「お疲れ様〜、香!今日もとてもよかったわよ!!」 デザイナーであり、香の親友でもある絵梨子が拍手をしながら、香に近づいた。 「それはどうも」 香は気のない返事をして、軽く溜息をつく。 「毎回悪いわね。モデルを頼んじゃって」 「いいわよ。こっちだって、依頼料貰ってるんだし。背に腹は変えられないわ」 そう言うと香は肩をすくませた。 「そう言ってくれると助かるわ。また、今度もお願いするからねvv」 「経済状態によるわね」 「そうつれないこと言わないでよ」 ね〜、と可愛らしく絵梨子は言った。 「はいはい。また機会があったらね」 香はそう言うと付けていた貴金属を外し、絵梨子に渡した。 「その言葉、ちゃんと覚えてるからね。忘れないでよ」 「はいはい。・・・あっ、今何時?絵梨子」 思い出したように香は言った。 「えっとね・・・」 絵梨子は腕時計を見て、 「16時過ぎ・・・。何かこれから用事でもあるの?」 「あっ、ううん。そういうわけじゃないんだけど。夕飯の支度をしなくちゃと思って」 「ったく、本当に香はお人よしなんだから。少しは冴羽さんをほっといたら?」 「そうもいかないわよ。―――じゃあ、絵梨子。私そろそろ帰るわね」 香はそう言うと少し小走りに、更衣室へ向かう。 「香!今日はありがとうね。冴羽さんに、よろしく!」 香はその言葉を聞くと振り返り、にこりと笑った。 ばいばいと軽く手を振る。 その姿はとても綺麗だった。 久し振りに再会したときも綺麗だと思ったが、ここ最近ドンドン綺麗になっていく香を目の当たりにして、絵梨子は驚いていた。 それはきっとパートナーのお陰だろう。 何せ2人の間に入り込む隙間がないくらいに、2人の世界を作っているのだから。 撩や香がお互いを見る目つきが前と全く違う。 情熱的な、そして優しい視線でお互いを見る。 その世界に回りの人は圧倒されるばかりだ。 しかしだれもそれを止めようとはせずに、温かく見守っている。 絵梨子もそのうちの一人だった。 「・・・相変わらずラブラブなんだから。羨ましいわ。あ〜あ、早く私も相手見つけよ〜っと」 そう言うと絵梨子は事務所に入っていった。 ***** 「今日の夕飯、何にしようかな〜」 香は急いで着替えて、出てくるとう〜んと唸りながら、夕飯の献立を考えていた。 「依頼料も入ったことだし、たまにはステーキでもしようかしら?」 少し視線を落とし、手を顎にかけた。 中々決まらない献立に、香は溜息をつく。 その姿がとても色っぽい。 それに今までモデルをやっていたので、化粧もばっちりしてあるのでとても美人だ。 道をとおる男性が殆ど香を振り返った。 しかし香はそれに気付かないまま、道を歩いている。 すると、その香の姿をみた人が声を掛けてきた。 「失礼、お嬢さん。今お一人かな?」 びしっ!とスーツを着たわりとハンサムな男性が目の前に立っていた。 「えっ・・・。あの・・・」 香は目をぱちくりとさせながら、戸惑った。 「お一人なら、私と一緒にワインでも飲みながら食事でもしませんか?」 にこっ、と男性が笑った。 その笑みは決して嫌味ではない笑みだ。 とても爽やかで、人当たりの良い感じがする。 「ごめんなさい。これからちょっと用事があって・・・」 香は申し訳なさそうに言う。 「そう。じゃあ、電話番号だけでも聞かせてもらえないかな?」 男性はあくまでもスマートに、かつ、積極的に香をナンパした。 「電話番号ですか?・・・ごめんなさい、それは教えられないです」 丁寧に謝る。 「そうですよね。会ってまだ間もないのにいきなり電話番号だなんて教えられないですよね。じゃあ、こうしましょう。ほんの30分ぐらいでもいいのでお茶でもしませんか?それで私が信用できたら、電話番号教えてください。