ドタドタと板が軋むほど、全力で走ってくる音がする。

「おい、ベン・・・。この足音って・・・」

 ヤソップが銃の手入れをしながらベンに言った。

「・・・多分あの人だろうよ」

 ベンは軽くため息をつきながら、水の用意をする。

 毎度のことながら、とベンはぼやく。

 すると次の瞬間、思い切り扉が開けられて、二人が想像していた人物が現れた。

「ベ、ベン!!!!」

 シャンクスが息せき切って、登場したのだ。

「お、俺っ・・・・!!こ、子供!」

 興奮しているのか、上手く言葉が出ない。

 その間もジタバタと手足を動かしている。

「まあ、水でも飲んで落ち着け」

 そう言うとベンは先ほど水を注いだグラスを差し出した。

 シャンクスはベンの手からそれを奪い、ごくごくと飲み干す。

「ぷはぁー!」

 口元から少し零れている水を手で拭う。

「で?子供がどうしたって?」

 ベンはシャンクスからグラスを取り、テーブルの上に置く。

 ヤソップはそんな二人を横目で見ながらも、銃を分解していく。

 手馴れており、とても素早い。

「あ、あのな!俺どうやら一目惚れしちまったみたいなんだよ」

 意気揚揚とシャンクスは言う。

「一目惚れ?誰に・・・。まさか、今いった子供?!」

 ベンはまさか、という気持ちでシャンクスに尋ねる。

 しかしシャンクスはうん、うん!と思い切り頷く。

 ベンとヤソップは思わず視線を合わせた。

「・・・お頭、子供は犯罪だぞ」

「そうだ。子供なんかやめておけよ。それともお頭、アンタロリコンの気でもあったのか?」

 冷たく二人は言い放つ。

「むっ!俺はロリコンでもなければショタコンでもないぞ!でもな、アイツはそんな事を通り

越してすっげー可愛いんだよ。きっとお前らも会えばあの可愛さに惚れるぞ!」

 シャンクスはルフィを思い出して、うっとりとした表情をした。

「あっ!でも、惚れちゃ駄目だぞ。アレは俺が目をつけたんだからな!いくらお前らでも手

を出したら殺すぞvv」

 可愛らしく言うシャンクスに二人はぞっとする。

 その時二人は心の中で、

 ―――出さねーよ。

 とはもっていた。

「わかったわかった。―――で?その一目惚れした子供っていうのはどんな奴なんだ?」

 ヤソップは布で銃についている古い油や汚れを拭き取りながら言う。

「おっ!よくぞ聞いてくれました!!」

 テーブルに身を乗り出し、目を輝かせる。

 ―――この人いっちゃってるよ・・・。

 ベン、ヤソップは共に思う。

「それがさぁ〜、大きな瞳を持ったすげー可愛い子なんだよね。ぷりっとした唇でさ〜。可愛

いのに気が強くてさ、俺、何かしらねーけど足蹴られちゃったし。でも、あの蹴りも最高だっ

たよな〜」

 テーブルの上に座り、両手を合わせて明後日の方向を見つめる。

 ―――この人はMか?!

 と表立って言えないので、心の中で叫ぶ。

「ふ〜ん・・・。お頭を蹴るほどそんなに気が強いんじゃ、成長したときに先が思いやられるな」

「成長?・・・どういう意味だ?」

 ヤソップは銃の手入れを中断させて、

「お頭、その子供気に入ったんだろ?一緒に連れて行くんじゃねーのか?」

「まさか!そんなわけねーだろ。あの子にはあの子なりの人生があるんだから。俺の我が

儘で一緒に来てもらうわけにはいかねーよ」

 少ししゅん、となる。

「でも、その子供の事好きなんだろ?」

 ベンは言った。

「うん・・・」

 こくり、と頷く。

「だったら連れてきちまえばいいじゃねーか。それに今は子供でも成長すれば立派な女に

なるんだ。色々と約に立つんじゃねーのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ベンの言葉にシャンクスは首を傾げた。

