて?」 少し目じりに涙を残しながら笑った。 ゾロは何と誤魔化そうと考えたが、なぜかエリーには隠す気が起きずにいた。 「ああ、そうだよ。大事な奴だ」 「そう。それが聞けてよかったわ。私、あなたにどこかへ連れて行ってもらおうかと考えていたんだけど、それはやめたわ。だってこんなじ大事そうな人がいるんじゃ私なんか邪魔ですもの」 「アンタ・・・」 「私の名前はエリーよ。・・・貴方だけでも忘れないで」 そう言うとエリーはゾロの唇を掠め取った。 「なっ!!」 「えっ!」 ゾロは思ってもみな行動に驚いた。手で唇を被う。 「貴方と知り合えてよかった。じゃあ、さようなら。剣士さん」 エリーはあっけに取られているゾロを後に、その場を去った。 「な、何て女だ」 ゾロはふと、ルフィを見た。 「!!!!」 ふくれっつらをしたルフィがそこにはいた。 「ル、ルフィ?どうした?」 恐る恐る聞いた。 「あのエリーって人ゾロの何?恋人?」 「恋人なんかじゃねーよ。たださっきそこで知り合っただけだ」 「なんで知り合ったばっかりの人がゾロにキスするんだよ」 「さあな?何かの気まぐれなんかじゃないか?」 ちょっとこの言い訳は苦しいな・・・。 視線をルフィから逸らした。 「気まぐれだけでゾロはキスすんの?」 ルフィは益々ぷっくりしていく。 「いや、そんなことはしねーけど。って俺がしたんじゃねーぞ」 何だよ、何でコイツこんなに機嫌悪いんだ? ?マークが頭に浮かぶ。 「わかってるよ!わかってるけど・・・。俺、悔しいんだ。俺の目の前でゾロが他の奴とキスするの・・・」 えっ?!ルフィそれってもしかして・・・。 ゾロは段々心臓が高鳴っていくのがわかる。 「ル、ルフィ。それってもしかして・・・」 ゾロがルフィに問い掛けた時に、目の前が暗くなった。 その事を理解したのは少し経ってからだった。 唇に柔らかい感触がある。目の前にはルフィのドアップの顔がある。 これってもしかして俺たちキス、してる・・・? 目をぱちくりと見開きながらそんな事を考えていた。 しばらくしてからルフィから離れた。 「これからはこういうことするの俺だけでいてよ。じゃなきゃ、ヤダ!」 ぷっくり、又膨れ出す。 やだってお前はだだっ子か・・・。 ゾロは心の中でつっこんだ。 突然のあまりなんて言葉を出していいかわからない。 「それともゾロは俺以外とこういうことしたい?」 ちらっ、とルフィはゾロを上目遣いで見る。 「そんなこと・・・、そんなことあるはずないだろう?!俺はお前が好きなんだから」 ゾロはぎゅ、とルフィを抱きしめた。 「ホントか?それ、ホントか?」 「ああ、本当だ。俺が嘘つく様に見えるか?」 「うんん。見えない」 「じゃあ、信じろ」 「うん。・・・そう言えばさっきの女の人誰かに似てたな?誰だっけ?」 「さあな、誰だろうな。誰だっていいさ」 まさかルフィも俺のこと好きだったなんてな、思いもよらなかったぜ。アイツ、エリーのおかげだな。 ゾロはエリーに感謝をした。 今日気づいた恋が、いきなり実ったのだ。 こんなに嬉しいことはない。 ゾロはしばらくの間、この嬉しさを噛み締めていた。 ++++++++++ 次の日ゾロは街に出てみると、人々の話し声が聞こえてきた。 「そういえば知ってるかよ?昨日、海岸沿いで女の死体が見つかったんだとよ」 「うぇぇぇ〜。マジかよ」 「ああ。なんでもその女、昨日ひと悶着あった女らしいぜ」 「昨日のアレか!でも何で死んだりなんかしたんだ?」 「自殺だよ。どこかでレイプされたらしくてよ。体中に酷い痣だったらしいぜ」 「レイプ?酷い奴もいたもんだな。でも何で自殺だなんてわかるんだよ。殺されたかもしれねーじゃねーかよ」 「それがさ、そこの峠から飛び降りるのを見た奴がいるんだよ」 「飛び降り自殺か」 「かわいそうなことをしたよな」 男たちはうんうん、と頷いていた。 「くそっ!」 ゾロは舌打ちをした。 何もできなかった自分が悔しい。 『貴方だけでも忘れないで』 その言葉がゾロの頭の中で浮かんできた。 忘れねーよ。なんたってアンタは俺達をくっつけてくれたんだから。忘れるモンか! ゾロはそう思うと、街に消えていった。 |
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