「クリスマス?なんじゃそりゃ?」 ゾロは先頭で棒に重りをつけながらトレーニングに励みながら言った。 「やだ、アンタ知らないの?」 ナミが「うっそ〜?!」という顔をしながら言った。 「知らねーな、そんなモン」 ナミに視線を送ることもなく棒を振る。 「なあなあ、それうまいのか?」 ルフィが口をはさんだ。 ナミはちょこん、とゾロの隣に座っているルフィに視線を向けた。 「うまいって、アンタね・・・。クリスマスが食べのものはずがないでしょ?アンタたちのいた街でクリスマスやらなかったの? 仏教徒じゃあるまいし」 「やった事ねー」 「食べ物じゃないなら知らない」 ゾロ、ルフィが続けざまに言う。 「そう・・・」 ナミは項垂れた。 「どんなヤツか知らねーけどよ、そんな事してる暇があったら体を鍛えてたぜ」 「うん、俺も。早く強くならないと村から出られなかったから」 「成る程ね。アンタ達の強い訳がわかった気がするわ。―――じゃあ、今日やるクリスマスはアンタ達が始めてやるクリスマスなのね」 軽くため息をつく。 「だからそれはなんなんだよ、その『クリスマス』っていうのは?」 ゾロは話を聞こうとして、棒を前に降ろした。長い時間やっていたのかゾロの体は汗が光っていた。 ナミは正直に話してわかるかどうか悩んでいた。 このバカ二人にわかるかしら・・・?面倒だわ・・・。 ナミは少し考えると、 「願いが叶う日よ」 と言った。 「はぁ?」 「本当か?!すげーーー!!」 ゾロは変な顔をし、ルフィは嬉しそうな顔をした。 「そう、この日は願いが叶うかもしれない日なのよ。それに結構この時期になると恋人ができやすくなるしね。この際、アンタ達も恋人でも作ったら?」 ナミはにやっ、と笑った。 「恋人?そんなモン作る必要ねーな」 「それは食いモンか?」 ・・・バカ。 ナミは深くため息をついた。 やっぱりこの二人にクリスマスなんてロマンティックなことわかんないか。よかった、説明しないで。余計な体力を使うところだったわ。 「そう、ならいいけど。ちなみに、ルフィ。恋人は食べ物じゃないわよ。ゾロにでもその意味聞きなさい」 そう言うとナミは中に入っていった。 「・・・なんだ?恋人って?」 ルフィは首を捻りながらゾロを見た。 「俺に聞くなよ」 「だってナミが聞けって」 「だからってな・・・」 ゾロは嫌な顔をした。 「なあ、何だ?恋人って」 「・・・例えばお前今好きな奴いるか?」 「好きな奴?いっぱいいるぞ!皆好きだ!」 「そう言う好きじゃなくてよ」 おい、とゾロはつっこんだ。 「じゃあどんな好きなんだ?」 「そうだな、例えば・・・」 ゾロはちらっ、とルフィを見て、 「ソイツを抱きしめたいとか、一緒にいたいとか、守りたい触れたいとか、それに・・・キス、したいとか・・・。そう思う相手だよ。そう思う相手が自分の事をそう思っていたらそいつらは恋人だ。お互いが思っていることだからな」 「ふ〜ん・・・。俺、いるぞ。そういう相手」 ルフィの口から驚きの言葉がでる。 「いるのか・・・?」 「うん」 こくん、と頷くルフィを見てゾロは衝撃を受けた。 そうか。いるのか・・・。まさか、いきなり失恋するとは思わなかったぜ。 ゾロは相当なショックを受けた。 「ゾロは?」 「あぁ?」 「だからゾロにはいるの?そういう人」 ルフィにしてはめずらしくモジモジして聞いた。 そんな事聞くなよな。今の俺に・・・。 ゾロはそんな質問を聞いてくるルフィを恨めしく思う。まあ、ルフィはゾロの気持ちを知らないので仕方がないが。 ゾロは深いため息をつくと、 「・・・いるよ。俺にもいる。そういう奴」 「えっ・・・。ゾロいるの?そういう人・・・。触れたいとか守りたいとか、・・・キスしたい人」 ルフィはゾロの言葉を聞くと、今までの表情が嘘みたいに沈んだ。 「・・・ルフィ?」 ゾロはそんなルフィの変化に気づく。 ルフィはゾロに近寄った。 「誰?・・・ゾロが思っている人って誰?」 「おいおい、どうしたんだよ。お前らしくないぞ」 「ねえ、誰?」 つぶらな瞳がゾロを見る。 それ以上近寄るな!制御が利かなくなる!! ルフィはそんなゾロの気持ちを知ってか知らずか、 「ねえ、誰?ゾロが好きな人って誰なの?」 そう言うとルフィはゾロに抱きついた。 思いも寄らない行動にゾロは焦る。 「その人俺の知ってる人?」 抱きつかれたうえに、顔をマジマジを見つめられた。 ぷっつん!! ゾロの中にある何かが弾けた。 ぎゅう、とゾロもルフィを抱きしめる。 「・・・ゾロ?」 「ああ、お前の知ってる奴だよ。すっごく知ってる。・・・お前が一番知ってるんじぇねーかな?」 「俺が知ってる人?・・・それはナ」 それはナミ?と聞こうとしたときにルフィはゾロの唇で塞がれていた。 触れるだけのフレンチキス。 少しして顔を離してルフィの顔を見るとキスされたままの状態で止まっていた。 「こういう事だよ。俺が好きなのはお前だ、ルフィ」 少し赤くなりながらゾロは言った。 「う・・・・そ」 ルフィの口から微かに声がでる。 「嘘なもんかよ。酔ってもいないのに男なんかにキスできるか!」 ゾロは吐き捨てるように言った。 「じゃあ、本当なの?本当に俺が好き?」 「ああ、本当だよ。何度も言わせるなよ。照れるじゃねーか」 本当に照れているのか耳まで真っ赤になっている。 ルフィはその言葉を聞くと、ぱぁ〜と表情が明るくなった。 「やった〜!!俺達恋人なんだ!!」 ルフィは大声で叫んだ。 いきなり大声で叫ばれたのでゾロは驚いた。 「すげー、ナミが言ったとおりだ!願いが叶った!!」 「願い?」 「うん。ほら、さっきナミが言ってただろ?クリスマスは願いが叶う日だって」 ゾロは先程のナミとの会話を思い出す。 ・・・ああ、確かに言ってたな。そんな様な事。 「クリスマスってすげーな。俺、クリスマスが好きになったよ」 にこにことルフィは笑った。 ・・・なんか違うような気がするが、まっ、いいか。俺の思いも通じたようだし。 ゾロはふぅ、と軽く息を吐いた。 「俺もクリスマス、好きになりそうだぜ」 そう言うとゾロはにやっ、と笑った。 ルフィはしししっ、と笑った。 「じゃあ、さっき言った言葉は訂正しなきゃな」 ぼそっ、とゾロは言った。先ほど恋人はいらないと言った言葉のことだろう。 「何?」 「いや、なんでもねー。そうだ、恋人になった記念にもう一度・・・」 そう言うとゾロはルフィにキスをした。 「これからも頼むぜ、恋人(キャプテン)さんよ」 「おう!」 ルフィは嬉しそうに微笑んだ。 「クリスマス、大好きだ!!」 ルフィの声が空高く響いた。 |
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