一つの双眼鏡が、部屋を覗いていた。

 男はごくりと唾を飲み込んで、いつもの部屋を覗く。

 日の光で反射しないように、細心の注意を払いながら覗き行為をしている。

 多分覗いている部屋の住人には細心の注意を払っても、気づかれてしまうだろう。

 それは本人にはわかっていた。

 そして危険な事になるだろうということも。

 しかし、この覗きはやめられない。

 もうすでに男の日課になっている。

 ・・・この時間、大体カオリは着替えをしている時間なんだよな。

 偶然に見た男のマンションから見える槙村 香の着替え姿。 それがなんともいいがたく、色っぽい姿だった。

 もしやと思いながら、次の日も同じ時間帯に香の部屋を覗いて見る。

 すると案の上、香は着替えを行なっている最中だった。

 これは‘ラッキー’と思うと、男はその時間帯になると双眼鏡を片手に覗きを行なった。

 肉眼で見えることは見えるのだが、やはり助平心はそれ以上を望む。

 もう少しはっきり見たいと。

 仕事上使用している、性能が良い双眼鏡を使った。

 もう、ばっちり!!

 自分でも驚くほど、香の着替えている姿が見える。

 顔をにやけさせながら、じーっと、その数分の時間を楽しむ。

 少しすると、物凄い殺気を感じる。

 惜しみながらも、双眼鏡を隣りのリビングに移す。

 すると同居人の撩が愛用のパイソンを構えながら、こっちを見ていることに気づいた。

 ヤバイ!今日もバレた!!

 飛んできそうな弾丸を警戒しながら、男は撩を見た。

 すると先ほどまで銃を構えていた姿はなかった。

 あれ?いつもなら1発飛んでくるのにな。

 男は物騒な事を簡単に思う。

 しかしそれはこの男たちにとっては、ごく日常的なものなので、それが当たり前になっているのだ。

 銃ほど身近に感じるものはない。

 撃ってこない撩を尻目に、男は香の部屋に双眼鏡を戻した。

「OH〜、NO〜!!もう遅かったか!!」

 見ると既に香は着替えを終わらせていたらしく、もう部屋には香の姿はなかった。

 男は頭を抱えながら、沈んだ。

「ちっくしょう!!リョウの野郎!いつもおいしいところで邪魔をするんだから!」

 地団駄を踏み、双眼鏡をソファーに投げつけた。

「あら?撩が何を邪魔したって?・・・ミック」

 聞きなれている声がミックの背後で呟かれた。

 その声にミックはびくっ!と体を震わす。

 冷や汗が滝のように流れるのがわかる。

「や、やあ、カズエ。今日はどうしたんだい?仕事は?」

 恐る恐る後ろを振り返ってみると、にっこりと微笑んでいる恋人の姿があった。

 微笑んでいても体から発しているオーラがとても怖い。

「ちょっとね。冴羽さんから携帯に電話を貰ってね。ちょうど近くまで来たものだから少し寄ってみたのよ」

 そう言うとかずえはにっこりと笑った。

 ・・・・こ、怖い・・・。目が怒ってる。

 怒りで瞳がメラメラと炎が燃えていることがわかる。

 こ、殺されるかも・・・。

 ミックは直感的にそう思った。

「ミック。ゆっくりとこれで何をしていたかお伺いしましょうかね?」

 かずえは先ほどミックが投げた双眼鏡を指差した。

 一気に背筋が凍る。

 バ、バレてる!!!・・・リョウの野郎、カズエにちくりやがったな!!さっきの電話の相手はカズエだったんだ!

 身の破滅の音を聞きながら、ミックは怒りを撩に向ける。

「さあ、ミック。どういうことなのか説明してもらいましょうか?」

 笑顔でミックに近づいた。

 ミックの顔が引きつる。

 リョウの、リョウの馬鹿野郎!!友を売るなんて最低だーーー!!

 ミックは心の中で罵声した。

「ん?今ミックさんの叫び声が聞こえなかった?」

 リビングにいた香は首を傾げた。

「気のせいじゃねぇ?俺には聞こえなかったけど」

 そう言うと撩はふっ、と笑った。

 どうやらかずえちゃんに酷い目に合わされてるみたいだな。

 撩はミックが説教されている姿を想像した。

 ざまぁ、みやがれ。勝手に香の着替えなんか覗くから悪いんだから。

 撩はふん、と鼻で笑った。

「どうしたの?撩。なんだかご機嫌ね」

「別に〜。・・・それよりも香、伝言板見に行くんだろ?俺も行くぜ」

 撩は立ち上がると、香の肩に手をかけた。

「珍しい。一体どういう風の吹き回し?」

「まあまあ、いいじゃない。たまにはさ」

 撩は香の肩を押して、玄関まで促した。

「たまには、デートでもしようぜ」

 ぱちんっ、とウインクをすると、香はくすっ、と笑った。

「いいわね。じゃあ、行きましょうか」

 香はそう言うと、二人は仲良く出て行った。

 

*****戯 言*****

復活第1弾!!なのに2人のラブラブ話じゃなくてすまん!!
なんか明るい話を書きたくて書いたら、ミックのエロイお話に
なってしまいました。あの2人の話はまた今度ということで・・・。

 

 

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