「どうした?」

「・・・・誰が女だって言った?」

「「はぁい?」」

 二人の声が重なる。

「俺、女なんて一言も言ってねーぞ」

 しれっ、とした顔でシャンクスは言う。

「えっ、じゃじゃあ、お頭が一目惚れした子供っていうのは男・・・なのか?」

「ああ、そうだよ」

 その言葉に二人は一瞬思考が停止した。

 ―――そうか・・・。男か・・・。

 ―――ちょっと驚きはしたが、お頭が一目惚れするほどの子供だからな。マジで可愛い

のかも・・・。

 ―――まあ、何せこのお頭だし?男を好きになってもそれはそれでいいような気がする。

 ―――子供でしかも男に惚れてもこの人だからあまり不思議ではないな。

 ベンとヤソップは心の中でそう思った。

 二人は目配せすると、くすっと笑い、

「いいんじゃねー?」

「何が?」

「一目惚れが男でも子供でも。お頭が好きならそれでいいじゃねー?俺たちは応援するぜ。

なあ、副船長?」

 気をとりなおしてヤソップは銃の手入れに入る。

「ああ。アンタらしいと言えばアンタらしいしな。ガキに惚れるなんて」

 にやりと笑う。

「本当か?!マジで応援してくれんの?!やったぁ〜」

 ぴょんぴょんとテーブルの上で飛び上がる。

 大の男が飛び跳ねているのにそんなに可愛いもんじゃないのだが。

「ちょ、おい!お頭!テーブルの上で飛び上がるのはやめてくれ!部品がどっかいっちま

うだろうが!!」

 ヤソップは一生懸命になって銃の部品を集める。

 折角愛用の銃を手入れしているのに、部品がかけたら使えなくなってしまう。

 一つもなくさないように、必死に集めた。

「ああ、わりーわりー。つい嬉しくて」

 ぴたっ、と飛ぶのを止めて、にこにこと笑う。

「ったく・・・。で?そいつの名前は?」

「えっ?」

「えっじゃねーよ。その子供の名前!そのくらい知ってるんだろ?」

 散らばっている部品を集めながら言う。

「勿論!モンキー・D・ルフィって言うんだ!本人にあった可愛い名前だろう?」

 シャンクスはえっへん、と威張る。

 ―――いや、名前だけじゃわかんねーよ。実物見てないし。

 と二人は突っ込みを心の中でいれる。

「じゃあ、早くその子供を口説いて来いよ」

 銃の部品が欠けていないかをチェックしながら言った。

「えっ?!そんな、口説くだなんて・・・。そんな事子供にできないよ」

 モジモジとした態度をとる。

 ―――気色悪ッ!

