風車村の酒場では、ちょっとした事件が起こっていた。 事件というほどでもないが、事件になりそうな予感がする話題で酒場は持ちきりだった。 この話題が上る少し前、ルフィはいつものごとくマキノが経営している酒場に遊びに来ていた。 「ねぇ、マキノ」 ルフィがオレンジジュースが入ってるコップをグビグビと飲み終わった後そう言った。 「な〜に?あっ、ジュースおかわり?」 空になったコップを見てそう言った。 「うんん。そうじゃないけど。でも、おかわりちょうだい」 首を振ると、ルフィはコップを差し出した。 マキノはくすっ、と笑うと直ぐにオレンジジュースを注いだ。 「はい、どうぞ。―で、おかわりじゃない話は何?」 「ん?えっとね。俺、さっき“こくはく”ってものをされたんだけど、“こくはく”って何?」 そう言うとグビグビっと両手でコップを持ちながら飲む。 その言葉に場内は騒然とする。 「「「えっーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」 後ろで聞いていた赤髪海賊団の船員たちが叫んだ。数人が、ルフィの近くに寄る。 「えっ?告白?……ルフィ、誰かに好きですって言われたの?」 マキノは手に持っていたお盆を思わず落としそうになった。 「…うん、そうだけど…。それがどうかしたのか?」 皆の態度にルフィは不安になる。 「…やばいぞ、それはやばい…」 ルゥが首をブルブル振りながらそう言った。 「ああ、それはやばいな…」 ベンとヤソップが同調する。 「何がやばいんですか?」 「お頭だよ、あのバカ頭。そんなことが知れたら、あの人怒るぞ」 「まさか。シャンクスさんがそんなことで怒るはずないじゃないですか」 マキノは在り得ない、と笑う。 「いいや。あの人のころなら在り得るさ」 「だよな。ルフィバカだし」 うんうん、と幹部達は頷いた。 「俺バカじゃないよ!」 するとそれを聞いていたルフィが声を上げた。 「はっ?」 「今、ヤソップが俺のことバカって言ったじゃないか!」 ぷっくりと頬を膨らませた。 「ああ、違げーよ。ルフィ。俺はお前のことを言ったんじゃねーんだよ」 「?…だって、さっきルフィバカって言ったじゃん!」 「確かにそれは言ったぜ。言ったが、それはあの人、お頭に向けて言った言葉だよ」 そう言うとヤソップは苦笑した。 「????」 ルフィは訳がわからなくて、首を傾げた。 その姿が可愛くて、皆微笑する。 言わば皆『ルフィバカ』なのだ。 それが一番酷いのがシャンクスと言えよう。 「別に悩むことじゃない。お頭はお前が好きだってことさ。好きで好きでしょうがない!ってやつだ」 「?俺もシャンクスのこと好きだぞ?それと何か違うのか?」 「…違う…のかな?」 3人は困った顔をした。 「とにかくだ!ルフィ!このことはお頭に言っちゃならんぞ!」 「そうだ!これは俺たちだけの秘密な」 「マキノさんもいいな?」 ヤソップ、ルゥ、ベンはそう言った。 「は、はぁ…」 「わかんないけど、わかった!」 二人は不思議そうな顔をしたが、とりあえず了承した。 「でも、ちょっと秘密はないんじゃないですか?きっとシャンクスさんも喜びますよ。ルフィが告白されたなんて言われたら。それだけルフィが可愛い、カッコイイって事でしょ?」 マキノはルフィから少し離れたところに移動して、コソコソと話した。 「いや、お頭はルフィのこととなると、すっごい心が狭い人なんだ。子供でもそれは一緒だ」 「独占欲かなり強いぞ。本当にお頭はルフィのことを可愛がっているからな」 「悪いことは言わない。マキノさん、これは黙っていたほうがいい」 「はぁ…。皆さんがそうおっしゃるなら…」 渋々マキノは頷いた。 すると、その時バタンッ!と店の扉が開いて、男が一人颯爽と入ってきた。 「ルフィ!ルフィはいるか!」 赤い髪を大きく揺らして、ルフィを捜す。 「来た…」 「マキノさん、くれぐれも内密にな」 「はい…」 こくりと、マキノは頷いた。 「あっ、シャンクスだ!」 ルフィは大声を上げて、手を振った。 その姿はとても愛らしい。 「おぉぉ!ルフィ!相変わらず可愛いなー!」 シャンクスはルフィに駆け寄ると、腕に抱いてクルクル回り出した。 ルフィはキャキャッ、と喜んでいる。 「……皆さんがおっしゃったことわかった気がします。さっきの話はシャンクスさんには言ってはいけませんね」 ぼそぼそっ、と呟くような声でマキノは言う。 あまりの溺愛っぷりにマキノは一歩引いた。 「…だろ?俺たちだってルフィをあまりにも可愛がると、殺気を感じる程だからな」 「ルフィを可愛がりたくても、表立っては可愛がれないんだよ。俺たち」 「ずりーよな、お頭ばっかり」 不平不満を言う幹部たち。 マキノは顔を引きつらせると、はぁ、とため息をついた。 |
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