「ねえねえ、今日デパートに行かない?」
香はテーブルに肘をついて言った。
「あぁ?デパートだぁ?嫌だよ。人がいっぱいでごちゃごちゃしてるだろ」
遅い朝ご飯を口に方張りながら言う。
「いいじゃない、たまには。まだ依頼料も大分残ってるし、新しい洋服が欲しいのよ」
ねっ?お願い。
といった表情で香は撩を見つめた。
その顔がともて可愛い。
・・・そんな目で見るなよ。そんな顔されたんじゃ断れないだろうが・・・。
モグモグ、ゴックン。
口の中にあった食べ物を飲み込む。
「・・・わ〜あたよ。行けばいいんだろう、行けば」
マグカップを手にとり、コーヒーをすすった。
「ホント?付き合ってくれるの?やった〜。じゃあ、早速仕度してくるわね」
香は撩の気が変わらないうちに、そそくさと仕度を始めた。
ルンルン、と鼻歌が聞こえてくる。
・・・たまにはいいか。お姫様に付き合ってやるのも。
そう思うと撩は目の前にある朝ご飯をすべて胃の中に流し込んだ。
*********
「うわぁ、すっごい人・・・」
デパートに着くと、香は開口一番にその言葉を口にした。
見るからに人、人、人のオンパレードだ。
カップルや家族連れ、友達同士など色々な組み合わせの人たちが所狭しと歩いていた。
気をつけなければ肩がぶつかりそうなぐらいに今日のデパートは混んでいた。
デパートには『大セール中!』の垂れ幕が掛かっている。
「いっらしゃいまして、誠にありがとうございます。本日がセール期間の最終日でございます。
最終日に伴いまして、赤字覚悟の大セールを行いますので、よろしかったら見ていって下さい!」
とメガホンを持った店員がデパートの前で叫んでいた。
「なるほどね・・・。それでこんなに混んでるのか」
撩はふぅ、と溜息をついた。
「おっ?」
撩の目が20代前半の女性に向けられた。
店員の掛け声を聞いて、ぞろぞろと周りの人たちは店内に入っていく。
「撩、私達も行きましょうよ。いいものがなくなっちゃうわ」
香は撩がいた場所に振り返ると、そこには既に撩の姿は見当たらなかった。
「ねぇねぇ、お姉さん。ボクチンとお茶しな〜い?」
目と鼻の先ぐらいの距離で撩はスケベ面をさせながら、2人組みの女性をナンパしていた。
「あのもっこり男め〜!」
香はむっ、とした顔をして撩を捕まえに行こうとしたときに、
「お姉さん。一人?一人なら俺たちとどこか行かない?」
と男性二人組に声を掛けられた。
「えっ?」
香は振り向くと、
「ごめんなさい。私には連れがいるので・・・」
「連れ?いないじゃん」
男の一人があたりを見回す。
「貴方みたいな綺麗な人を放っておく奴よりさ、俺たちとどこかに行こうぜ」
にやにやとした表情を浮かべながら香に近寄る。
「でも・・・」
香は困った表情をして、少し後ろに下がった。
「まあまあ、そんなに怖がんないでよ」
男が香の腕を掴もうとした時に、がしっ!とごつい男の手がその男の腕を掴んだ。
「痛てっ!!!」
捕まれた男は顔を顰めて、相手の男を見た。
「痛てーな!アンタ!何しやがる!」
きっ、と男は睨む。
「・・・なんだ、お前ら?」
撩が無表情な顔で男達を見た。
撩!何でここに・・・。
ナンパをしているはずの撩が表れて香は驚いた。
香は嬉しそうに心の中で名前を呼ぶ。
「お前こそなんだよ。この人は俺たちが先に声を掛けたんだぞ。おっさんに渡すかよ」
もう一人の男がいきがって、言った。
撩はその言葉にむっ、とくる。
「俺をおっさん呼ばわりするとはいい度胸だな。一度死ぬか?」
撩は懐から愛用の銃を取り出そうとした。
「や、やめなさいよ、素人相手にみっともない!」
香は慌てて、それを止めた。