 一気に体中に鳥肌が立つ。

 な、なあに。口説いて来いというのはそういう意味で言ったんじゃなくて、その子供の心

を懐柔させろと言っているんだよ。何妖しい事考えてんだよ」

 腕を擦りながらヤソップは言った。

「子供なら色々な事に興味を示すから、何か面白い話を聞かせてやるといい。きっと飛び

つくぞ」

 ベンはタバコに火をつけて、一服する。

「何だ、そういう事か・・・。俺はてっきりルフィを手篭めにしろということかと思った」

「「だからそれは犯罪だって!」」

 ベンとヤソップは同時に突っ込みを入れた。

「そうか。まあ、仕方ない。まだ子供だモンな」

「わかったらとっとと行ってきたらどうだ?ここには2,3日しかいないんだろ?だったら早く

行って仲良くなっておけよ」

「ああ、そのことなんだけど。ここに暫くの間滞在することに決めたわ」

 言い忘れてた、とぽんっ!と手を叩く。

「「・・・あっ、そ・・・」」

「うん。だからそんなに急がなくてもいいんだけど、それほどまでお前らが言うなら仕方ない。

ちょっとルフィの様子でも見てくるよ」

 にこにことしながら、部屋を出て行った。

「何か、俺たち結構苦労するな・・・」

「ああ。―――でも、ああいう方が面白くていいんじゃないか?色々とあって」

「あり過ぎるのも問題だがな・・・」

「・・・確かに」

 そう言うと二人は深くため息をついた。

**********

 シャンクスは鼻唄を歌いながら、歩いていた。

 そう言えばルフィは一体どこにいるんだろうか?小さい村だし、そのうち会えるとは思う

が・・・。

 キョロキョロと周りを見回すが、人が誰もいなかった。

 尋ねようにも人がいないので尋ねることができない。

 はてさて、どうしようかな。

 いつもなら人で行き交う道には誰もいない。

 それもそのはず。

 大海賊が小さな村にやってきたのだ。

 いくら略奪ではないと言っても、海賊の言う事などあてにはできないと言った意見が多く、

皆家に引きこもっているのだ。

 おや?あそこはやけに賑やかだな。

 少し先に一つの酒屋があった。

 そこからは微弱ながらも人の声が聞こえてくる。

 ちょっくらお邪魔しようか。

 シャンクスはそう思うと、足早に歩き扉を開けた。

 すると、中にいた人たちが一斉にシャンクスを見る。

 ありゃりゃ・・・。

 敵意の視線にシャンクスは居た堪れなったが、ルフィの事を思うとそんな視線は無視した。

「あっ!あの時の変な人!」

 店の中に1歩足を踏み入れた瞬間に、思いも寄らない声が聞こえた。

 ま、まさかっ?!

 シャンクスは高鳴る胸を抑えながらも、声がした方向をみた。

 するとそこには怪訝そうな表情をしたルフィがシャンクスを指差してカウンターに座ってい

たのだ。

「ルフィ!!!」

 まさか会えるとは思わなかった。今日の俺ってついてる!!

