ばたん!と大きな音をたてて扉が開いた。

「おはよう、マキノ!シャンクス見なかった?」

 ルフィが大股で店の中に入ってきた。

「おはよう、ルフィ」

 マキノはテーブルの上を布巾で拭いていた。その動作を途中で止め、

「シャンクスさん?今日はまだ見てないけど?」

「そっか。まだ来てないんだ」

「どうかしたの、ルフィ」

「へへっ、ちょっとな」

 鼻の下を指で摩りながら笑った。その表情はとても嬉しそうだ。

「よかったら、朝ご飯でもどう?」

「ううん、いい。シャンクスと会ってからにするよ。ありがとうマキノ」

「あら?めずらしいわね」

「早くシャンクスに会いたいんだ。だって今日は特別な日だから」

 そういうとルフィは店を出て行った。

 特別な日ね。

 その言葉を聞いてマキノはピンときた。

 ルフィにとって待ちに待った特別な日。

 10年前に赤髪のシャンクスがこの地から立ち去った日。

 ルフィを迎に来ると約束した特別な日。

 そして1週間前に彼の人は再びこの地に足を踏み入れた。

 ルフィはシャンクス達が乗ってきている海賊船へと向かって走っていた。

 とうとう来たぞ。この日が。

 俺、すっごい待ったんだからね。

 10年も待ったんだ。

大人になったら迎に来てくれるって約束したから。

絶対に迎に来るって約束したから。

俺、辛かったけど待ったよ。10年間も。

本当に辛かった。

毎日毎日シャンクスのことを思ってたよ。

子供でいることがすごく辛かった。

悲しかった。

子供でなければ、もっと早く生まれていれば、10.年前にはもうすでにシャンクスの隣にいたのかもしれない。

でも、10年早く生まれていたら俺とシャンクス、出会ってなかったのかもしれないね。

出会っていたとしてもその時は海の上で敵として出会っていただろうね。

そして略奪しあうんだ。

俺の仲間も、そして副船長やヤソップ達と殺しあうんだろうね。

だったら子供としてシャンクス達に出会っていたほうがよかったよ。

だってそんなことしたくないし、第一シャンクスを知らない俺がいてもそれは俺じゃないよ。

シャンクスを知らない俺はルフィじゃない。ただの人間だ。

シャンクスを知っているからルフィなんだ。

だからこの10年は無駄じゃない10年だったと最近思えてきたんだ。

俺、大人になったでしょ?

だって今日は俺の17歳の誕生日だもの。

「シャーンクス!!いるー?」

 船の上に上がりシャンクスを探す。

「あれ?変だな」

 いつもなら出迎えてくれる船員達が一人もいない。

「シャンクスー!副船長―!ヤソップー!ルゥー!・・・誰もいないのー?」

 大声で叫ぶが誰一人として返事がなかった。

「おかしいーな・・・」

 立ち止まり腕組して考えていると後ろから誰かの腕に抱きつかれた。

「わっ!」

「もう少し回りに気を配ったほうがいいぞ。これじゃあ、海に出た途端にやられちまうぞ」

 低い声が耳元で聞こえた。

 この声は・・・。

「シャンクス!びくっりしたー」

 後ろを振り向くと大好きな顔がそこにはあった。

「いるならちゃんと返事してよ。ったく・・・。あっ、ねえシャンクス。今日何の日か覚えてる?」

 目を輝かせながら言う。

「んー?何だったかな〜・・・」

 指を顎に当てながら考える。

「えっ?シャンクス、忘れたの・・・?」

 嘘でしょ?

 まさか忘れるはずないよね?

 だってシャンクスが約束したんだよ?

 シャンクスが・・・。

 泣きそうな顔でシャンクスを見る。

「おっ、おい。何んだよ。何でそんな顔をするんだよ」

 目に涙を浮かべながら自分を見ているルフィを見て、嘘をついたことに罪悪感を覚える。

「だって、だって・・・。シャンクスが忘れるからっ!」

「忘れてなんかいねーよ。誰が忘れるもんか」

 ルフィを自分の胸に引き寄せ、

「忘れるもんか」

「本当に?」

「ああ、本当だ」

「じゃあ、言ってみてよ。今日は何の日?」

 不信がりながらもルフィはシャンクスを見た。

 そんな思いを覆すかのようににこっと、笑った。

 その表情にルフィはドキッとする。

「今日は・・・、お前の誕生日だろ?誕生日おめでとう、ルフィ」

 チュッ、っとキスをした。

「よかった。忘れてるのかと思った」

 ほっと安堵のため息をつく。

「バーカ。忘れてたら今ここにはいないよ。覚えてるからここにいるんだろ?」

「うん!うん!」

 嬉しそうに頷いた。

 そんな嬉しそうなルフィを見て、

「そして・・・」

「ん?」

「お前を俺のものにする日だ」

 その言葉に一瞬で赤くなる。

「なっ、なんてこというんだよ。もし誰かに聞かれたら」

 周りに誰かいるかどうか辺りをキョロキョロと見回した。

「心配すんなよ。皆気を利かせて今日は誰も帰ってこないよ。今日は俺たち二人だけだ」

 またチュ、チュッと唇を落す。

「ホント?」

「帰ってきても追い返す!俺たちの邪魔はさせないよ」

「シャンクス・・・」

 ルフィは自分から唇を当てた。

「嬉しい」

 ぼそっと、小さな声で言う。素直に自分の気持ちを言いたいのだが、ちょっと抵抗があった。

「俺もだよ、ルフィ。・・・愛してる」

「うん、俺も・・・」

 ルフィはシャンクスの首に腕を回し、キスをした。

「じゃあ、今日はめいいっぱい楽しもうぜ、ルフィ」

「うん!」

 そう言うと二人は船内へと入っていった。

「なぁ、副船長。今日俺たち一体どこへ泊まればいいんですか?」

 若い新人がベンに聞く。

「俺に聞くな。それに今日帰ったらお前、殺されるぞ・・・?」

 野宿でもしろと言わんばかりにベンは言う。

 新人は青くなりながらその場を離れた。

 ったく。俺だってどこに泊まればいいかわかんねーよ。

 いきなり追い出すんだからよ、うちのお頭は・・・。

 ベンは頭を抱えながら途方に暮れていた。

 

リクは甘い話だったんですが

はたしてお気に召すような甘い話になっているかどうか・・・。

精一杯の甘い話です。

 

 

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