たまに見る嫌な夢。

 愛しい人を無くす悪夢。 

 俺は何度もその夢にうなされる。

 自らの信念の為に自分を置いていってしまう。

 闘いに負け、自ら死を選んだ人。

 闘いを止めて、と何度も叫ぼうと思った。

 でも闘いを止めることはできなかった。その闘いの結末をただ見守っているしかなかった。

 もう止めて、もうそんなに傷つかないで!

 そう何度も心の中で叫んだ。

 その闘いを止めることは、その人の信念を止めるということ。

 自分の大いなる野望の為にその人は闘いを挑んだのだ。

 絶対に止めることができない。

 その人は闘いに破れ、最後の一撃を与えられたとき、俺は心臓が止まりそうになった。

 見ていただけでもものすごい一撃だった。

 現実だったらそこで勝敗はつき、その人は助かる。

 でも夢は違う。

 勝負に勝った男はその人の心臓をその剣で貫いた。

 胸から大量の血が流れ出し、口からも血を吐き出した。

そしてその人はあっという間に死に至る。

++++++++++

「うっ・・・。ゾ・・ロ。ゾローーーーーー!!」

 ルフィは叫んだ。

「っはあ、はぁ・・・」

 汗を額に浮かべる。

「又、夢を・・・」

 汗をぬぐい、落ち着いてから部屋を見回した。

 サンジ、ウソップ、チョッパーが気持ちよさそうに寝ている。

 一人だけいないのに気がつく。

「あれ?ゾロが・・・」

 そう言ったがすぐにいない原因に気がついた。

「そっか、今日は見張りなんだ」

 そう言うとルフィはよいしょっ、と言いながらハンモックから飛び降りる。

 外に出ると、月明かりの下でゾロが素振りをしていた。

 引き締まった筋肉に無駄のない肢体。

 真剣に取り組んでいる表情にルフィは心を奪われた。

「何だ、ルフィか。いるなら声を掛けろよ」

 ゾロは素振りを止め、ルフィを見た。

「あっ、ごめん」

 ルフィはゾロの言葉で我に返った。何とか誤魔化そうとして違う話をする。

「その、何か変わったことあった?」

「ああ?何もねーよ。だからこうして素振りしてるんだろ」

 持っている練習用の刀をトントン、と叩いた。

「ところでお前こんな時間になにをしているんだ?」

 じーっとルフィを見る。

「えっ?うん、ちょっと・・・。何だか眠れなくて」

 マジマジと見られてルフィは思わずゾロの顔から視線を外した。

 すると視線の先に鷹の目から受けた傷跡がゾロの身体に残っていた。

「それ・・・」

 ルフィは傷跡を指差し、

「その傷、跡に残ったんだね」

「傷?・・・ああ、これか。結構残っちまったよな。でも、男には傷は勲章みたいなものだから、別に

俺は気にしねーけど。まあ、負けちまったから情けない勲章だけどな」

にやっ、と笑った。

もう既に笑えるほどあの時の勝負は切り捨てたみたいだ。

「ねえ、一つ聞いてもいい?」

 ルフィは先頭に歩きながら言った。

「お前らしくねーな。尋ねる前に聞くなんてよ。何だ、言ってみろ」

 通り過ぎていくルフィの後ろ姿を見た。

「あのさ、・・・あの時、あの勝負の時皆の姿あった?」

 本当だったら『皆』ではなく『俺』のと言いたかったがそれは止めておいた。

「ああ?あの時の勝負?何だそりゃ。いつの勝負だよ」

 ゾロは思考を巡らせるが、あまりにも多く戦いをしたため、ルフィが言っている勝負がどの勝負の

ことなのか全く検討がつかなかった。

「・・・鷹の目との勝負だよ」

「ああ、あの時か。あの時はなかったな。俺の信念が上かアイツの力が上か、そんな事ばかり考え

ていたから。そんな余裕はなかった。・・・それがどうかしたのか?」

 こっちに振り向かないルフィをおかしく思いながらゾロは言った。

「全然なかったの?俺のことも?・・・」

 心なしかルフィの声が震えている気がした。

「ルフィ?どうした。こっち向けよ」

 いつものルフィではないことにゾロは気がついた。

 しかしルフィは振り向かなかった。

「おい――――」

 こっち向けよ、と言おうとしたとき、

「ゾロは俺が死んだとしたらどうする?」

「はあ?何言ってやがんだよ。第一お前がそう簡単に死ぬ魂(たま)かよ」

 一体さっきから何を言っているんだ?こいつ。

 ゾロは先ほどから不可解な行動をとるルフィをいぶかしげに見た。

「俺はゾロが死ぬなんて嫌だよ。・・・あの時もゾロを助けたい気持ちでいっぱいだった。でもあの

時はゾロの闘いだったんだ。俺が止められるもんじゃない。見守っているのが一番いいんだ、っ

て。だから俺、ゾロと鷹の目の闘い見てた」

 ルフィは次第に肩を震わせた。

「ゾロがアイツに斬られた時、俺も一緒に斬られた気がした。胸が痛かった。あんな簡単に命を捨

てられるゾロが憎らしく思えたんだ。俺を置いていってしまうゾロを・・・」

 ドン、と両方の拳を縁にぶつけた。

「ゾロは俺が最初に見つけた大事な仲間なんだ。ずっと一緒にいるものだと思ってた」

「ルフィ・・・」

 ゾロはルフィに近寄ると後ろから抱きしめた。

「俺は死なない。もう絶対誰にも負けねー。鷹の目にも」

 ぎゅう、と力強く抱きしめる。

「ルフィ、そんなに俺が信じられないか?俺は絶対に負けない。お前が海賊王になるまで付き合っ

てやる。いや、海賊王になってもずっとだ。・・・お前を残して死ぬもんか」

「ホント?俺を置いていかない?」

「当たり前だ。誰がお前を置いていくかよ。お前こそ俺を置いていくなよ。お前は無鉄砲な所がある

からな」

「何だよ、それ。無鉄砲なのはお互い様だろ?」

 その言葉には既に笑みが混じっていた。

「そうだな、似たもの同士だ」

 ゾロは軽く頬にキスをした。

「ゾロ・・・」

 ルフィはびっくりしてゾロを見た。

「これが今のところお前に立ててやれる誓いの証しだ」

 真っ直ぐな瞳でルフィを見る。

 その目には嘘はなかった。

「うん、信じるよ。俺、信じる」

 ルフィに満面の笑みが蘇る。

 皆には滅多に見せない、ゾロにだけの笑顔。

 ゾロはその笑顔を噛み締めながら、ルフィと笑いあっていた。

 

 

 

*****戯言*****

今時鷹の目がでてくるとは自分でもびっくり。

書くネタ、遅すぎ!

でも書きたくなった1品。

悠真さんに捧げます!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送