「なんだよ、お姉さん。コイツと知り合いなの?」
「ええ、さっき言ってた私の連れよ。この人怒らせると怖いから、もうここから退散した方がいいわよ」
「けっ、何言ってやがる。彼氏が怖くてナンパなんてできません。お姉さん、
こんなおっさんとじゃなくて俺たちみたいな若い奴と遊びましょうよ」
もう一人の男は香の腕を掴もうとすると、
「いい加減にしろよ。このガキども」
ぐいっと掴んで、背中に掴んだ腕を回した。
「イテェェェェーーーーーー!!」
男は目に涙を溜める。
「よーく耳をかっぽじって聞けよ。コイツは俺の女なんだ。その汚い手で触れるな。コイツに手を出したら・・・」
撩は一息置いて、
「殺すぞ」
目に力を入れて言った。
「「ひっ!!!」」
男達はびくっ、と体を強張らせる。
「わかったらとっとと行きやがれ」
撩は掴んでいた腕を離した。
「「す、すんませんでした!!」」
2人は謝ると、即座にその場から逃げ出した。
香は逃げ出した2人組みを呆然と見ていた。
「ったく、あんなナンパすぐに断れよな。いつも俺にはハンマーを出すくせに」
むすっ、とした表情で撩は言う。
「だってしょうがないでしょ?アンタは頑丈だからいいけど、あんな子供相手にハンマーなんて使ったら死んじゃうわよ!」
「俺だって死ぬわい!あんな強烈なハンマーを受けたら」
「そんなの死んでから言いなさいよ!」
「死んだら言えないだろうが!」
「何よ!」
「何だよ!」
2人はじーっとにらみ合う。
しかし、周りからの強烈な視線を浴びて、2人はにらみ合うのをやめた。
知らず知らずのうちに周りには人だかりが出来ていたらしい。
大勢の人が2人を囲んでいた。
「ちょっと、撩。ここから離れましょう!」
「了解!」
2人はそう言うとそそくさとその場から逃げ出すように去っていった。
**********
「まったく、アンタのせいでショッピングができなかったわ」
香がぷう、と頬を膨らませて言う。
「何だよ。俺のせいかよ・・・」
助けてやったのに、とぶつぶつと独り言を言う。
「でも・・・」
香は歩きを止めて、
「ありがとう。助けれくれて・・・」
「・・・いや。別に大した事じゃないさ」
「そう?私にとっては大した事だったわよ」
「ナンパされたことがか?」
「違うわよ!・・・撩が、・・・撩が私を『俺の女』と言ってくれた事が」
香は少し頬を赤らめながら言った。
視線はあさっての方向を見ている。
「・・・そんなこと当たり前だろう。お前は俺の女なんだから。俺の目の前で他の男がお前に触れてたまるかよ」
撩は香の所まで歩いて行くと、香の頭を自分の胸に当てた。
「お前は俺のモノだ。誰にも渡さないよ」
ぼそっ、と呟くように撩は言った。
「・・・うん」
香はこくんと頷き、撩の胸に顔を埋める。
「ありがと、撩」
真っ直ぐな愛の言葉が香の胸に響く。
「私も撩のことは誰にも渡さない」
「ああ、そうしてくれないと困る。まあ、その前に俺がお前を離さないけどな」
そう言うと額にキスをした。
「さっ、帰ろうぜ。なんか騒いだら腹すいたぜ」
「・・・そうね。じゃあ、早く家に帰りましょう。何か作るわ」
「ああ」
そう言うと2人は腕を組みながら、岐路に着いた。
*****戯 言*****
この話はですね、シャワーを浴びていたら思いついた話です。
なんかナンパをされている香を助ける撩を書きたくて書いちゃいました。
1時間でかけたよ。
のってると早く書けるものだね。
う〜ん、今思ったけど私が書いている撩って香に対してすっごい独占欲強いのね。
でも、そんな撩が私は好きです!!
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