う〜ん、どうしよう・・・。 香はデパートの中にある食品売り場にある一角のコーナーの前に立っていた。 これは買うべきかしら? 先ほどから良い匂いが漂ってくる。 見るとタイムセールスらしくて、とても安くなっていた。 行き交う人が足を止めて、それを手に取って行く。 この間久しぶりに仕事が入って少しは懐も潤ってるし、買っちゃおうかな? 顎に手を当てて考える。 「よし!決めた。買おう」 香はそう決断するとそれに手を伸ばした。 最近暑いし、夏バテにならないようにしてもらわなきゃね。あれでも一応うちの大黒柱なんだから。 なるべく大きいものを選んで2パック買い物篭に入れる。 たまには奮発しなきゃ。 香はそう思うと、その場を去った。 買い物篭に入ったそれは少し重みを香に与えながら、匂いを発していた。 「ただいま〜」 僚は夕飯が出来上がる時間を見計らって帰って来た。 「あっ、おかえりなさい。もう少し待っててね。あとちょっとでごはんできるから」 香は健気にも遊んで帰って来た僚に大人しく待っていろと言う。 『手伝え』の一言ぐらい言ってもいいはずだ。 しかし香は普通に家事を1人でこなしていたのだ。 「は〜い」 僚は力のない声で返事をする。 するとなにやらいい匂いが鼻腔をついた。 クンクン、と匂いを嗅ぐ。 普段では嗅がない匂いが部屋の中に充満した。 香がフライパンでなにやら暖めている。 「・・・これはもしや・・・」 僚は香の横に立ち、フライパンに被さっている蓋を取った。 そこには栄養満点、精力がつく『うなぎ』がいい音と匂いを発しながら、フライパンの上で暖められていた。 「ちょっと、僚!いきなり何すんのよ!うなぎの匂いが逃げちゃうじゃない!折角今蒸してたのに」 「ああ、ワリーワリー。―――でもさ、何でいきなりうなぎなわけ?何がいいことでもあったのか?」 フライパンの蓋を元に戻す。 「ううん、いいことなんかないわよ。ただ、最近暑いでしょ?だから夏バテにならないように何か栄養のあるもの食べさせようかなと思って。それに丁度タイムセールスやってたから安かったのよ」 「ふ〜ん・・・」 じーっと香を見つめる。 「な、何よ?」 見つめられて、香は少し赤くなる。 「いや、別に」 そう言うと僚は香の肩にぽん、と肩を置いた。 香は言いようのない危機感を感じ、少し体制を後ろに逸らす。 が、僚がそれを許さないといった感じでしっかりと肩を掴む。 「ど、どうしたの?僚」 目をぱちぱちさせる。 「香ちゃんは、よく俺のことを考えてくれてるな〜、と思ってさ」 「当たり前じゃない。パートナーなんだから」 「だよね〜。じゃあ、今俺が何を考えている事はわかるかい?」 「今考えていること・・・?さあ〜?」 首をかしげた。 キョトン、とした表情をする。 その態度がめちゃくちゃ可愛い。 今にも押し倒しそうな勢いをなんとか抑えつつも、いたって冷静に僚は香と向き合った。 「あっ、ちょっと離してよ。うなぎが焦げちゃう」 思い出したように言うと香はガスを止めた。 しかし僚はその間も香から手を離そうとはしなかった。 「一体なんなの?これ、何かのいやがらせ?」 「俺が?香ちゃんに?まさか!そんなこと俺がするわけないじゃないか」 心外な、と僚は悲しそうな表情をする。 「じゃあ、一体何なの?」 埒があかない僚の態度に香は少しいらだった。 「まあまあ、そんな怖い顔しないで」 そう言うと僚は香の体を腕に抱いた。 軽々と香は持ち上げられる。 「きゃ」 いきなりの出来事に香は驚きの声を上げて、僚にしがみ付いた。 「う〜ん、香ちゃんいい匂い」 僚は香の髪に顔を埋める。 「ちょっと、僚!何の真似よ?!」 正気に戻りバタバタを手足をばたつかせる。 「べっつに〜。これから寝室に行こうかと思ってね〜」 「し、寝室ぅ〜????何で!」 「そんなの決まってるじゃない。これから香ちゃんを抱くの」 「だ、抱くぅ〜????」 香はその言葉に顔を真っ赤にさせた。 「ちょっと、今はそんなことをしている場合じゃないでしょ。もうすぐ夕飯ができるよの?!」 「そんなことは知ってるさ。でもね、香ちゃん。こんなにも僕につくしてくれるなんて思ってもみなかったからさ」 「つくす・・・?」 僚はうんうん、と頷く。 「だってほら、僕の為に精力がつくうなぎを買ってきてくれるなんて、ボクちゃん感激」 語尾にハートマークをつけてそうな言い方をした。 「うなぎを食べて、ますます香ちゃんを喜ばせないとね」 「ちょ、ちょっと!待ってよ。別に私そんなつもりで買ってきたんじゃないわ。それにアンタうなぎまだ食べてないじゃない!」 「シャ〜ラップッ!!!もう四の五の言わないの。俺もうすっかりその気になっちゃったもんね〜」 にこにこと顔を綻ばせる。 「でも!」 「でもはなし。・・・俺は香を愛したいんだよ」 僚は急に真面目な顔になり、低い声でボソっと呟いた。 その急激な変化に香は少し呆然とする。 「・・・・・・・ずるい。そんな顔されたんじゃ拒否できないじゃない」 香は顔をそっぽ向かせた。 照れている横顔がとても可愛い。 僚はそんな香を見て、ふっ、と笑うと、 「じゃあ、お姫様。食前の運動でもしにいきましょう」 そう言うと僚はすらこらさっさと香をお姫様抱っこのまま、寝室まで連れていた。 「・・・・バカ」 香はそんな僚に軽い悪態をつき、自分から僚の首に手を回して抱きつく。 すると二人は過激な食前の運動をして、夜中になるまで寝室から出てこなかった。 |
*****戯言***** お久し振りのCH小説です。 |
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