 心の中でガッツポーズをしながら、平然とした表情でカウンターまで歩いて行く。

「よぉ、ルフィ。元気だったか?」

 ちゃっかりとルフィの隣に座り、ルフィの顔をマジマジと見る。

 あ〜あ、やっぱり可愛いよな。コイツ・・・。

 あまりの可愛さにちくしょう!と叫びたくなる気持ちを抑えてシャンクスはカウンターの中に

いる女性に話し掛けた。

「酒、貰えるかな」

「ええ。ビールでいいかしら?」

「ああ、それでかまわん」

 にこりと笑う。

「おい、マキノさん。こんな海賊に酒なんか出す必要ねーよ」

 1人の男がシャンクスを睨みつけながら言った。

 すると周りの人たちが「そうだ、そうだ」と賛同する。

「そういうわけにはいかないわ。この人はこの店のお客様よ」

「お客様ってマキノさんね〜、こいつは海賊だよ?いつ何をしでかすかわかったもんじゃない」

「そうかもしれないけど、でも、少なくてもこの人はそんなことをする人じゃないと思うわ。村長

さんもそう言っていたじゃない。この人優しい目をしてる」

「マキノさん・・・」

 男はそう言われて何も言えなくなった。

「はい、お待ちどうさま。何か他にいるものはある?」

 マキノはビールをシャンクスの前に出し、にこっ、と微笑んだ。

「じゃあ、何か摘む物を貰おうかな。―――ありがとな」

「えっ?」

「いや、庇ってくれてありがとうって」

「そんな。私は本当のことを言ったまでです。ちょっと待っていてくださいね。今何か持って来

ますから」

「マキノ、俺ジュースおかわり」

 ルフィが空になったコップをマキノに差し出す。

「はい、じゃあ、ちょっと待っててね」

「うん!」

 めいいっぱいにこやかな顔でルフィは笑った。

 うっ!その笑顔、俺の心のクリーンヒットだぜ・・・。

 抱きしめたい衝動に駆られるが、シャンクスは我慢した。

「ねえ、海賊っておじさんみたいな人が多いの?」

 ルフィがシャンクスに話し掛けた。

「へっ?」

 思いもかけない言葉にシャンクスは素っ頓狂な声を出す。

「だって、海賊はとても怖い人だって。村の人たちが言ってた。でもおじさんは怖くないし」

「う〜んとな。俺たちはきっと海賊の中でも珍しい部類に入ると思うんだよな。俺たちはむや

みやたらに人を襲ったりはしない。襲うとしたら悪党ばかりの海賊船だけさ。一般の人は襲

わない主義なんだ、俺」

「う〜ん・・・。よくわからない」

 首を傾げてルフィは唸る。

 シャンクスはそんなルフィを見てくすり、と笑うと、

「ようは俺たちは怖くはない海賊って事さ。お前たちを襲わない。これでわかるか?」

「それならわかる。俺たちを絶対襲わないのか?」

「ああ、俺の海賊旗に誓ってもいい。もし破ったら俺の命を捧げよう」

 真剣な瞳をシャンクスは見せる。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 その強い瞳にルフィは呆然とする。

