テレビを見て香はぽつりと言葉を漏らした。

「いいな〜」

ぼけ〜、とテレビ画面を見ながら言った。

俺はそんな香を横目で見ながらも新聞を掲げる。

「何がだよ?」

「温泉よ、温泉!いいな〜、私も温泉入りたい」

 その香の言葉に撩はテレビを見た。

 するとそこには温泉に浸かっている観光客の姿があった。

 若い女の人が浸かっていたのならば撩は騒いだが、何分画面に映っていたのは老人だけだった。

 ちっ、と舌打ちする。

「?・・・どうしたの?」

「いや、なんでもない」

新聞紙で顔を隠す。まさか若い娘がいないから残念だなんて言えない。

言った途端にハンマー地獄だ。

「そんなに行きたきゃ誰か誘って行けばいいだろ?絵梨子さんとかさ〜」

香の親友の名を挙げる。この絵梨子さんは俺にとっては疫病神としか言いようがない。

とても美人で俺のもっこりレーダーに当て嵌まるのに性格上問題ありなのだ。

色々なトラブルを持ち込んで来る。俺としては御遠慮願いたい相手だ。

「ああ、絵梨子は無理よ。まだ日本に帰って来てないし。−−−あっ、美樹さんはどうかしら?・・・でも仕事が忙しいか」

ふぅ、と溜息を付いた。

この仕事とは喫茶店の方の仕事ではなく、裏の仕事の事である。

美樹さんか〜。

俺は二人が温泉に入っている姿を想像する。

湯に浸からないように、少し長い髪を束ねて頬をうっすらと桜色に染めて艶やかしい二人。

想像ながらも少し股間の辺りが盛り上がるのを感じた。

・・・溜まってんのかな?

想像でもっこりするなんてまだ体が若い証拠だと自分で納得する。ん?ちょっと待てよ。ということは湯上がり姿の二人を他の男が見るって事か?それはイカン!つい力を入れてしまって持っている新聞紙を握り潰してしまった。

「ちょっと撩!何してんのよ!私まだ読んでないんだからね」

そう言うと香は撩から新聞を引ったくると皺を伸ばした。

頬をぷっくりと膨らませる姿がとても可愛い。

「・・・今度連れて行ってやるよ」

あまりの可愛さに俺はつい口を滑らしてしまった。

「本当!?」

予期していなかった言葉だったのか、香は目を見開いて驚いた。

しまったと思いながらも俺は「ああ」と頷いてしまう。

「やった〜!約束よ!その言葉忘れないでね!」

「はいはい」

嬉しそうな笑顔がとても眩しく見える。

本当に今度温泉にでも連れて行ってやろうか。

「香、たまには一緒に伝言板でも見に行くか?」

旅費が必要だしな。

「珍しい。一体どうした・・・、あっ!」

俺の意図がわかったらしく、香はすぐににっこりと笑った。

「じゃあすぐに支度するから待っててね。−−−撩、勿論おと・・・」

「わかってるよ。野郎の依頼でも受けてやる」

最後の言葉を被せる様に遮った。

その言葉に気をよくしたのか、香は鼻歌を歌いながら部屋に着替えに行った。

「まっ、たまにはいいだろ」

俺はそう言うと、香の支度が終わるのを待っていた。

 

*****戯言*****

題名からしてごめんなさい。いつも書き終わってから
タイトルつけているんだけど、今回は浮かびませんでした。
まあ、今回は許してちょvv
ちなみにこれは電車の中で携帯で書いたお話ですvv

 

 

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