それならばいいでしょう?」 男性はどうしても香を落としたいのか、しつこく言い寄った。 「その・・・」 どうやって断っていいのかわからずに、香は動揺する。 香からの返事がない事をいいことに、男性は香の肩を抱いた。 「では行きましょう。良い店を知ってるんですよ。きっと気に入ってくださると思います」 そう言って、歩こうとした時に、男性の手が香から離れた。 「いてっ!」 男性は顔を顰めて、痛みが走った手を握る。 見ると香の後ろに撩の姿があった。 「なっ、なんだ君は!!」 異様な雰囲気の撩に男性はたじろぐ。 「あんまり軽軽しく初対面の女性の肩を抱くもんじゃないぜ」 香はその声で後ろを振り返った。 「撩!」 香は助けにきてくれた撩に、深い感銘を受ける。 思わず、香は撩に抱きついてしまった。 「・・・こういうことだ。悪いがこの女からは手を引いてもらおうか。俺の女なんでね」 じろっ、と撩は男性を睨む。 男性はひっ!という声とともにべたっ!と地面に座り込んでしまった。 どうやら撩の雰囲気に圧倒されてしまい、腰が抜けたらしい。 ガクガクと足が震えている。 撩はそんな男性の態度を見ると、香の腰に腕を回してその場から去っていった。 男性は去っていく二人を腰を抜かしながら見つめていた。 ***** 暫く無言のまま、2人は歩いていた。 それでも撩の力強い腕は香の腰に回されていた。 「あの、撩。・・・助けてくれてありがとう」 ぼそっ、と香は呟く。 「お前、あれぐらい簡単に退けろよな。いつもの俺にやってるようにハンマーで一発かましてやれば簡単だろ?」 「だって、そんなこと思いつかなかったんだもん。まさかナンパされるなんて思ってもなかったし」 ぷっくりと香は頬を膨らませた。 「いい加減、お前も気づけよな」 「何をよ」 大きい瞳で撩を見る。 撩は少し明後日の方向を見た。 何か言いずらそうだ。 「何よ。言いたい事があるならはっきり言いなさいよ」 マジマジと撩の顔を見つめる。 撩は少し息を大きく吸い込むと、 「お前すごくいい女なんだから、少しは警戒して歩けよな」 「えっ?」 撩の口から珍しい言葉が飛び出してきて、香の思考は停止してしまう。 「それにモデルやってきた帰りなんだろう?化粧してるから余計に美人に見えちまう。ちゃんと化粧落としてから帰ってこいよ。毎回毎回助けてやれるわけじゃねーんだからな。まあ、俺的には化粧をしていない素顔のお前の顔の方が好きだけどな」 唇をとんがらせて、撩は言った。 どうやら凄くてれているらしい。 顔が少し赤い。 「撩・・・。嬉しい・・・」 香はその言葉を聞くと涙ぐんだ。 「おいおい、泣くなよ」 「だって、凄く嬉しいんだもん。仕方ないじゃない」 ポロポロと涙が溢れてきた。 「ったく、しょうがねーな」 そう言うと撩は立ち止まり、香の顎を持って自分に向けさせた。 「えっ・・・」 撩は頬に流れている香の涙を自分の舌で舐めとる。 ぺろ、ぺろ。 香はびっくりして涙が止まった。 何度か舐めると、撩は香から離れた。 「さっ、早く帰ろうぜ。俺腹空いちゃったぜ」 撩は香に背を向けて歩き出す。 舐められた頬を香は自分の手で包んだ。 「やだ・・・。信じられない・・・」 顔を真っ赤にしながら、香は呆然としていた。 「ほら、早くこないと置いて帰っちまうぞ!!」 さっきまでの事はなかったかのように、撩は叫ぶ。 照れ隠しのつもりだろうか。 香はくすりと笑うと、 「ちょっと待ってよ〜!」 そう言って撩の後を追いかけた。 |
*****戯言***** また、絵梨子ネタです。なんかいきなり書きたくなった話。 やっぱ、いいね。この2人はvv |
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