「はい、お待ちどうさま。えっと、お名前はシャンクスさんでいいのかしら?」

 マキノがチーズや豆類、から揚げ等を皿に盛り付けて出した。

「私の名前をご存知で?」

「ええ、勿論。赤髪のシャンクスさん」

「俺も有名になったモンですね」

「とても有名ですよ。―――ルフィもお待たせ」

 新しく注いだオレンジジュースを目の前においた。

からん、と氷が音を立てて、オレンジ色が揺れる。

「わぁ、ありがとう」

 ルフィはグラスを手に持つと口をつけた。

「マキノさん、俺たち悪いけど帰るわ。こんな奴と飲んでいたくねー」

 先ほど吠えていた男が席を立つ。

「そう・・・。わかったは、気をつけて帰ってね」

「あいよ。マキノさんもこんな奴さっさと追い出した方がいいぞ」

 男はじろっ、とシャンクスを睨む。

「ちょっと待てよ」

「何だよ」

「アンタ達がでていく事はない。俺がいなくなればいいんだから、俺がこの店から出て行くよ」

 シャンクスはそう言うと席を立った。

 まだ残っているビールを飲み干す。

「ご馳走様。又来るわ」

 手を軽く上げて、席を離れようとすると、ぐいっ、とシャンクスの襟を男が掴んだ。

「かっこつけてんじゃねーぞ、こらぁ」

「ちょっとやめてよ!村長さんに喧嘩は禁止だって言われているでしょ?!」

 一触即発の事態になったことにマキノは少し青ざめる。

「何だ、やるのか?」

「おお、いいともやってやろうじゃねーの」

「でも、喧嘩はご法度なんだろ?俺もまだこの村に残らなきゃならんし」

「そんなことは俺たちの知ったことじゃねー。お前たちをこの村から追い出せれば喧嘩でなん

でもしてやらぁ」

「・・・そうか」

 シャンクスは冷静になって、男を見る。

「んだよ、その目は」

 すました目に男はむっ、とする。

「・・・別に。お前が喧嘩したくても俺は喧嘩なんてしたくねーんだよ」

「んだとぉ?」

 ぎゅっ、と男はシャンクスの襟を絞めた。

「勝負をつけたいのなら、腕相撲でもしないか?それで負けた方がこの店から出て行く。

どうだ?」

 相変わらず覚めた目でシャンクスは男を見た。

「お、おじさん、やめなよ!エリックはこの村で一番の力持ちなんだ。エリックにかなうはずな

いよ!」

 ルフィが椅子から飛び降りて言う。

「大丈夫だよ、ルフィ。俺はこれでも一応海賊の船長なんだ。少しぐらいなら腕に覚えはある

よ。それと、ルフィ。俺はおじさんじゃなくてシャンクスと呼べ」

 愛する人からは名前で呼ばれたい。

 おじさんだなんて悲しすぎる・・・、まだ、27のに・・・。

「おい、じゃあもしお前が負けたらどうするんだ?この村から出て行くか?」

「いいだろう。急いで食料を調達したらこの村から出て行こうじゃないか。その代わり俺が勝

ったら金輪際難癖つけるのはやめてもうらおうか」

「よし!その誘い乗った!」

 エリックと呼ばれた男は襟を離した。

「おいおい、エリック!無茶だ!あの赤髪海賊団のシャンクスだぞ?!かなうはずがない!」

 周りにいる連中がエリックを止める。

 ああでもない、こうでもないと口やかましく言う。

「そんなことわかるもんか!やってみなければわからん!それにこいつらがいるだけでビクビ

クと過ごすのは嫌なんだ!」

 その言葉にし〜んと周りは静まり返る。

「・・・エリックって言ったっけ?俺、アンタ気に入ったよ。その攻撃的な性格。その性格にめん

じて本気をだしてやろうじゃないか」

 シャンクスはにやりと笑う。

「シャンクス!!」

 ルフィが叫ぶ。

「おっ、名前で呼んでくれたな」

 にこにこと笑う。

「頑張って・・・」

「おう!任せておけ!」

 ドンッ、と胸を叩く。

 まだお前から離れたくないんだ、ルフィ。まだ何もお前のこと知らないし。だから、俺はここで

負けるわけにはいかないんだ。

「おい、ルフィ。どっちの応援をしてるんだ」

「だって、エリック!シャンクスはこの中で誰も応援してくれる人がいないんだよ。可哀相じゃな

いか!」

「・・・まあ、いい。応援があろうとなかろうと勝つのは俺だ」

 ちっ、と舌打ちをする。

「ありがとうよ、ルフィ。同情でも嬉しいよ」

 そう言うと対戦相手のエリックをシャンクスは睨んだ。

「敵というからには全力でいかせてもらうぜ。手加減はしない」

 その鋭い眼光にエリックはたじろぐ。

 まるで心臓を鷲掴みされている気分に陥る。

「ぐっ・・・。お、俺だって手加減なんかしねー!腕が折れても知らねーからな!」

 シャンクスの威圧感から逃れ、何とか言葉を紡ぐと、エリックは何も乗せてないテーブルに

腕をついた。

「ほら、用意しろよ」

 エリックは右手を何度か握る。

「そう焦りなさんなって」

 シャンクスは羽織っているコートを脱ぎ、カウンターの上においた。

「シャンクス!」

 ルフィが少し不安そうな表情をする。

「・・・大丈夫だって」

 シャンクスはそう言うとぽんっ、とルフィの頭の上に手を置いた。

「じゃあ、始めましょうか?」

 シャンクスは右ひじをテーブルの上に置き、エリックの手と交えた。

「誰か審判やってくれ」

 エリックはシャンクスを睨みながら言う。

「私がやるわ。この勝負がついたらこれ以上いざこざは起こさないで下さいよ」

 マキノはきつい口調で言うと、二人の手が交わっている天辺に手を置いた。

「では、いきます。―――レディ・ゴッー!!!」

 その瞬間シャンクスは目を見開き、腕を横に倒した。

 その反動でエリックの体が大きく倒れる。

 どすんっ!!!!

