「僚のバカッ!!!」 そう言って香は部屋から飛び出す。 「香ッ!!」 僚は止めようとしたが間に合わず、香はマンションから飛び出していった。 たわいもない痴話喧嘩。 今日も朝帰りになってしまい、僚はひたすら平謝りをした。 しかし今日の香は許しもせず、いきなり「バカッ!」と言って飛び出してしまったのだ。 流石の僚も香のいきなりの行動に予測がつかずに、香を捕まえることができなかった。 「何だ?香の奴・・・」 僚はいつもの事だと、たかをくくり、ビールを飲もうとして冷蔵庫を開けた。 すると中には1本も入っていない。 仕方なく外においてあるぬるいビールを喉に流し込んだ。 ふと、外を見ると薄暗い空があった。 朝方といえど、夏のこの時間はすでに明るくなってもいいはずだ。 しかし空は一向に晴れる気配がない。 今日は雨・・・か・・・。 そう思ったら、窓ガラスにぽつりぽつり、と雨粒がしみこんでいった。 アイツ、傘持ってんのかな・・・。なわけねーだろうな・・・。 「・・・・・・・・・・・・・・」 僚は飲み干したビールの缶をバキッ!と握りつぶす。 「ったく、世話が焼けるぜ」 そう言うと僚は缶を放り投げて、玄関先にある傘を持って飛び出した。 ********** いつのまにか空模様がどす黒くなっている。 香は降って来る雨に打たれながら、屋上から景色を見ていた。 いや、見ていたというより視界に映っていると言った方が正しいだろう。 景色を見る心持は香にはなかった。 ただ、ぬるい雨の感触だけを感じる。 しっとりとした髪を香はかきあげた。 ・・・僚のバカ・・・。何で私の気持ちをわかってくれないのよ。 雨に混じって、目から涙が零れる。 柵に両腕を乗せて、頭を乗せる。 人目はないが、自分が泣いていることを誰にも見せたくないという思いからの行動だった。 涙が頬を伝わらずに真っ直ぐに地面に落ちた。 「僚のバカ・・・」 悪態を口に出して言ってみる。 「・・・バカで悪かったな」 すると後ろから僚の声が聞こえてきた。 えっ? 香は直ぐに頭を上げ、後ろを振り向く。 見ると傘を差した僚が香の後ろに立っていた。 珍しく真剣な表情をしている。 「・・・僚」 どうしてここが・・・。 驚きの余り瞬きを忘れて、僚を凝視する。 「どうしてここがって、言う顔だな・・・」 僚はスッと、傘を香に差し出して、表情を崩した。 「玄関にお前の靴があったから、きっとこの建物の中だろうと思ってな」 「僚・・・」 僚は香を抱き寄せると、耳元で囁いた。 「悪かった」 「えっ?」 「悪かったよ・・・。すまん、1人にさせて」 二人が出逢うその前は、こんな本音なんかは絶対に言えなかった。 こんなに直ぐに本音を言えるほど、僚は香に心を開いていた。 「本当に・・・、本当にそう思ってる?」 「ああ、思ってるよ」 心に響く声が香の心を揺さぶる。 惚れた弱みかしら?何だか僚の声を聞いたら怒りが消えちゃったわ・・・。でも、このまま許すのは癪だから・・・。 「いいわ、許してあげる。その代わり今度の依頼、男でも受けてもらうわよ」 香は僚から離れ、笑顔を見せた。 「なっ!それとこれとは話が別だろうぉ?!」 「違わないわよ!男性の依頼を受けたらちゃらにしてあげるって言ってるんだから。―――いいわね、僚」 にっこりと香は微笑む。 これで生活難を乗り切れるわ。仲直りもできて仕事もできるなんて、まさに一石二鳥ね。 「さ、詐欺だ・・・」 顔を引きつらせる僚。 「詐欺じゃないわよ」 「むむむむむっ」 悔しさのあまり僚は唸る。 「わーった!いいだろう、男でも依頼受けてうあろうじゃねーか。その代わり・・・」 傘を放り投げて、香を抱える。 にんまりと笑みを作ると、 「今日は寝かさないぞ」 「はいぃぃぃぃぃぃ?!」 その言葉を聞いて香は慌てふためいた。 「ちょっと、冗談でしょ?もう、朝よ?!」 「冗談なんかじゃありませ〜ん!僚ちゃんは本気です」 これ以上雨に濡れない様に、僚は急ぎ足で中に入っていく。 「・・・この万年もっこり男が・・・」 香は目の下をピクピクと引きつらせながら、ぼそっと呟く。 「何?何か言ったかい?香ちゃん」 「いいえ、別に何も・・・」 香はちらりと、僚を見て空いている腕を僚の首に回した。 「・・・なら、雨で冷えちゃったから僚のぬくもりで暖めてね」 艶っぽい瞳で僚を見据える。 ぱちくり、と目を見開くものの、僚はくすりと笑うと、 「OK。熱いと言わせるまで暖めてやるよ」 そう言うと僚はちゅ、っと額にキスをした。 |
*****戯言***** 今更ながらGLAYの曲を聴いて思いついたネタです。 歌詞カード見てたらなんとなく・・・。 まだこれからもGLAYの歌詞を見て思いついたら、 書くかも・・・。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||