 周りにあったテーブルや椅子はエリックの体で吹き飛ばされる。

「これで勝負はついたな」

 首をこきこきっ、と鳴らしシャンクスは言った。

「ば、化けモンだ・・・」

「逃げろ!」

 その言葉が響くとエリックを除く連中は皆店から出て行ってしまった。

「おい、アンタ大丈夫か?」

 シャンクスは倒れているエリックに声をかける。

 エリックは放心状態のままだった。

 ぺちぺちっ、と軽く頬を叩く。

 すると我に返り自分の右腕を見た。

「俺、アンタに負けたんだな・・・。一瞬のことでわからなかった」

「だから言ったろ?俺は手加減しないぜって」

 ほらっ、とシャンクスはエリックに手を差し伸べる。

「・・・こんなに強いなら少しは手加減しろよ」

「逆に手加減したらアンタの性格だと怒るだろ?」

「・・・・・・・確かに」

 そう言うとエリックはぷっ、と笑った。

「参った、アンタには完敗だ」

 そう言うとエリックはシャンクスの手を取った。

 シャンクスはその手を引っ張ってエリックを起こしてやる。

「好きなだけこの村にいるといい。口うるさい連中からは俺から言っておくさ。誰も何も反論はさ

せない」

 にやっ、と笑う。

「そりゃあどうも」

 シャンクスもにやっ、と笑う。

 エリックはよいしょっ、と掛け声を掛けて立ち上がると「じゃあな」と言って店から出て行った。

「アレはいい男だね〜。ああいう爽やかな奴結構好きだぜ」

 シャンクスはカウンターに寄りかかりながら言う。

 すると隣で目を輝かせているルフィに気がついた。

「すっげーーーー!!すげーよシャンクス!!よくあのエリックに勝ったな!」

 両手で握り拳を作り、ブンブンと上下に振っている。

 どうやら興奮しているらしい。

「エリックだって強いのにシャンクスはそれをものともしなかったな!シャンクス凄い!」

 ルフィはそう言うとぎゅっ、とシャンクスに抱きついた。

 ル、ルフィが自分から抱きついてきた!これはチャンスかも?!

 シャンクスはルフィが抱きついてきたことをいいことに、ぎゅっ、と抱きしめた。

 小さい体を大きい腕で包み込む。

 あ〜、俺、今幸せだ〜・・・。

 じょ〜、と涙を流して喜ぶ。

 もう、この幸せがあるならどんなことがあってもいい!

 シャンクスはそう思った。

「シャンクス、泣いてるの?・・・わかった!エリックに勝ったから嬉し涙ってやつだね!」

 ルフィは勘違いをして、涙を流している本当の理由には気がつかなかった。

「うんうん、嬉し涙だよ」

 お前をこの腕に抱けるなんて、思ってもみなかったから。

 ひしっ!と二人は抱き合った。

 するとそこに、マキノが声をかけた。

「あの〜、シャンクスさん?感動しているところを悪いんだけど、片付けをしてくれないかしら?」

 にっこりと笑いながらマキノが二人を見ていた。

「・・・はい?片付け?」

「ええ。だって、こんなにテーブルや椅子を倒してくれたのですもの。ついでに掃除もお願いし

ますね」

 そう言うとマキノはモップを手にした。

「はい、お願いします。自分でやったことには責任を持ってくださいね」

 可愛い笑顔でマキノは言う。

 はっはっはっはっ、とシャンクスは笑うと、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」

 と頷いた。

「それが終わったら、3人でご飯にしましょう。何か作りますよ」

「は、はい!!!」

「やった〜。飯だ〜」

 ルフィはシャンクスから離れると、先ほどの席に座り余っているオレンジジュースを口にした。

 その可愛らしい態度を見て、シャンクスは鼻の下を伸ばす。

 ルフィとご飯!やっぱり今日の俺ってついてる!!

 ご飯で浮れているルフィを横目で見て、

 よっしゃ〜!待ってろよ、ルフィ。飯一緒に食おうな!

 シャンクスはそう思うとルンルン気分で、速攻で片付けをはじめた。

 

 

*****戯言*****

お待たせ致しました!!
パート1でおかしな風に思われていたシャンクスを
見直させるお話を私なりに書いてみたのですけど、
いかがでしたでしょうか?ドキドキしながらUPします。

なんなら返品可ですよvv

 

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